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ヘタリア よみきり作品集

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ヘタリア よみきり作品集

2 - ギターの音が変えたのは

♥

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2025年01月30日

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「あれ。アントーニョ珍しいね。内職じゃなくて楽譜を持ち込んで見入っているだなんて。」

スペインの化身、アントーニョは会議中であろうと内職を持ち込みせっせことしているのだが、今日の世界会議では何枚もの楽譜を持ち込んでいた。

「あぁこれ?今度なお祭りがあんねん。歌って踊ってワーワー言うやつなんやけども。」

「へーっ?お前も踊るの?」

フランシスが興味を示し、アントーニョの向かい側に椅子を持ってきて座る。

「やっ、俺は歌やな。だから楽譜持ってきてんねん。」

「でもさ?お前ぐらいなら覚えてそうじゃん。そんな必死になるぐらいド忘れしたの?」

「あー、あんな?役員らが役所の整理しとってこの楽譜を見つけてん。調べたらここ何百年も演奏されてないやつやったから親分やったれ!!ってな」

「あーね、、、、、、、、ってことはロマーノって」

「いや、呼ばんつもり。」

「えー、面白くないの。」

「あいつも,,,,まぁ楽しくない思い出やろし。」


ロマーノがまだアントーニョの家にいた頃、イタリアが統一される前にうまれた祭りがあった。そこでは、有名なダンサーなどは呼ばず、民間人のみ路上で開催するものであった。アントーニョももちろん、毎年毎年参加している。今年もその時期が近づいてきてアントーニョは外に出ることが多くなった。

「ただいまー!親分帰ってきたでー!」

「あっ親分。おかえりぃ」

「えーお出迎えベルだけかいな?ロマーノは?」

「なんや!うちよりロマーノくんのほうがええの?別にええけど」

「やーんそんなことないでベルゥ」

長い廊下を歩きながらベルギーにじゃれていると頭に稲妻のようなものが思いっきりふってきた。オランダだった。

「いっっった!!なにすんねん!」

「俺の妹になにしてんねんこのハゲ」

「お前が殴るからハゲるんやろ!ハゲてへんけど!」

「やぁやぁ、うるさいで男性陣!そんなことしよったら,,,,,「スペインー!!!」

ベルギーの声を遮るように廊下中を怒号が走り回る。ビリビリとした気配に全員がおののいているとドスドスという音を立てて角からアントーニョの上司が登場し、アントーニョのもとへ詰め寄る。

「スペイン!あいつまた割りよった!しかもどっか走り逃げよったぞ!?どう落とし前つけよう思とんねん!?」

「あ、あー,,,,ちょっと俺には分からんなぁ」

手を前に出してお手上げのポーズをしているとさらに角からも使用人が続々と出てくる。

「親分!あの子また持ち場から逃げて!」

「なんとかしてや!今月割ってもたお皿、何枚あると思うとん!?」

「あの子やあの子!」


【 【 【  ロマーノ !!!】】】


広大な畑の隅っこで小さくなっているロマーノを発見する。なんとかあの場はオランダとベルギーに任せ、逃げてきた。

「,,,,なんだよこのやろー」

「その手、どないしたん。血出とるで」

「なんでもねぇ」

「血やで。なんかしてんと出てこんやろ」

「,,,,落としちゃったから拾おうとして、そしたらあいつらがでっかい声だしやがって,,,,」

「うん。そーかそーか。頑張ってたんやなロマーノは。」

抱っこしながらポンポンと背中を叩き、歩く。昨日雨が降ったせいでぬかるんでいる土が少し煩わしい。すると、特に雨を含んだ所を踏んでしまい、よろける。

「ああっ!ごめんロマーノ、」

「,,,,,,,あ」

「あ?」

「ああああああああああ、あぁ,,,,あああ」

「ろ、ロマーノ,,,,!暴れんといて!」

抱えている中でロマーノはじたばたと手足を動かし出す。顔も叩かれ始めて思わず手からすり抜けてロマーノを落としてしまう。

「ロマーノ!ごめん!」

だが、気にせず、どこかへ走り去っていく。

ロマーノは【舞踏病】である。手先が細かく動かせないから、皿を移動させようとして持っていても落として割りやすい。夜中になるとよく呻き声をあげてどこかへいってしまったものだったのだが。どうも最近はそれが進行してしまったらしい。

「あー!親分!」

「ベル」

ロマーノを探し回った末にベルギーの部屋にロマーノはいた。ベッドに眠るロマーノの頭をベルギーは横に座って優しくなでていた。アントーニョもどこからか椅子を持ってきて座る。

「ロマーノくん、大丈夫?」

「分からへん」

「一応手当はしたで。泥まみれやったから洗濯もしたった。 」

「ありがとな。ベル。」

「ううん。」

スースーと眠っているロマーノは、夜中になるとまた起き出す。

「ロマーノ!」

「あああ、ああああ」

手を握っても振り放されるくらい、手をぶんぶんと振られる。頭を悩ませているとふと目の中にギターが目に入る。逃げられないように手を引っ張ったままギターを手に取り、離した瞬間にすぐギターの弦に触れる。

「ほらロマーノ!踊ってみ!」

「   」

困惑の表情を見せたロマーノだったが、少しずつ立ち上がって足を動かし始める。しかし、

「,,,,へっったくそやなロマーノ!」

思わず笑ってしまい、脇腹に突進される。呻いているとバンと扉があく。

「うっさいわボケ!寝ろ!,,,,あ?ロマーノ、やったっけ」

上司が部屋に入ってくる。

「あぁ、えっとな。ロマーノを祭りに参加させようと思て。」

「え?ロマーノ踊れるんか?」

「まぁ下手くそやけどな。まだ1週間もあるやないか。」

「それでお前らが楽しめるならええやん。とりあえず寝ろや!」

それからは合間合間にロマーノを捕まえて練習をした。ダンスはベルギーが上手であったし、ロマーノもベルギーがいたほうが集中していた。そして、祭り当日がおとずれた。

晴天も晴天で、むしろ暑いくらい日がいい。人も多いため、ロマーノを肩車して人をかき分けながら移動する。

「なぁ、やっぱり嫌だって,,,,しかもこれベッラの格好じゃねぇか」

「えーやん!におうとるでロマ。」

「そういう問題じゃねーよバッファンクーロ!!」

「いった!髪の毛引っ張らんといてやー!」

「ハゲろ!このハゲ!」

ギャーギャーしていると少し空いた空間を見つける。そのタイミングで祭りの運営者に見つかり、グイグイと手を引っ張られる。

「遅いですよ親分!もうみんな待ってるんですから。」

「はいはーい。せや!ロマーノ!ほらはよ真ん中いきぃ!」

「〜〜〜〜」

もじもじとしながらもロマーノはまん丸の空いた空間の中心に移動する。

「あー、今からこの子がダンスの先鋒するからな!お前ら合わせたれよ!」

おー!という声が響いたあと、アントーニョからギターの音が空間いっぱいに広がる。それに合わせてロマーノも1週間練習の成果を発揮する。意外にも、身につきが早かったロマーノのその出来栄えはダンス歴5年、いや10年以上といってもいいぐらいであろう。周りも興がのり合いの手や拍手が巻き起こる。曲の終盤には他の民も乱入し出してもみくちゃながらもロマーノは笑顔になりながら踊っていた。

演奏後、アントーニョはロマーノに近寄ろうとする。しかし、一斉に人の流れが起きて奥へ奥へと流される。

「あー!ちょー!通してーな!ロマーノに偉いなーて言わなあかんのに!!」

隅にギターを置いて人をかき分ける。そして先程の広場へ戻ってきた。そこには先程踊っていた人も集まっており、

「親分!演奏よかったでー!あの子もよかった!」

「ニーニャのダンスええやん!ほんまにプロやないねんな?」

「あの子勧誘させたってもええんちゃうか?」

そう言って、先程のダンスを賞賛される。

「良かったなぁロマーノ!」

しかし、どこにもロマーノはいない。

「,,,,ロマーノ?」

足元に潜り込むが何も見つからない。ロマーノのつけていたエプロンが見えた気がして思いっきり掴んだ。しかし、残っていたのはそのエプロンのみであった。

「ロマーノ!!」

建物に入り込み、上から探すがどこにもいない。走り回っているとオランダとベルギーに出会い、捜索を願い出る。いつしか日が沈み出し真っ青な空がオレンジ色に染まる。

「ロマーノ!!」

息があがり、膝を抑えて地面に息を吹き返していると緑のスカートがスっと見える。いつもなら気にしないそのスカート。でも今だけは、特別である。隠れていった路地に力を振り絞って走り出す。角が見えた頃、もう一度名を呼ぶ。そして曲がったとき、小さな子を見つけた。

「あ、アントーニョ,,,,」

「ちっ!,,,,お前がグズグズしてたから,,,,!」

荒んだ身なりをした男性がロマーノの腕をがっしりと掴んでいた。少しだけロマーノの頬が赤い気がするというのを見つけた途端、何かが切れた音がした。

気づくと男は倒れていた。自分の手にはなぜか赤紫色のアザができている。ボーッとしてその手を眺めているとロマーノのことを思い出した。

「ロマーノ,,,,!」

しかし、放心状態であるロマーノに手を伸ばすことはできず、ただただ沈黙がその場に流れる。しかし、途端にロマーノが大声で泣き出した。その光景に思わず抱きしめてしまう。自分でも何をしているのか分からないがロマーノを離すことはできないし、ロマーノも泣き声を抑えること、アントーニョの服を掴む力を弱めることはできなかった。やがてオランダが現れ、珍しく焦った表情で2人抱えて家へ連れ帰ってくれた。ベルギーは恐ろしい叫び声をあげて泣きながらロマーノの手当をしていた。全員が落ち着いたときには月が真上にまで昇っていた。

「,,,,あいつ、ローマ,,,,人やった気がする。」

「,,,,反乱ですか?」

「分からん、」

「取り調べには出いた。ほやけど、1人おるっちゅーことは2人はおるやろ」

「,,,,せやんな」

「ちゃんとやってこい。ロマーノ守りたいんやろ。」

「でも、そしたらその間ロマーノはお前らに預けることになって,,,,もしかしたらロマーノ、病気が悪化したかもしれんし,,,,」

「なぁに?親分うちら舐めてますの?」

「え?」

任せて。うちらなら大丈夫。と背中を押され、結局1ヶ月ほど家を空けることになってしまった。戻ることには畑も色とりどりに身を染めていた。


「ただいまー!」

「あっおかえりなさい!お風呂入りますか?」

「や,,,,ロマーノ!ロマーノに会いたい!」

「ロマーノくんですか?えっと,,,,」

お手伝いさんが口ごもっていると洗濯物を抱えるもう1人のお手伝いさんが現れた。

「洗い場にいた気がしますよ」

しかし、もう1人がまた登場し、

「あれ?調理場じゃありませんでしたか?」

次々に現れるが、誰一人として正確な情報を知らないので、自分で探すことにした。支度をするうちにトマト畑を見ていないことに気がついたので帽子をとり、畑へ向かう。すると、足跡がついていることに気がついた。目線をあげるとロマーノがいた。

踊っているのだ

ロマーノが。

「,,,,ロマーノ?」

「え?,,,,!!!!あ、アントーニョ!!」

顔をトマトのように真っ赤にして逃げようとする。しかし、全身でハグをして動かせないように抱きしめ続ける。

「離せこのやろー!!」

「いややー、ロマが,,,,ロマがぁ,,,,!」

「あら親分。おかえりなさい。」

「ベル!」

「ロマーノくん。親分に見せてあげたら?ダンス。」

「えっ!?」

少し驚いた隙にロマーノの服を上からちょいっと掴んでロマーノを持ち上げる。オランダだ。

「お前がおらんくなったあと、毎日ここにおったんや」

「そうそう。そんでな、ロマーノくんなぁ,,,,」


【舞踏病、治ったんかもしれへんねん】

「そうなん!?」

「うん。でも,,,,」

ベルギーはふいっと顔を背ける。そのタイミングでオランダはベルギーにロマーノを雑に渡す。ベルギーはその態度を察したかのようにササーっとロマーノを連れてどこかへ行く。

「もうロマーノは連れて行かん方がええ。」

「,,,,そうやなぁ」

「この前みたいに、いつ悪化するかとか分からん。お前も困るやろ」

「うーん,,,,時間が、解決してくれたら、それでええんやけどな」



「とまぁこんな話で,,,,」

「ちょっと待って?オチはなに?」

「え?ロマーノのあれが再発しませんよーにって話」

「,,,,お前ほんとに話上手くないよな」

「はあ?」

フランシスと2人話しながらスペインの街を歩く。あと少しで、何百年か前にロマーノが踊った広場につく。すると、前から誰か走ってきた。役所の人間だ。

「お、親分!あんな子いたんですか!?」

「え?」

「こっち!こっちです! 」

手をグイグイと引っ張られ広場へどんどん近づく。広場のざわつきの声も広がる。人も多くなったところでフワッと布が舞った気がする。

「まさか,,,,っ」

そこで見たのは

腰に赤と黒の衣装を腰に巻き付け、踊るロマーノがいた。前と違ったのは、背が大きくなった青年が躍る姿。そして、あの日よりも少し爽やかに笑いながら舞う青年になったこと。

「,,,,ロマーノ?」

思っても見なかった光景にギターを持ったまま口を開けてその場で立ち止まる。その姿にロマーノは呆れながらため息をつく。

「あ?早く弾けよ。次、あの曲だろ?俺の得意曲。」

「え、えぇ?でも,,,,」

「お前はバカか?この俺がそんな昔のことトラウマに抱えてるとでも思ってんのか?このやろー」

「!!」

自慢げに手を差し伸べてきたロマーノの手をガッと掴んで広場に用意された椅子に座る。

弦の音合わせをしていると小さなベッラが耳元でコソコソと話す。

「あのね。あの人ね、イタリア人って言ってて大人の人と話してたの。そこで私、聞いちゃった。【スペインの野郎が弾く曲で踊りたくなっちまった。文句あんなら俺のダンス見てから言え。いくらでも受け付けるぞ。】って!ずっと親分を踊りながらここで待ってたのよ。」

ふふっと笑い、そのベッラは椅子の近くに座り込んだ。そして膝の上で頬杖をして腕まくりをしているロマーノの姿を目に焼き付けていた。


「それじゃ思いっっきり弾くからな!ちゃんと盛り上がらんとトマト祭りにするで!」


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