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魔王勇者 〜ジュエリーボックス〜

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魔王勇者 〜ジュエリーボックス〜

5 - 淡く光るのは憎悪に満ちた紫の瞳

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2022年03月24日

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ラピスラズリが辺りの警戒に出たすぐのこと

家に残っている者達でちょっとした雑談をしていた

「さて、一応今私達の貯金はどのくらい?」

「ざっと見ても2ヶ月は生きていける分はある」

「とは言ってもカツカツなのには違いないわよね」

「なら、ここは私がこっそり貯めてきたあるものを出すかな」

「ダイヤあなた何か隠してたの?」

「これよこれ。いわゆる宝石ってやつ」

「ほぉ?これはまた綺麗なものだな」

「この各宝石を元にあなた達の名前を付けたのよ」

「例えばラピスラズリとかも彼女達の瞳や髪色そして性格なんかも込みで選んだわ」

「この紫の宝石は?」

「それはアメジストよ」

「あら?私の名前のもとね」

「これは偏見でしかないけども、あなたって少し不思議な雰囲気を感じてね。紫ってところもピッタリだと思って付けたのよ」

「そう?私変わってるかしら?」

「なんか、私達と違って辛い過去はあるだろうけどそれを顔や態度、ましてや雰囲気すらも出てない」

「それがもう不思議でね。だからもし付けるならそういう不思議とかのイメージのものにしようって」

確かにダイヤの言う通り私は過去を引きずる素振りを見せてこなかった。

それは私が”変わってる”からかもしれない…



生まれた時から私は感情というものが薄く作られて生まれた。

それを知ったや否や私の両親は実の娘を実験体として使いだした。

私の両親は両者ともに研究者でありその間に生まれた。

が、命を受けた瞬間から人権なんて言葉はない。

あの2人はある恐ろしい研究を行っていた。

それは、身寄りのない子供を軍事力として加担させるという道徳そのものを捨てた悪の所業。

私が産まれるまではあくまで理論上のものだった。

しかし、そこに私という存在が生まれてしまった。

私の生まれつきである【感情の薄さ】に目をつけより、感情を殺して兵器に特化させるか。その研究が進められ、物心着いた頃には私以外の子達も収容されていた。

この施設に入れられた子達に名前はなくナンバーで呼ばれる事が当たり前で、私は他の子達の元になったという意味合いでA-00というナンバーを貰った。

この施設でのやる事は至極単純で、幼い頃から魔法や戦術などの知識を無理やり教えこみ、そのうえで感情を殺すために定期的に注射を打ち込まれるだけのサイクルが出来ている。

アイツらの研究の全ての基本となる私は、とりわけ厳しく”育てられた”。結果として私はアイツらから恐れられる存在にまで達していたのだ。

具体的な例を挙げると、その兆しが見えたのは私がだいたい4歳か5歳の頃の話。

両親の他に同じ研究チームと思われる大人が数名居て、私は鉄柵の向こう側でその大人達を睨んでた。

少しして一人が鉄柵に掴まって私に「これと同じ魔法陣を書いてくれるかな?」とメモ書きをこちらに見せながら話してきた。

それに従うのは癪だったが断れる訳もなくそのメモ書きを受け取り見よう見まねで書いてみた。

途中ぼかして書かれていた場所があったがそれは私なりに解釈して描き続けた。

そして、出来上がるが否や見ていた大人達は驚愕しその中で「殺される…」なんて喚いてた大人もみてとれた。

後になって知ったことだが、この時私が書いたのはアークデーモンの召喚という魔法陣で、当時の時点では誰も描くことができなかった代物だったとか。

だからみんな驚愕していたらしい。そして不幸にもこれが原因で、この研究が軌道に乗って行ってしまった。

それから二年後。私は6歳くらいになった時ふと、あることを思いついた。

脱獄という判断を私はその歳で考えついた。

この施設に居ればそのうち出れるだろうが、それは私が兵器として外に駆り出されることとなる。

そんなのは私の本望ではない。私はただ一般的な生活を送りたかったのだ。

両親から本物の愛を受け取り、友人を作り心からの笑顔を見せて、潤風満帆の生活を送りたかった。

それを実現するためにも私はこの施設を出る事を決心したのだ。

しかし、今はまだ脱獄するには私自身の力が弱く、大人達には到底叶わないだろう。だから今は耐え続けるしかない。皮肉にもアイツらが行う実験が私を強くするのだから……

その決心からさらに時は流れて14歳となった時、私の頭の中には脱獄よりも殺戮に目覚めていた。

誰にもバレずに逃げ出すのではなく、目に映るもの全てを壊せば自ずと外に出れることに気がついたからだ。

もちろんアイツらも馬鹿ではない。私を含む実験体の部屋には魔法を封印する刻印が付けられている。

そのため勝手に魔法を扱うことは出来なかった。

1人の力では外に出るのは残念ながら不可能に近い事がこの数年で分かってはいた。だが、その程度で諦めるほど私の意思は緩いものでは無い。

私を観察する観察班の中に私に対する興味を強く持つものが1人いることは分かっていた。ここ数年私はあえてアイツらの期待以上のデータを渡してきた。

どうせ渡っても最後にはこの施設そのものが無くなるのだからあげても問題は無いと判断したからだ。

そして、それと同時に一際私に興味を持つ研究員の欲望を駆り立てていたのだ。

そいつならきっと裏切り行為を行うと感じたから…

案の定そいつは裏切り行為をしてきた。夜間に私の研究棟に忍び込み私の牢の鍵を開けた。

そいつは”自分ならA-00を支配できる”と勘違いしたのだろうな。特に私に害を与えることはせず連れ出そうとしたが、その慢心を打ち砕くように私はそいつの頭を跳ね飛ばした。連れ出そうとした動機は単純で、私という戦力。私という知力。その全てを保有したかった、とか言ってたかな。

人の時間を奪い、己の至福を肥やすために惨いことをしてきた大人達に、己の罪の深さを知らしめる日が来たのだ。実験体を恐れるといい欲深い汚らしい大人達よ……これから先は、私の逆襲の時間だ。

魔王勇者 〜ジュエリーボックス〜

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