テラーノベル
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月は上り日は沈み、地は暗く見えビルの窓は煌々として、私自身の姿を私の網膜は無視をした。
雨が降り月は隠れ、雲は光り月は暗く、雨粒はネオンサインの紫色のまま黒い私の皮膚に落ちて、それはガラス玉のごとくこぼれ落ち、大腿のジーンズ製の皮膚までながれていった。
ポリエステルの黒い皮膚はわたしのもの、剥がされた体毛は失敗作の証の糸屑。背中を流れるあたたかい血液は、カイロという臓器のもの。
はて冷たくなった指先の血液は誰のもの?それは道端に捨てられた、缶コーヒーの空き缶のもの。動悸のする心臓はだれのもの?それは肋骨を震わす悪人のもの。心臓を調教する薬は、誰のもの?神が私のために遣わした精霊のもの。文明は神だったのだ。
私の肉体を作り出した工場は煙を空へ高く高く押し上げて、その煙はやがて雲となる。雲から落ちる有害物質、それは神による厄災。
この不規則なハートビートはわたしのものじゃないの、私のせいじゃないの。それは文明という名の化け物が遣わした悪魔。
わたしはわたしを生きていいよね、神にもらったポリエステルの皮膚のまま大腿を覆うジーンズと共に。だってそれは当然の権利。幸せに生き幸せに終わりを迎えるという当然の権利。
神は私を許さないのですか?ネオンサインに照らされたまま踏切前で立ち止まる私を。神は踏み出せというのですか、お前は不良品だからと。
神は私を許せますか、生きようとする不規則なハートビートを。私は私を許せますか、糸屑を脱ぎ捨てた罪人の私を。いいえもう、私は私を生きるのです。私が私を許さなくても。 失ったものを抱えたまま、文明社会の皮膚に隠れて。
誰が私の心の奥底を知るでしょうか、ネオンサインと同じ色の、パチンコの看板と同じ色の、あるいはありふれた恋愛ドラマの主人公と同じ色の、涙を流しているのですよ。
神よ、私を許せますか、不良品と呼ばれた私を。 神よ、私を愛せますか、あなたを軽蔑する私を。
私よ、神を愛せますか、その欺瞞に気付いた今も。
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