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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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あかりさんとの会話。あの時は何でもない会話だった。
あかりさんとの仕事の時は、大抵僕が運転だった。運転手としては隣が喋ってくれると眠くなくてありがたいから、なんてことない雑談をよくした。その時の雑談で、あかりさんに、こんなことを聞かれたことがある。
「小説家って、やっぱり缶詰ってあるんですか?」
缶詰。旅館かどこかにこもって執筆に集中するやつ。うーん、憧れるし、書けそうだけど、僕はあんまりクーをほっとけないしなあ。
「うーん、ないとは言いませんが、兼業の小説家も多いですからね今。したくてもできないことの方が多いんじゃないかな」
「へえー」
あかりさんは目を丸くした。僕は最大重要ポイントを告げた。
「泊まるお金出すの、多分自分ですしね」
「え、出版社が出してくれるんじゃないんですか!?」
「よっぽどの大ベストセラー作家なら、出してくれるかもしれませんが、今出版不況なんで……」
「世知辛いですね……」
あかりさんは残念がった。でも、自費だとしても、書けない時の缶詰はありな手段なんだよな。
「自費だとしても、有効な手段ではあるので、いつかは僕も缶詰やるかもしれませんね、ちょっとだけ。クーは二日くらい自動給餌器で留守番できるんで……。そう、コンビニ併設のホテルって、引きこもって何かするのに便利なんですよ」
僕がそう言うと、あかりさんは興味を惹かれたようだった。
「コンビニあれば、あとはお金あればそれなりに生活できますもんね」
「そうそう。だから、現金かクレジットカードだけ持っていけば、あとは引きこもって書くのに集中できる」
少し考えてから、僕はおどけて付け加えた。
「〆切から逃げたい小説家が雲隠れもできちゃうかも! 引きこもって外に出なきゃ見つからないし!」
そしたらあかりさんはツボに入ったらしく、結構笑ってくれた。
……そう、雲隠れ。あかりさんは雲隠れしている。
婚約破棄された僕は、もう、あかりさんと特別な関係はない。だけど、僕はまだあかりさんに特別な気持ちがある。
無事でいてくれたら。無事でいてさえくれたらいいから。
あかりさんは働いているので、お金はそれなりにある。コンビニ併設のホテル、旅行サイトで検索できる。僕は、検索で出たホテルに片っ端から電話して、あかりさんの外見的特徴を告げて、「もし一致する人がいたら、言付けを頼めませんか」と言うことならできる。
「えーと、伝えてほしい内容はですね……「困ってるなら、金谷家に帰りたくないならうちに来てください。ずっといてくれていいです」、と……」
コメント
1件
ああ、このエピソードめっちゃ沁みたわ……。過去の何気ない缶詰の話が、今の誉さんの必死な呼びかけに繋がってるの、構成が巧すぎる。あの時は笑い話だった「雲隠れ」が、今はあかりさんを探す手がかりになってる切なさよ。最後の「うちに来てください。ずっといてくれていいです」って台詞、誉さんの誠実さと一途さが凝縮されてて、グッときた。無事でいてほしいって願うだけの立場、重いわこれ……。