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「店を出て、少し歩きませんか?」
「…はい」
夜道を二人並んで歩く。
冷えた夜風に肩が抱かれると、彼が身に纏う香水が甘く間近に感じられた。
「先生のコロン、いい匂いがしますね…」
彼のスーツから、ふわりと独特な蜂蜜のような匂いが鼻先に漂ってくる。
「ああ、私はアンバーのトワレが好きで、ずっと愛用していて……あなたにも気に入っていただけて嬉しいですね」
言いながら、肩にまわされた腕で不意に胸の中にぎゅっと抱え込まれた。
「……何を…」と、顔を上げると、
「こうしてあなたを強く抱き締めていれば、あなたにも私の香りが移るはずだと思って」
人通りの少ない暗闇に紛れて、見上げた私の顔が、彼の片手に捕らえられた。
「……あなたからも、既に移り香がしますね……そそる蜜のような匂いが」
そう耳に囁きかけられ、唇がふっと重ね合わされる。
「先生…ん……」
甘ったるく香るその匂いは、私を惹きつけて離さなくて、
「……こうしたら、もっと……」
顔を傾け口づけられると、それだけで身体の芯が蕩けるようにも感じて、いつの間にかその気にもさせられてしまうみたいだった……。