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「どういうことだって言ってんだよ!」


心臓がバクバクと大きく何回も跳ねている。感謝されるのが嫌だったと言われて、意味をすぐに理解できるわけがない。

でも、彼の話を聞けば、自分がその立場になると同じことをしたんだろうな、と思った。


「……俺は、もっと早くお前を助ければ、こうなることなんてなかったんだ。 」

「で、でも…そんな都合のいいこと起こるはずもないし…」


必死のフォローに回るが、彼は怯えた顔をして大声で「まだ…まだあるんだ!」と叫んだ。


「……手についた血でわかったんだよ。いじめっ子を、俺が殴り倒したなんて。…その時からわかってんだ。俺は、手が出る酷い男だって…いじめっ子みたいな、やつだって…!!」

「………」


今にも泣きそうで、震えた声でトラゾーはそう言った。普段強く見えていた彼も、今ではただの男性にしか見えない。

いや、違うね。

彼は強く見えなきゃならなかったんだ。見せなきゃならなかったんだ。強くならなきゃいけなかったんだ。


「違うよ…トラゾーは戦ったんだ。勝ったんだ。」

「勝ってても、イエローカードが出て勝ったようなもんだって…!!」


目を伏せるトラゾーに、何も言えない。

自分も目を伏せてしまいそうになる。けれど、それだけは絶対にやってはいけない。

今ここでどちらも目を伏せてしまえば現実に目を向けることなんて時間がかかってしまう。

だから、ダメだ。

目を向けなきゃ、ダメなんだよ。


「…トラゾー、俺は嬉しいよ。トラゾーが俺のために戦ってくれたこと。だから、だからさ…目だけは伏せないでよ!!」


そう彼の顔を見て言うと、彼は歯を食いしばっている様子だった。

俺も泣きそうだ。けれど、瞳にたまる涙を流さないように、ぼやけて、わからなくなる視界でトラゾーの顔を真っ直ぐと見る。


「立ち直るのは難しいけど…俺なら、お前ならできると思うんだよ!」

「なんで……なんでそう思うんだよ…?」


震えた声で。でも、彼も俺と同じように涙は溜めてて。流すことは、していなかった。

ここで俺が泣いてしまうことはだめだ。なんてったって、俺を理解してくれた人は、泣く俺を泣かずに必死になってくれたんだから。


「みんなで日常組だからだよ!!」

「!!」


そう叫んだ瞬間に、彼の瞳から涙がこぼれ落ちた。その涙を見た瞬間に、俺もためにためた涙がドバッと溢れた。


「……お前が先に泣いたな。」

「…ずりーなぁ、お前ぇ…。」

「へへっ…。」


笑顔で泣きながらも、2人で背中を摩りあったのを覚えている。

そこから俺は病院に戻って深い眠りに落ちた。

なぜかその日は、いつにも増して寝心地が良い気がした。


……………


「ぺっいんとさーん」

「ぺいんと〜!」


ふと、いつもの彼らの声が聞こえる。

クロノアさんと、しにがみくんの声だ。どうやら時刻は午前9時頃で、お見舞いに来てくれたらしい。


「………あっ。」


ふと、深夜の出来事を思い出す。

少しイタズラげに笑ってから、いつものテンションで話しかけた。


「デデン!問題です!」

「「えっ?」」


2人が困惑した返事をしていたけど、顔はどこか面白さを期待している顔だった。

けど、今からお前らに教える答えは面白さなんかじゃ済まさない。済ませない。


「みんなにとってすごいことを俺はできました!さて、それは何でしょう?」


ニコリとそう言ってみせると、相手は悩ましげな顔をして各々回答する。

けど、当たり前のようにブーっと口で間違っていることを伝える。


「もー!早く教えてくださいよ!」


不貞腐れ気味に、しにがみはそういった。

だから、言ってやった。


「俺、思い出したよ。全部。」


そう言うと、しにがみくんとクロノアさんはびっくりした顔の後に大声でびっくりした声をあげていて、やっぱり面白かった。

けど、いつのまにか2人は笑顔で涙を流していた。そして、2人はこう言った。


「「やっぱぺいんと/さんはずるい。」」

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