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「真希ちゃん・・・朝のお祈りしましょうね・・・ 」



母の日課は朝晩の祈りで始まる、母が朝起きて朝ごはんも食べずに五歳のあたしはパジャマのまま母の横に正座して、白い祭壇の前に一緒に座った




母がある宗教団体から購入したピカピカの大きな祭壇・・・そこには金のキリスト像が真ん中に鎮座していた、二人暮らしの2DKの古い文化住宅には、その祭壇が二人の寝室の大半を占めていた




実の父親は赤ん坊のあたしが歩き出す前に、母と私を残して家を出て行った、父に若い愛人が出来たからだと母は言った



それから母とあたしは二人きりで暮らしていたけれど5歳になる頃、母は聖書の勉強会に通う様になり、やがて新興宗教(聖言会)の信者になった



それから我が家はお正月に神社に初詣に行くことも、誕生日も、クリスマスにチキンを食べることも無くなった



その頃あたしはみんなと同じように、どうして家でクリスマスパーティーが出来なのか疑問に思っていたけど、母は全身全霊で聖言会の教えを受け入れたていたので聞けなかった、聖言会は孤独な母に居場所を作った、依存症の母の属するコミニュティを与えてくれたのだ




あたしたちは毎週土曜日、聖言会館で行われる「集会」と呼ばれる礼拝に出席し、聖言会の歌を歌った、キリストを称えた集会には聖書勉強会があって「真理」や、他の社会がどれほど堕落していて、どれほどサタンに支配されているかを教えられた



次第に母は聖言会の婦人部のリーダーになり、勉強会の座談会で熱心に他の信者に語っている、そんな時はあたしは後ろの方で絵を描いたり本を読んで静かに遊んでいると良い子だと大人に褒められた



そしてしばらくして母は教会の幹部の一人の男性と再婚した、トロフィー・ワイフとなり、人生をその男と一緒に布教に捧げ、ひたすら会内の社会的序列の上を目指した



母が新興宗教の幹部の義理の父を愛していたことは確かだと思う、母は昼間は働き、彼を懸命に支え、人脈を作り、やがて彼の教祖としての仕事は軌道に乗って、あたし達は教会の横の大きな家に引っ越した



あたしは十三歳で聖言会の洗礼を受けた、何てことない祭壇の前で祈って聖水を頭に数滴垂らされて、それでおしまい




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