Main赤 Sub青 リアル設定
Side青
楽屋に入ると、いつものようにジェシーがバカでかい声で迎えてくれる……わけではなかった。
今日は二人でレギュラーのバラエティー番組。だから楽屋はジェシーと二人っきり。
俺が来るまで一人だっただろうジェシーは、ソファーに横になって丸くなっている。あちゃー、また痛いのか。
というか、その姿が猫みたいで笑える。
いや、こいつなら犬か。
などと考えながらも、置いてくれている毛布をそっと掛けた。これはスタッフさんの優しい気遣い。
あるのに自分で掛けていなかったのは、多分ジェシーの甘え。
「ごめんな、俺がもうちょっと早く来てたら…」
「いや、今急にだから」
とりあえずそんなに長い時間は悶えていなかった、というのに少し安心する。
「薬飲んだ?」
と訊くと、弱々しく首を縦に振った。
ジェシーはついこの間、『クローン病』という病気が見つかった。
胃腸は特に元気だった彼がよくお腹をこわすようになり、心配になった俺らが病院に半ば強制的に行かせたところ、そんな見知らぬ病名がついてしまった。
SixTONESの元気印が一人減っちゃったよ、と慎太郎は嘆いていた。
「大丈夫か」
少しでも楽になれば、と腰のあたりをさする。
一見胃腸炎みたいだけど、どうやら違うらしい。
それにこの苦しみを肩代わりできない、というのが苦しいんだ。
「どうする? 収録、今日はお休みしよっか」
たぶんこの体調じゃ出られない。でもジェシーは拒んだ。
「別に、いけるから」
顔をゆがめて言う強がりには何の効果もない、というのを恐らく彼は知らない。
「だって、俺が休んだら樹が無理するだろ…」
はあ、とため息をついた。
「俺のことはいいって」
ジェシーはゆらゆらと首を振る。
俺は困って頭を掻いた。
そんな表情をするくらいなら、あのいつもの声で笑い飛ばしてほしいのに。
こうなったら最終手段だ。
俺は立ち上がり、「ちょっとトイレ行ってくるから」と楽屋を出る。スタジオに行き、スタッフさんにこのことを伝えた。2人とも出演はキャンセルにしてくれないか、と。
突然だったけど、オーケーを出してくれた。
そして楽屋に戻り、ソファーの上で同じ姿勢のジェシーに短く告げる。
「家帰るぞ」
まだ着替えもセットもしていなかったから、そのままカバンを持つ。
ジェシーは眉をひそめた。「え?」
「体調不良ってことで2人とも休み。さっきマネージャーさん呼んだから」
「ちょっと待ってよ」
と起き上がろうとするが、痛みに顔をしかめた。
「こんなとこにいるよりベッドで寝てたほうがいい」
いつもより強い俺の語気に、少しだけ肩をすぼめる。
「ごめん…。ほかの出演者の人たちに迷惑かけちゃうね」
どこまでも優しいこいつの言葉に、とうとう苦笑が漏れる。
「わぁーったから。もう何も言わない、ね」
身体を支え、背中に手を添えて歩き出す。
「これは年上の権限。今日は安静にすること」
はーい、と答えたその声は、どこか素直で弟らしい。
そういう一面を見られるのも病気のせいかと思うと、少し寂しくなった。
続く
コメント
1件
フォローとりあえずしときました