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「先生……」
キスに顔を上げて、呼びかける。
「……うん?」
暗い夜道を照らす街灯の輝きに浮かぶ、陰影を纏った彼の顔に、
「もうこんな風にお付き合いを始めてから、どれくらいがたちましたか?」
ふと今まで過ごした日々を確かめたくなり、そう問いかけた。
「三ヶ月ですね…そろそろ」
即座に彼が答えて、
「季節が変わって、また寒くなってくる……」
感慨深く呟くと、寒さから守るように、私の身体を両腕にそっと抱き寄せた。
そのあたたかな温もりと優しさに包まれると、ずっと出せずにいた、お付き合いの是非への答えも今なら出せるんじゃないかとも思えた……。
「……私、先生と一緒にいられて、幸せだなって……」
彼に私の本当の気持ちを伝えたくて、感じている、心のままを口にする。
「お試しのような気持ちでお付き合いをしてきて、これまでずっと、自分でいろんなことを思って、いろんな先生も見てきて……。
感じたことも、考えたこともいっぱいあって……迷うこともいろいろあったけれど、だけど、ただ一緒にいて、幸せに感じる気持ちもあって……。
だから、今なら、あなたの前で素直になれるって……」
さっきまで喉の奥に詰まるようにあったためらいが、すーっと溶けて滑り落ちていくようで、
抱かれている腕の中で、取り留めのない思いを少しずつ言葉にして伝えた。
すると彼は、しばらく黙った後、
「……私に、応えてくれるのですか?」
そう口にして、唇の両端を緩やかに上げ微笑んだ。
その微笑みに、笑みを返して、
私は、「はい……」と、静かに頷いた──。