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(本当に、あれだけしかインタビューに答える気がないとか……)
分厚いガラスの向こうのスタジオブース内で歌う様は、クールなビジュアルも手伝ってさすがに決まっているように映りはしたけれど、私にはもはやため息しか出てはこなかった。
編集部に戻り、編集長に苦い思いで今日の報告をした。
「──というわけで、インタビューを全くさせてもらえませんでした。すいません」
頭を下げると、編集長の高岡から、
「いいって。気にすんな」
と、ねぎらうように言葉をかけられた。
「こっちだって、事務所から記事を頼まれてるのに、そんな対応とか…新人らしからぬ態度だな…」
編集長が腕を組んで、苦言を吐く。
「はい…印象は良くなかったですね…あまり…」
ヴォーカルの彼の終始不機嫌そうな姿が思い出されると、そんな恨み言が口をついた。
「まぁいい、記事を書くのに足りないところは、事務所から資料を取り寄せろ。あとは、事務所付けでアンケートでも送っておけ」
「わかりました……」
自分の席に落ち着くと、三度目のため息がこぼれた。
「はぁー……」あんな扱いにくい人って、今まで見たこともないから……KILLAのカイか……もう二度と会いたくないかも……。
私はそう思って、あまりに機嫌の悪かったその人のことを記憶から抹消しようと、無理やりに頭の隅に追いやった。