テラーノベル
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ヴィア達が巨大な虫に襲われていたところに突如現れ、敵を一掃した天使の見た目をした人物……サザンカによって、現在ヴィア達3人はとある場所に避難していた。
そこはサザンカの所持している庭園・エクスシアで、ヴィア達を襲った虫、『害虫』を倒し世界の平和を守る『花影の戦士』という者達が所属している……とサザンカは説明した。
庭園の中には数多の花が咲き誇っており、その中にはヴィアが見たことのない花も咲いていた。3人がそれらを興味深そうに見ていると、少し遠くから声をかけられた。サザンカの声だった。
「皆さん、お待たせしました──。おや? そちらの花が気になるのですか?」
サザンカが3人の方へと近付き、彼らが見つめていた花を見る。すると、その花についての説明を挟んだ。
その花は深遠花(しんえんか)と呼ばれており、特殊な条件で花を咲かせるとても稀少な花である。かつては薬などに使用されていたが、害虫の影響でその数はぐんと減ってしまい、今では庭園の外ではほとんど見かけないようになってしまったそうだ。この庭園に咲いている深遠花は、元はと言えばサザンカが管理人になるよりも前の管理人がその種を持ち込んだらしく、サザンカの手によって数が増えたらしい。
サザンカの解説を聞きながら、ヴィアは深遠花を見つめていた。それは深い紺色をしており、サザンカによるとそれを夜空に例えた者も居たという。
「──おっと、話しすぎてしまいましたね。申し訳ございません、そろそろ入りましょうか」
ただぼんやりと深遠花を見つめていたヴィアは、サザンカの声で自分がぼんやりとしていたことに気付く。サザンカが歩き出したのを見て、それに続くようにして彼も歩き出した。
その道中でも、ヴィアはサザンカの言っていた深遠花の花言葉がどうしても頭から離れなかった。
──深遠花の花言葉は『真実の愛』『あなたを想う』『誠実』などなんだそうです。花言葉自体は誰がそう言い始めたのかは分かりませんが、今では深遠花は『愛の花』とも呼ばれています。
◇ ◇ ◇
庭園から室内に入ると、3人はいわゆる応接間のような場所に通された。白いルームライトと窓から差し込む日光が部屋の中を照らし、暖かい雰囲気を作り出していた。
テーブルやチェアなどの家具は高級感も感じられるがシックな作りで、金持ち特有の成金趣味のようなものは一切感じられない。逆に、それらは居心地の良さを覚えるほどに丁度良かった。ヴィアは心の中で、サザンカは良いセンスをしているのだろうと感じていた。
3人は革製のソファに横並びで腰をかけ、背の低いテーブルを挟んだ向かいにサザンカが座った。サザンカはじっと3人の目を見て、それから口を開いた。
「改めて自己紹介をさせていただきます。わたしはサザンカ──この庭園・エクスシアの管理人であり、花影の戦士達のリーダーでもあります。以後お見知り置きを」
「所で皆様は……いわゆる“異世界”からやって来た方々なのでしょうか?」
サザンカが突拍子のない質問をする。ヴィア達にも状況は理解出来ていないのだが、おそらくここは3人にとっては異世界なのだろう。ヴィアもサウカもアスターも、生まれてこの方あんなに大きな虫を見たことがなければ、その様な虫が居るという話も聞いたことがなかった。
どうして分かったのかとヴィアが尋ねると、サザンカは「ここらではあまり見ない服装の方々でしたから」と答え、そして「害虫を見た時の反応もそうですね」と付け足す。彼女は随分と周りを見ているのだな、とヴィアは思った。
「つまり、皆様には今安全に過ごせる場所が無い……ということですね」
3人は頷く。目覚めると森の中で、似たような境遇の者達と会い、訳が分からないまま虫に襲われかけたところをサザンカに助けられたのだ。森の中から出ることは出来たが、いかんせん寝泊まりをする場所がない。このままでは、またあの森に戻って虫と追いかけっこをしながら夜を明かす羽目になりかねないが、サザンカはそんな状況に置かれている者達を放っておくような性格ではなかった。
だからこそ、彼女はこのような提案をした。
「皆様が帰られるまでの衣食住はこちらで保証します。ですから、花影の戦士達と共にあの害虫と戦っていただけませんか?」
ヴィアは困惑した。3人居ても害虫と戦えず、突然現れた──下手をすると自分達よりいくつか年下かもしれない少女に救ってもらった自分達が? どうやって害虫と戦うんだ? と。
もちろんその疑問を口にする。しかし、サザンカは「その質問をされることは既に見越していたぞ」と言わんばかりの表情でこう答えた。
「花影の戦士達はいずれも能力を持つ能力者ですが、皆様にはそれらに匹敵するほどの才能とポテンシャルがあると思ったのです」
「訓練だってできますし、武器もきちんとありますよ」
花影の戦士達はいずれも能力を持っている? それなら尚更自分達には無理だろう。いくら才能とポテンシャルがあろうと、開花させることが出来なければ、それらは全くもって意味のないものとなる。
ヴィアはあまり乗り気ではなかった。衣食住の心配がなくなるのは大きいが、戦いとは無縁ののんびりとした世界で生きてきた自分にはどうしようもないと思ったのだ。ヴィアは静かに、隣に座っているサウカとアスターを見遣る。2人も何やら考え込んでいる様子だった。
すると、何かを思いついたかのようにサウカがソファから立ち上がった。
「……君達に協力したら、帰るための方法を一緒に探してもらえるんだよね?」
サザンカは頷く。
「それじゃあ、僕は協力するよ。衣食住を保証されるのは大きいし、何より早く家に帰りたいから」
サザンカが笑顔で「ご協力感謝します」と呟いた。サウカの様子を見たヴィアは、案外やる気なんだなと思う。しかし、やはりヴィアはどうするか決めかねていた。
──そもそも、突然現れたこの少女を信じてもいいものなのか? 何か企んでいる可能性は? どれだけ表面上で善人のように繕っていたとしても、心の奥底で何を考えているかは分からない。人間とはそういうものだ。
彼ら彼女らがそうだったように。そして、今の自分がそうであるように。
アスターがどうするかは分からないが、自分は断って単独で元の世界へと戻る方法を探そう。ヴィアがそう思った時、アスターがこのようなことを呟いた。
「では、私も手伝おうか。丁度、あの害虫がどのような生物なのか気になっていた所だからね。ヴィアさんもそうだろう?」
「……? いえ、私は──」
そう言いかけたところで、ヴィアは別にいいかと思い始めた。サザンカが何かを企んでいたとしても自分はその策略に嵌るつもりはないし、企みに騙されるつもりもない。害虫駆除がどのようなものなのかは分からないが、やはり衣食住が保証されるというのは大きい。
ここで断って変な空気になってしまうのも面倒だと思ったヴィアは、ひとまずその提案に乗ってみることにした。
◇ ◇ ◇
サザンカに「着いてきてください」と言われ、3人は館内の廊下を歩く。とても穏やかで暖かく、窓の外を見ると木の葉がさらさらと揺れているのが見えた。
しばらくして、一つの部屋の前でサザンカが立ち止まる。そして、3人の方を振り返った。
「今日からここが皆様の部屋となります。どうぞ、自分の家のようにくつろいでください」
「……ありがとうございます」
サザンカがノブに手をかけ、扉を開く。室内はアンティーク家具でまとめられた客室で、生活をし休息を取るのに丁度良いものや便利なものが揃っていた。掃除は隅々まで行き届いており、埃のひとつも見当たらなかった。おそらく、サザンカの「客人はきちんともてなさなければ」という考え方の現れだろう。
3人は室内を見回してみる。扉の前でしばらくの間室内の様子を観察していると、サザンカが次の場所へ向かうと言った。道中、サザンカはこのようなことを言う。
「これから、花影の戦士の中でも特に強い者達……上級戦士を紹介します。特に前線に出ることが多いのが彼ら彼女らなので、名前だけでも知っておいて損はないでしょう」
庭に出たサザンカがきょろきょろとし、まるで誰かを探しているかのような素振りを見せる。庭を歩き回り、サザンカはガゼボの中に誰かの影があるのを発見した。よく見ると、そこには1人の水色髪の女性が居り、女性はベンチの背もたれに背をあずけたまますやすやと幸せそうな表情で眠っていた。
その様子をちらりと見たサザンカは、そっとその女性の背後に回って優しく頬をつねった。3人は困惑しつつもその様子を見届ける。サザンカが頬をつねると、女性はハッとして起きた。
「……ハッ! あれ、え、サザンカさん!? ついさっき森の方に害虫討伐に向かったはずじゃ? というか誰かに頬をつねられたような気が……」
「ハドレア、まだ寝ぼけているんですか? それに、このような場所で居眠りをしてはいけないとあれ程言ったはずですよ。寝るのなら──」
「うっ、ごめんなさーい!」
「自分は頬をつねっていない」という前提でごく自然に接しているサザンカの態度を見て、女性……ハドレアは彼女こそが自分の頬をつねった犯人だと全く気付いていない様子だった。ヴィアは犯人はサザンカだと言うか迷ったが、別に言わなくともいいだろうと思い黙っておくことにした。
完全に目を覚ましたハドレアは、一瞬でハドレアの真後ろから元居た場所に移動したサザンカの少し後ろに居る3人を見て、目を丸くした。
「サザンカさん、この人達は?」
「森に迷い込んだ客人です。彼らに害虫討伐を手伝っていただくことになりました」
「わ〜っ、そうなんだね! 私はハドレア・アトリ、花影の戦士だよ! よろしくね!」
満面の笑みでそのような自己紹介をするハドレア。ヴィア達3人も軽く自己紹介をし、次の戦士が居ると思われる場所に向かうことにした。
去り際、サザンカがハドレアにこう注意する。
「ハドレア。風邪を引いてしまいますので、寝るのなら自室で寝てくださいね」
「はぁい、分かりました……」
次にテラスへ向かうと、そこには何やら話し合いをしている者達の姿があった。どのような会話をしているのかと様子を伺い、サザンカは話しかけるタイミングを見計らう。
「お疲れ様です。次の任務の話ですか?」
「おや、サザンカさん。お疲れ様です」
サザンカが話しかけると、まず初めに背の高い緑髪の男性がそれに応じた。男性の声に反応してか、灰色髪の男性と白髪の男性も手に持っていた資料から顔を上げる。そして、白髪の男性が3人の存在に気付いた。そちらの方へ視線を向けながら、彼らは何者なのかと問う。
「……そこに居るのは?」
「森に迷い込んでしまった客人です。これからしばらくは庭園で生活していただくことになりました」
「なるほど、客人だったのか。私はテリオス、花影の戦士だ」
白髪の男性はテリオス、緑髪の男性はフォーリーフ、灰色髪の男性はレイン・アミュレットと名乗った。3人もまた自己紹介をし、最後の場所に向かおうとした時、レインがサザンカに対してこう言った。
「そういえばサザンカさん、今朝見回りをしていた時に不審物を見かけたんだ。俺の部屋にあるから、後で確認してくれないかな?」
「分かりました。……ですが、今は生憎手が離せないので、わたしの部屋に置いておいてください」
「わかったよ。机の上でいいよね?」
2人はそのような会話を交わし、そして最後の場所へと向かうことになった。
最後にやって来たのは館内の廊下だった。……と言うのも、探しているあと2人が見つからず、ずっと庭やら館内やらをうろうろとしていたのだ。そしてついに、サザンカは長い廊下の先に丁度探してた人物達を見つけた。そこには男性と女性が居り、2人は何かを話しているようだった。
「ルーファ、レイラ、お疲れ様です。今少しお時間よろしいでしょうか?」
「あ、サザンカさんじゃーん! やっほー。どうしたの? もしかして新しい任務の話とか?」
「いえ、実は──」
「……分かった、そこのそいつらでしょ」
サザンカの声かけに、まず男性が反応しどうしたのかを聞く。サザンカが事情を説明しようとした時、女性が3人の方を見ながらぽつりと呟いた。
「えぇ、そうです。訳あって今日からしばらくの間、彼らも害虫討伐に加わります」
「へ〜、そうなんだ。俺ルーファ・フォラン! よろしく〜」
「……レイラ・フローレン。よろしく」
ルーファとレイラを最後に上級戦士全員への挨拶が終わり、一行は再び応接間へと戻った。
コメント
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世界観がめっちゃ好きなのとその表現力がずば抜けてて凄い好き😘😘 とにかく大好きです🫶🫶🫶 続き楽しみに待ってます😋🙌
今回もめちゃくちゃ良かったです!!!! おぉ…サザンカさんのセンスが輝いてて とても良いですね…!!! どんな家具なのか気になり過ぎて その家具を見てみたい程です…!!! なるほど…確かに危険な提案ですが… 異世界と言う全く知らない世界では 衣住食が手に入るのは大きいですね… 個性的な花影の戦士達ですが… 三人が彼らと仲良く出来る事を 信じています!!! 次回も楽しみに待ってます!!!!
