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楽屋の窓の外は雨。おまけに風も吹いている。
そして中には俺と京本の2人。ほかのメンバーはまだ来ない。
お互いちょっと早く来てしまったけど、それがもう一人いたという状況だ。
まだわずかに残る気まずさのせいで、なかなか声が出ない。
そして、朝からの頭痛も変わらず居座ったまま。俺は天気の悪い日によく頭が痛くなる。
昨夜、天気予報で未明から降るって言ってたから頭痛薬飲んだのになあ、って心の中で吐いたとて、痛みはなくならない。
これから雑誌の撮影だけどやりきれるかな、と不安が募る。
さすがに我慢するのも嫌で、かばんから薬の箱を出した。京本にバレちゃうけど、まあいいや。
「あれ、どうしたそれ? 腹とか痛い?」
違うんだよな、と思いながらつぶやく。
「いや…大丈夫」
とりあえず心配させないために、と考えてこうとしか言えない。
まあ、今まで樹や高地には「大丈夫とか言うな」って言われた前科はあるけど。
だから、京本も一応知ってくれてはいるはず。
「…頭痛薬。頭痛いのか」
あっ、見えちゃってた。俺は小さくうなずく。
早くほかのメンバー来てくれないかな、なんて彼に対しては少し失礼だけどそう思っていると、京本は「ちょっと待ってて」と出て行ってしまった。
「あ…」
薬を飲んでひとりぽつんと待っていると、ようやくガチャリとドアが開いて、同時にジェシーと慎太郎の笑い声が飛び込んできた。よりによってこの2人だ。
「おっ、おはよう北斗。あれ、このかばん誰の? きょも?」
さすが慎太郎。しかし声がでかくて頭に響く。
「ちょっと声ちっちゃくして…」
「え、ごめん」
するとジェシーが俺の顔を凝視してきた。
「…ん?」
「いや、なんか雰囲気いつもと違うなって。気のせいかな」
そうかな、と首をひねる。でもちょっとだけ気づいてほしい自分がいる。
そのときまた扉が開いて、京本が戻ってきた。手にしているものを見て、少し驚く。毛布を持っていた。
「時間まで寝ときな」
そう言って、手渡してくれた。「…あ、ありがとう」
これを樹が見ていたら嫉妬でもしてたんだろうか、と薄く思う。
「北斗どうしたの?」
慎太郎が声を上げ、京本が「頭痛いらしい。たぶん今日雨だから」と答える。
まあ最初から隠し通せるとは思っていなかった。
でも意外と京本が俺に優しくしてくれてることに、嬉しさを感じていた。
その後、樹と高地のほぼ同時の「おはよう」という声のあとにまた「こいつどうした」「頭痛だって」と同じ会話が繰り返されたのが耳に入ったが、みんなが来て安心したのか意識は眠りの中に落ちていった。
続く
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