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八雲瑠月
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「例え話が悪かったかね? 私の感覚では皮剥ぎ行為や略奪行為は生きる為の生命維持と武器の強化や食料確保により、生き残る確率のパーセンテージを増やしていっている感覚なのだがね。これは魔族に対する反抗、復讐でもある。先に戦争を仕掛けたのは魔族側の魔王帝国軍だからね。もちろん王や国民から魔族による民間人の虐殺の悪行を聞いていたし、タケルが非情になれるのは魔王帝国軍が完全な悪だからという事と、見た目が人間ではないおぞましい怪物という事で、そのような行為ができるのだろうね。子供がお化け屋敷のアトラクションで、ゾンビ役の人間に唾を吐きかけたり、暴力を振るったりする感情と同じだろうね。魔族の設定や三章のあらすじに記載していたが、タケルは手段を選ばない人間であるし、ゲームのような世界だと感じているせいか、異世界バンゲアに来た事によって、悪に対しては何をしても良いという感覚になっているね」
理香が説明すると、友美はノートPCを操作し、魔族の設定と三章のあらすじにカソールを合わせた。
「倫理の問題は設定に書けば、はいそうですかという納得のする事じゃないでしょ? その三章の魔族側のシーンが特に酷いと思ったんだけど。魔王帝国軍は戦争という感覚ではなく、狩りという名目で人間側を襲っているとことか! 魔王帝国軍領の人間食品工場のシーンが悪い意味で印象深かった! パンを盗んだ子が人買いに捕まり、魔王帝国軍に売られ、人間農場行きになったり、捕虜や売られた人間が農場で太りやすいように錬金術で品種改良され、豚のように太らされた人間達も問題だと思うし……その太らされた人間がミンチにされ、缶詰に加工されているのとか……スパイとして潜入させた奴隷の盗賊、ピーターにその人間缶詰を食べさせたり、これはどういった意図があるのか分かんないんだけど! 過激なスプラッター描写はあまりラノベ向けではないと思うんだけど……!」
友美は声を上げるが、シーンを想像してか、気持ち悪そうに言う。周囲のラノケンメンバーもシーンを想像してか、吐きそうになるぐらい、青ざめていた。
「リアリティーを求めるなら、人間を品種改良し、食肉として加工するのは当たり前の行為ではないかな? 君だって品種改良された鶏、豚、牛を食べるだろう? あと、人間缶詰を食べるシーンだったかな? 魔王帝国軍領には人間の食べ物は無いからね。潜入を続けていたピーターは餓死寸前の極限状態であったが、タケル達には分け与える食料が無かった。そこで一番食べやすくなった人間缶詰を与えたわけだ。まあ、魔族が人間を食べる事に関しては、こう解釈できるだろう。魔王帝国の住人は人間とは全く異なる種族である為、食料としてしか見ておらず、人間を魔法技術で食品として加工する。トラなどの強い生物が人間を襲って食べるのと同様だと思うがね」
「他にも魔族が人間に首輪を付けてペットとして飼っていたり、人間を錬金術で改造して、モンスター兵にする描写もあったわね。かつての恋人がワーウルフとなって、第三王女が殺される事件、公爵だった人間がヴァンパイア化され、次々と貴族令嬢を襲う。ゾンビ兵を人間の盾として使ったり、思った以上にカオスな状態よね。これで大義名分としての悪を描写したかったのなら、大失敗よ! 人間も魔族も非情な策をとってばかりで、心休まる部分がどこにもないじゃない。どうして人間と魔族に善の心を見せようとしない訳? わたしの知っているアニメや漫画、ラノベ小説、ゲームでは味方も敵も善と悪の部分を見せ、それぞれの正義があったわ! あんたの小説には悪を淡々と描いていて、敵や味方にも善の心を持ったキャラクターがいないわ! 感情移入がぜんぜんできないのよ!」
「ふむ……つまりは人道が必要という事かな? しかしまあ、犬や猫なんかの動物は野生動物を従順になるように品種改良し、実際に従わせている訳なのだが、それこそ人間の都合の良いように役に立つように、いろんな品種をかけ合わせ、猟犬や牧羊犬などを作っている。これを人間に当てはめると……」
「それも皮肉? 人間を品種改良し、従順に従わせたのがゾンビ、ヴァンパイア、ワーウルフになる訳ね……最低な発想じゃない!」
友美が呆れたように言う。
「これはあくまでもフィクションだ。ブラックユーモアと受け取ってくれたまえ。いくら科学部でも、私のやりたい実験や思想ではない事を付け加えておくよ。まあ、確かに皮肉をこめて書きすぎたかな? これで以上かな? お手数をおかけしたね友美君」
理香は冷淡に言う。
「まだよ! 最後に四話のあらすじになるけど、魔王サイヤークがタケルに世界の半分を人間の領土とする契約を結ぶなかったのはなぜ? 少数精鋭で魔王城に忍び込み、魔王サイヤークを集団でフルボッコ。これじゃあ、只の暗殺者じゃない。そして魔王サイヤークが倒されると、魔王城は崩れ去り、魔王サイヤークの首を持ち帰り、脱出。その後は魔王サイヤークの首は国民の前に晒され、魔王軍の領地は全て国王軍に占領され、人間に平和の時代が訪れるって……これじゃあ、人間側が完全に侵略者になっているじゃない!」
友美は理香のプロットをスクロールさせ、四章のあらすじ部分にカソールを合わせ、批評文を表示させた。
「友美君、それは実に単純な答えだよ。タケルは魔王サイヤークの話が只の時間稼ぎだと気付き、それに乗らなかった。世界の半分といっても、侵略された領土ばかりだ。それでもほとんどの土地は返還されないからね。魔王サイヤークの暗殺に踏み切ったのは、抵抗が激しく、拘束できる相手ではなかったからね。どっちにしろ、拘束されても絞首刑かギロチンだろうと思うけどね。ああ、それと国王軍が魔王の領地を占領したのは、魔王軍残党が降伏せずに反抗が激しかったからだね。元々、プライドが高い魔族は人間を食料やペットとして、見ていなかったという事だね。強い種族や民族が生き残るのは現代でも同じさ」
理香は冷淡に言う。
「よく分かったわ。理香のキャラクターには感情移入できないことが! ライトノベル作家を目指すエンターテイナーなら、悪行を見せ続けるより、読者を楽しませる事の方が重要じゃないの? 例えばシンデレラなら、継母と連れ子である姉たちに虐められるシンデレラの話があるでしょ。虐げられる現状が魔法使いによって変えられる。シンデレラの貧相な衣服がドレスに変わり、カボチャの馬車で舞踏会に行き、王子様に惚れられ、結婚してハッピーエンド。それで良いじゃない! シンデレラの物語は夢と希望があるわ。シンデレラが非情になり、復讐の為に継母に焼けた鉄の靴を履かせる事はほとんどの読者は望んでいないと思うわ!」
「ふむ……すると、友美君はパンドラの箱のように私の話に希望を残して欲しかったのかな? しかし、現実は非情だ。皮肉や風刺といった風な書き方が私のスタイルだし、それを面白いと言ってくれる人間がいると私は信じているんだがね」
「理香、あんたの言っている事は分かるわ。過激な悪行の描写はあるけど、面白そうになる部分はあったと思う。でも、ライトノベルは夢と希望を与え、勇気づけてくれる。こんな世界があったら良いな、この主人公と同じ恋愛がしてみたい、この主人公のように強くなりたいって思うものになって欲しいのよ。これはわたしの個人的な意見よ、これを直す直さないはあんたの自由だと思う。以上よ」
友美は理香を見つめた後、静かにノートPCを閉じた。