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お兄ちゃんは『妹が!』心配です

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お兄ちゃんは『妹が!』心配です

67 - 第67話 〜お兄ちゃんは妹ちゃんの攻撃を回避するようです〜

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2024年08月18日

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 セージとの会話を終え、俺たちは二人の元へと戻る。

 これはもう、完全にイジりに入ったのだろう。未だに止めない妹の視線を無視して、俺は伊織へと近づく。

「まぁ、あれだ……本当に大したことは無いんだ。そこのおバカな妹様のせいで、ちょっと傷口が開いちまったが……ほら、ちゃんと腕だって上がる上がる」

 そう言いながら、伊織に「大丈夫だ」とアピールするために、笑いながら腕を何度か回す。本当はまだ痛いけど……伊織を安心させるためならば、これくらいの痛みは全然大した痛みじゃない。

 伊織は怪訝そうな顔をしながらも、渋々納得したかのようにため息をつく。

「……分かりました、ヤヒロさんの言葉を信じましょう。……ですがヤヒロさん。本当に無理や無茶はしないでください。アナタの身に何かあってからでは、遅いのですから……」

「分かってるよ、イオ。次からは気をつける」

 ……というか、俺も次があるのは御免被ごめんこうむる。俺はこう見えて、かなりデリケートな生き物なんだ。これ以上痛い思いや、辛い思いをするのは二度とゴメンだ。

「よし、とりあえず……ロキが戻ってくるまで大人しくするぞ。分かったかー? そこのおバカな妹よ」

「むむっ。『バカ』って言う方が『バカ』なんだよ! ヒロくん!」

 妹は猫のように「シャーッ!!」と声を出して、俺を威嚇する。

 いや、お前。疲れてる兄ちゃんに『腕ひしぎ十字固め』……しかも、怪我してる方の腕に決めるか? 普通決めんだろう。

「おバカな子に『バカ』と言って何がおかしい、我がおバカな妹よ。兄ちゃん危うくスキップしながら川を渡って、お花畑で花冠作るところだったぞ」

 俺がそう言うと、妹は「えっ!?」と、驚いた顔をする。

(おっ……? 珍しく素直に、少しはお兄ちゃんの心配でもしてくれるのか?)

 ……何て、一瞬思ったりもしてみが……。妹は口元に手を当て、それはそれは残念なものを見るように、これでもかと眉を寄せる。

「ヒロくんとお花畑とか……似合わなすぎるよ」

「……うん、まぁ……それは兄ちゃんも、ちょっと思ったわ……」

 この妹が少しでも心配してくれると、期待した俺が馬鹿だった。

 この妹は、悲しいくらいに通常運転だった。

「妹よ……兄は悲しいぞ。こんな薄情な妹に、育ってしまったことに……」

 俺は舞台役者のように、大袈裟にわざとらしくそう言っては、「およおよ」と涙を拭うふりをする。

 そしてチラッと妹を見れば……腕を左右交互に伸ばし、指を小さくポキポキと鳴らしている。あっ、ヤベェ。

「……とりあえず、もう一回右腕その腕……締めてみる?」

 妹は少し重心を落として構え始める。マジで、ヤベェぞ、コレ。目がガチだ。

「おいおい、我が妹よ。こんな優しいお兄ちゃんにそんな酷いことを……って、冗談です! 待って、怪我してる方はマジでやめろ。本当は凄く痛いから、ホント、マジで、やめてください!」

 俺は伸びてくる妹の腕を避けながら、懇願する。

 普段は運動なんかしないくせに、年一で行われる体力テストでは、何故だか毎回、敏捷性びんしょうせいだけは、異様に高い数値を叩き出している妹。

 そんな妹が……的確に俺の右腕だけを狙ってくる。この繰り出される素早い手の動き……俺でなきゃ見逃しちゃうね!

「待て待て、妹よ。兄ちゃんが悪かった……だから、な? 傷口に塩どころか、杭を打ち込んでえぐるようなことはせずに、ココは穏便に話し合おうじゃないか!?」

「はっはっはっ! 話し合いで和解しようなど……もう遅い!!」

 妹のその言葉に、思わず「お前はどこの『もう遅い系の主人公』だ!?」とツッこんでしまう。

 思い出して欲しい。ココは人気の少ない路地裏。そして明かりが少なく、全体的に薄暗い。

 妹の攻撃をかわすことに集中しすぎて、足元がお留守になる。

 俺は何か丸くて硬いものを踏んでしまい、バランスを崩してしまう。

「ヤヒロさん! 危ない!」

 セージが慌てたように声を上げる。

「げっ……!」

「もらったぁ!!」

 俺が「倒れる!」と思った瞬間――――『フワッ』と、何かが身体を支えられる。それは手や壁などとは違う、柔らかな感触。そう、これはまるで――――。

「……うぉっ?」

 不思議な感覚に驚いているのも束の間、俺が倒れなかったために、妹が顔面から俺の腹に突っ込んでくる。

「ぎゃん!」

「ぐえっ!」

 ギリギリみぞおちや胃は回避したが、なにぶん勢いがそこそこあったがために痛い。

 俺は腹を、妹は顔を抑えて互いに悶える。

「何やってるんですか、二人とも……」

 その光景を終始見ていた伊織が、頭を抱えながら盛大なため息をつくのが聞こえてくる。

いや、俺全然悪くない……

ノォン……! 鼻とデコがぁ……!

どっちもどっちです

 伊織からの冷たい一言に、小声で「理不尽……」と呟きながら、腹の痛みが治まるのをじっと耐えるのだった。

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