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その日から朝晩祈りなさいと、白い金の刺繍に縁取られた祈りの冊子を手渡された
世の中の人達が罪を悔い、この世で心安らかに暮らしていけるようにするための、あたしは手助けができる使徒となったそうだ
教会の幹部はみんな年寄りでみんな黒いスーツに、女性もグレーか黒のスカートといった服装だった。継父は神の王国とアルマゲドンの話をよくしていた。彼のことを母は天上界に帰ったら高級霊に違いないと言っていた
継父はあたしが悪いことをしたら、殴りはしないけど何時間もネチネチと自分のしたことを繰り返し言わされ反省させられた。そして休みの日は何時間も私を連れて一件、一件戸別訪問をして教会の冊子である
『光の書』を配る手伝いをさせられた
日曜日の午後家でのんびりしている人を相手に、玄関先で何時間も話し込むのだ、ほとんどが門前払いだった
あの頃のあたしは少なからず新しいお父さんに気に入られたかったから、継父の彼と一緒に通りを歩き、家々の戸口に立ち、真実に目覚めれば天国で永遠に幸せに生きられるのだと説いた。ほとんどの人は不愉快そうな顔をしたが、あたしが子供だったのでそれほど意地の悪いことは言わず黙って冊子を受け取ってくれた
しかし遊びたい盛りの15歳の女の子に毎日聖書と冊子を持って、戸別訪問は体力的にもハードだったし、ほとほと嫌気がさした。母に個別訪問をするのを嫌だと継父に言って貰う代わりに、勉強であたしは学年首位にならないといけなかった
母の望む通り「トロフィー・ワイフ」の子も「トロフィー・ドータ」でなければいけないと、あたしは近所の個別進学塾に毎日通うようになった
そこで個別指導をしてくれていた宮下講師は、ちょうど継父と同じ年ぐらいの男性だったが継父より髪の毛はフサフサで、少し太っていた
彼は継父よりもとても優しくて、奥さんとあたしと同じ年ぐらいの子供がいると言った
あたしは毎日宮下講師に、遅くまで勉強を教えてもらっていた。成績はぐんぐん上がった
彼はあたしの悩みをなんでも聞いてくれた。胸が大きすぎて嫌な事、母が望んでいる偏差値の高い高校に受かるか心配な事、継父が家にいるといつも教師に見張られている様な気がして嫌な事、継父の前ではいつも良い子でいなければいけなくて正座も崩せないとぼやいたら、笑って大変だねと言ってくれた。あたしは宮下講師がお父さんだったらいいのにと思った
その日は遅くまで宮下講師と勉強していて、教室にはあたしと講師だけだった。外は雨が降っていたので宮下講師が車で送ってくれることになった