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直樹からの手紙は、私の心の奥底に沈めていた泥をかき乱した。
10年前、実家を守るために私が手を染めた
法的にグレーな資金調達。
直樹はそれを「一生の首輪」だと思っている。
(……私はもう、あなたの思う通りには動かない)
翌朝
私は今の勤務先の社長、そして法務部長を会議室に呼び出した。
自分のキャリアを失うかもしれない。
それでも、直樹に弱みを握られたまま生きる
「精神的な負債」を抱え続けることなど、今の私には耐えられなかった。
「……以上が、10年前に私が犯した過ちの全容です。会社に迷惑がかかる前に、自ら辞職いたします」
私は、書き上げてきた辞表をテーブルに置いた。
沈黙が流れる。
私の指先は、テーブルの下で白くなるほど握りしめられていた。
「詩織さん……あなたがそんな重荷を背負って、これまで独りで戦ってきたとは」
法務部長が、静かに口を開いた。
「直樹被告は、これを脅迫の材料にしているのですね? ……いいですか、詩織さん。あなたが10年前にしたことは、法的にはすでに時効です。道義的な責任は残るかもしれないが、少なくとも、今のあなたが積み上げてきた実績を否定する理由にはならない」
社長も頷き、私の辞表を押し返した。
「直樹という男は、あなたを自分と同じ場所に引きずり下ろしたいだけだ。……公表はしましょう。ただし、『直樹からの脅迫に屈しない、一人の女性の勇気ある告白』として。会社はあなたを全面的にバックアップします」
私は、こらえていた涙が溢れそうになるのを必死で止めた。
信じてもらえた。1円の誤差もなく正直にさらけ出した結果、私は「新しい居場所」を手に入れたのだ。
その数日後、私が自ら過去を公表し、直樹からの脅迫を告発した記事がネットニュースに流れた。
直樹の目論見は、完全に外れた。
彼は「過去の泥」で私を窒息させるつもりだったが
私はその泥を自ら洗い流し、白日の下にさらしたのだ。
その日の帰り道。
雨が降りしきる中、家の前に一人の男が立っていた。
黒いコートに身を包み、鋭い眼差しで私を見つめる男。
「……詩織。久しぶりだな」
その声を聞いた瞬間、私の全身が凍りついた。
直樹ではない。
でも、私の「過去」を、直樹以上に深く知る男。
10年前、私が資金を調達するために接触した、あの事件の中心人物。
「……どうして、あなたがここに」
「直樹が塀の中から俺に連絡してきたよ。『詩織を潰してくれ』とな。……だが、俺はお前に用があるんだ。あいつには教えていない、もっと深い『真実』についてな」
男の言葉に、私は息を呑んだ。
直樹さえも知らない真実?
10年前のあの夜、一体何が起きていたのか。
私は、男の差し出す名刺を受け取った。
直樹。
あなたは、自分の投げた石が、どれほど巨大な波紋を呼ぶか分かっていない。
あなたが掘り返した過去は、あなた自身を飲み込む「本物の化物」を呼び寄せてしまったのよ。
【残り70日】
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