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勇者とは人間でありながらわれら魔族の魔力に匹敵するスキルを鍛錬により身につけた者。余が崩御する五年前だったか、勇者の一団がわがモーゼフ魔王国に潜入し、魔都にそびえ立つ余の宮殿に突如侵攻してきた。
勇者たちはわれらと戦争中のディオン王国と同盟し、わが軍による無慈悲な侵略に抵抗していた。宮殿に侵入した勇者たちは三百人にも満たぬ小勢であったが精鋭であり、魔軍守備兵を退けて一部は余をはじめとする魔国幹部が集まる大広間に突入した。
大勢の近衛兵がわずかな侵入者に殺到する。
「こいつらはおれたちが相手する。セランティウス、おまえはネロンパトラを倒せ!」
と言った勇者はすぐに近衛兵たちにもみくちゃにされ惨殺された。
人目につくドレスを着ている女性 は余ただ一人。見たことなくても誰がネロンパトラかは一目瞭然だろう。
セランティウスは剣を構えまっすぐに余に向かってきた。
「魔王陛下が手を汚すまでもございません。わたくしにお任せください」
そう言って剣を構えたのは余の側近のマコティー。
セランティウスとマコティーの戦いは互角だった。二人が死闘を繰り広げる間に、セランティウス以外の勇者はすべて戦死したが、二人の死闘を止めぬように余は周囲に指示を出した。
一瞬の隙を突き、セランティウスはマコティーの剣を弾き飛ばした。マコティーは死を覚悟して目を閉じた。セランティウスは尻もちをつくマコティーの目の前で大きく剣を振り上げた――