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8 - 【第七章】期待

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2022年04月04日

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それは突然のことだった。

私達の家に、見知らぬ老人が訪ねて来たのだ。老人曰く、親もおらず子供達だけで暮らしている私達の話を聞いて、はるばるここまでやって来たらしい。老人は、親のいない私達の面倒をみる気でいるらしく、明日の朝に迎えに来るとだけ言って去ってしまった。

どうやら拒否権はないようだ。

私は、そのことについてすぐに少女に話した。

「嫌なら、この家を出て逃げることもできるけど…」

その言葉には、淡い期待があった。私は、今の二人だけで過ごす時間とても幸せで、彼女もそう同じ気持ちなのではないかと…。しかし、返って来た返事は、そんな期待とは相反していた。

「良いんじゃないかな。子供達だけで暮らすより、その方がずっと安全だろうし。」

その言葉は、実に淡々としていた。

当然のことだった。子供達だけで暮らすよりも、誰か大人が守ってくれる場所で暮らした方が良いに決まっているし、私も働ける訳でもないのだ。

彼女を私の我儘に巻き込んではいけない……。そう思い、私は「そうだね。」と言って、明日の朝に向けて荷造りを始めた。


翌日の朝、老人が再び訪ねてきたかと思うと、家の外には小さな部屋のようなものが置いてあった。すると、私達はその部屋の中へ入れられ、その部屋ごと移動を始めた。老人が言うには、これは”輿”という乗り物らしい。そして、しばらくすると、老人の屋敷についた。それはとても大きな屋敷だった。

何故か、その屋敷には何回か来たことがあるような、不思議な既視感があった。

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