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私はこの春で大学生になった。大学は人生の夏休み!なんて言われているけど私にはそうは思えない。友達と授業さぼって、サークルに行ってバイトに明け暮れて、飲み会にでも参加して、留学をして旅行に行って。自由な生き方をできるのが大学、そんな華やかなイメージを確かに高校生の頃は持っていた気がする。いつ崩れたんだっけ。少なくとも高校一年生までは持っていたと思う。うん、やっぱりそのあとだと思う。恋愛だ。大学生になって一番楽しみにしてたのは恋愛だった。大学生になったらもっと素敵な恋をしてみたいと思った。そういったことに恵まれなかったわけではない。特段多いとは言えないが、告白されたこともある。でもすべて断った。わからなかったから。私は人を好きになることがなかった。 友達との会話にもついていけないことが増えた。「彼かっこいいよね。」「今度告る?」「好きかも!」普段日常会話で蔓延る言葉。かっこいいとかはわかる。でも好きって?告白って?なんでそう思うのか分からなかった。だから大学に入ったらもっと素敵な恋を、そう思っていたけど。現実はそうじゃなかった。出会いはサークルとかにありそうだったから、5.6くらいのサークルを転々としてみたけど、なんか合わなかった。よってくる男はみんな、本当に恋愛をしたい感じじゃなかったし。あきらめかけたとき、私は出会った。本当に好きだといえる人に。
出会い方は偶然だった。どのサークルも合わなくって、たまたま見かけた文学サークルによって見た。もうどうにでもなれ!って感じで。思った通りで根暗で本読んる人がいたり、なにかについて熱く語り合っている人たちがいたり、正直合いそうになかった。出ていこうとしたとき、一人の男が声をかけてきた。
「見学?どうぞ。見ていって。」
「え?あ。はい。」
普段ならいえ、失礼します。なんて乗り切るんだろうけど、場の雰囲気にのまれたか大学に入ってここの人みたいにひとりぼっち気味になっていたからなのか断れなかった。
「ここは漫画がずらっと置いてあるところ。知っている作品とかもあると思うよ。ほら、これとか。」
彼は私を案内してくれた。壁沿いの本棚にはぎっちり詰まった漫画。私は漫画を読むような人じゃないからほとんどわからなかったけど。
「ここはボードゲームとか、イラスト用のスケッチブックとか。うちのサークルは本を読むだけじゃなくて、交流やイラスト、執筆とか、意外といろいろやっているんだ。どれも芸術ってところではつながっているしね。」
淡々と彼は話す。まるで台本でも読んでいるかのように。楽しいのかな。ここにいて。
「えっと、最後は――ここだね。」
彼は部室の1番目立つ入口の正面の展示に案内した。ここだけ異様に丁寧なきがする。配置とかバランスとか、なにか特別なもの?
「ここは宮沢賢治の作品をまとめてあるんだ。それぞれの本のあらすじとおすすめの点を展示している。手に取ってくれる人はあんまりいないけど。」
「これ、なんで作ったんですか。手間もかかっているだろうし意図して集めないとこんなに集まらないですよね。」
「あぁ。これは僕がお願いして作ったんだ。二年前にね。興味がない人にとっては邪魔かもしれないけど。僕はこれを作りたかったんだ。」
同じような口調。同じようなトーン。同じような表情。なのにどうしてだろう。これまで紹介してきたものと比べても彼の言葉はどこか悲しそうで。なにかを含んでいるみたいだった。
「いつまで縋っているんだろうね。僕は。」
彼がそうぽつりとつぶやいた。儚くて今にも散ってしまいそうなか細い言葉だった。
「あぁ。ごめん。でどうだった?こんな感じだけど。」
「えっと、私――」
今でも合わないと思った私の気持ちは変わらない。でも、でも。なんでだろう。私はまだここにいたい。彼をもっと知りたい。そう思えた。だから――
「入部したいです。」
その日が彼との出会いだった。彼の名前は赤瀬祐樹。文学部の三年生。なぜか私が気になった人。特別かっこいいわけではない。話が上手いわけでも、頭が良いわけでもない。とにかく普通な人。なのにどうしてか心が惹かれる。それから一年私は二年生になり、彼は4年生になった。週に1回、たった二時間程度のサークル活動。イベントとか参加するようなサークルじゃなくて、日々細々と活動している。大きなイベントは4月の新歓と、10月の学祭の展示のみ。でも私は居続けた。彼と話したかったから。彼の気を惹きたかったから。幸い、彼も誰かと絡むタイプではなかったから2時間ほとんど彼とだけ話せた。趣味の話、大学のこと、どうでもいいようなこと。ボードゲームとかしながらたくさん話した。でも、彼は一度も高校の頃の話をしなかった。特に二年生から3年生の頃の話。まるでそこだけ記憶がぽっかり抜け落ちているかのようで怖かった。いったい何があったんだろう。彼と出会った時、ぽつりとつぶやいたあの言葉。縋っている。なにに?
「赤瀬先輩!」私はいつものように大きな声で声をかける。
「あ、牡丹さん。」
「せんぱい。今日もいいですか。」
「うん。いいよ。もう日課だね。」
「週一ですけどね。」
「えっと、今日は大事な話があって。」
「そうなんですね。って、え?」
顔が熱くなる。いやいや。まだわかんないでしょ。確かに毎週アピールしてきたけど。そんな先輩から?
「えっと今日でね。サークルを辞めることにしたんだ。」
「へ?」
理解できない。辞める?それじゃ私はどうなるの?まって。辞めたって彼とはいられる。話せばいいじゃん。でも何を口実に?
「理由は何ですか。」
「まあ、大した理由じゃないんだけどね、4年生になってほとんど単位を取りきれたんだ。そしてあと大学に来るのがゼミのある日だけなったから。サークルの日に大学に来るようがなくなったんだ。正直なんとなくいただけだから。辞めようかなって。後輩も意外といるしね。」
それじゃあだめだ。大学で話すこともできないじゃん。どうしよう。
「あの、せんぱい。私からも言いたいことがあるんです。きいてくれますか?」
言うしかない。私が彼の横でいつまでも話しているのに必要なのは。いつも言葉がのどに詰まってしまっていえなかったけど。言おう。今日。今。告白を。
「うん。いいよ。」
「せんぱい。ずっと。ずっと前から好きでした。」
声が、手が震える。顔をまっすぐ見られない。見せられない。今とっても赤くなってるし。
「うん。ありがとう。こんな僕を好いてくれて。でも。」
いやだ。聞きたくない。
「ごめん。」
知ってた。知ってたのに。彼が全く私を見ていないことなんか。なのに。どうしてこんなに苦しいの。
「一応聞きます。なんでですか。」
「僕と君じゃ釣り合わないよ。僕は何にも持っていない。付き合ったって何も与えられない。」
「いいですよ。本音で話してください。」
「気づいてたよね。ごめん。君が僕に好意を向けてたのは知ってた。でも僕はどうすればいいかわからなかった。逃げたかったんだ。」
「どうして!どうしてなんですか!私はこんなに先輩が好きなのに。先輩の過去がどうなのかは知りません!でも、会えない人なら!今は私とだって!」
最低だ。こんなこと言いたくないのに。気持ちが止まらない。
「僕は過去に縋っている。高校二年。あの時をずっと待っているんだ。」
それから私たちは離れ離れになった。私の初恋は大失敗だった。先輩の過去。何にも聞けなかったな。
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突然入ってきた女の子。僕との会話のためにサークルにきてくれてたし、2カ月くらいで僕は彼女がどう思ってくれてるか気づいてた。話しているとたまに聞こえたような気がしたんだ。
「私を忘れないで」って。ほんとバカみたいな話だ。いつまで過去の亡霊を見ているんだろうね。