テラーノベル
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ヒマワリ
22
47
(アイランド設定)
(眼左右眼、左右非固定のつもり)
(地雷はいますぐブラウザバックで回れ右)
電気街とはよく言ったものだ。現に、あのような絡繰の術師がそこをまるで縄張りとしているように入り浸っているのだから。
ジャンク品の並ぶそこには瘴気が蔓延っているのではないかとすら思う。
そこにいるのはやはり、あの黄色いつなぎ姿。
蛍光色はこの島でも眩く見える。わかりやすく、まるで誰かが目印としてもおかしくないような視認性である。
真剣な眼差しは常日頃手元の絡繰へ向けられている。時折頭を掻いて、「これどうすっかなァ……」などと呟いては指先でレンチを弄んでいる様子はこちらへ筒抜けであった。
というかおそらく、こちらを視認しているわけではないのだろう。
奴は勘がいい訳ではない。
つまるところは、こうしてその無防備な背へ周り…
「何をしている」
「ぎにゃあああぁぁッ!?」
頭上から声をかければこうなる。
「ばっ……馬鹿野郎!人が必死に機械弄ってんのに驚かせにくる奴がいるか!!ざっけんなよ!間違えたら大火傷するかもしんねーんだからな!?」
「笑止!貴様程の腕前がこの程度で揺らぐわけが無かろう!それとも俺様の氷の覇王としての力に畏れをなしたか雑種よ!」
「褒めてんのか貶してんのか分かんねーよ!つか邪魔すんじゃねえよ!」
そう喚く此奴の手は止まっていない。器用にこちらを睨みつけながら部品を手にして組み上げていく。
これもまた絡繰術師としての芸当か、と横目で見れば、その視線に気がついたように手元へ目線を落としていた。
「あー……これ気になんの?意外とオメーもそういうとこあんのな。」
先ほどまで騒ぎ立てていたとは思えない変化である。感情の起伏が激しいと特異点が表するだけあるようだった。
「フッ…貴様のような存在が創り出せるモノなどたかが知れているが……よかろう聞いてやる。」
「つまり気になってんの?」
ぐっと言葉に詰まる。前言撤回。此奴は魔獣と同等の勘を持っているようだ。
なんなのだ貴様、と睨み据えてやろうとした。やろうとしたのだが。
「あーおっかしい。回りくどい言い方すんなよなー。素直に言えっての!」
そうケラケラと笑う目元が目に入って。
それがまるで笑っていないことに気がついて。
思わず息が漏れた。
「……ッ」
可笑しい。可笑しいのだ。何もかも。
上がった口角も、覗く牙のような尖った歯も、無防備に晒された舌も、細められた瞳も。
何もかも、笑顔と言わざるを得ないような形をしているのに。
何故、薄ら寒いのか。
ストールを口元まで引き上げる。動揺を悟られる訳にいかない。
もし勘付かれたら?
その笑顔が尚のこと、底冷えしていけば。
「……どーした?図星か?図星なんか?」
「……戯言を。」
それだけ返し、目を逸らした。
「やっぱそーなんじゃねーか…」などと抜かしている雑種のことは今は視界に入れられない。
入れてはいけないと内なる己が精神が叫ぶのだ。
それ以上見ていては確実に何かが狂う。
何か、正常に保つべき何かが__。
「っし…オレそろそろ帰るわ。てかオメーここに何しに来てたんだよ。」
「……風に導かれたのみ。妙な風だったな。生温い、どうも落ち着かない。」
「それ潮風じゃねーの?」
「俗世ではそうとも言うようだな。」
軽く手でつなぎを払って立ち上がる仕草、一挙手一投足。その全てがあの瞬間、あの笑みに似つかわしくない。
それが、不可思議であり、底なしのようで…
「……じゃ、オメーもふらふらすんのは控えろよ。んな暇あるならもーちょっと希望のカケラ集めしてこいっつの。」
「……貴様も絡繰と向き合い浪費する時間を減らしてはどうだ。」
「それはお断りだっつの。じゃーなァ。」
遠ざかっていく。蛍光色はそこの角を曲がるまで、見えなくなることはなかった。
今し方彼奴が歩いた方向に背を向ける。
胸騒ぎがする。やはり風が妙だ。あれは俗世の潮風などではなく、彼奴の纏う妙な風で違いない。
総身が粟立つような感覚をあの人間に覚えているのはただ一人のみなのだろうか。
それはそれで、何処か奇妙だった。この眼が誤魔化せない証拠でもあると同時に、彼処には何か…あの瞳には何か隠し込んでいるような気がする。
「……恐ろしい。」
かくも人間とは…いや、左右田和一とは恐ろしいと思う。
未知の感覚と空洞を残したというその所業が恐ろしい。そして同時に、面白いと感じる。
ぞくりと駆け上がる何かが背を走る。思わず笑みが溢れる。
「……面白い。」
面白いではないか。
未知への探究というのは何処へ行けども愉快である。
そうして再びかの者が歩いた道へ一歩を踏み出す。
好奇心は猫をも殺すというが、そんな諺知らぬとばかりに。
【好奇の眼差し】(よく見ればわかるそれを追って、深追いするほど沼に沈む。それを受け入れて互いが互いに沈む。)
コメント
1件
うわあ…重くて、でも惹き込まれる空気感だったね。 特に「笑ってるのに笑ってない」あの左右田の表情の描写、一瞬でゾクッとしたよ。語り手が「面白い」って思う感覚も、なんか読んでるこっちにも伝染するみたいで…。 まだ1話だけど、この先どう潜っていくのか、すごく気になる🌙 ゆらぎずむさんの言葉、ちゃんと受け取ったよ。