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ある日、誰もいないオフィスのデスクで鈴子が仕事をしている時に専務の増田がやってきた、彼はドカッと鈴子のデスクの前に横柄な態度で脚を組んで座り、じっと彼女を見た
「なぁ、鈴子、余計な話は省いて手短に言おう」
増田が唐突に切り出した、じっと鈴子は増田を見た、初めて彼を見た時は引き締まった体をしていて素敵な男性だと思った事はあった、そして一緒に定正の元で仕事をして彼は頭がキレて優秀なことも分かっていた
「あんまり深入りするな、俺と会長は20年も前から一緒にビジネスをやって来ているんだ、俺からしたらお前はつい最近生まれた赤ん坊みたいなものだ、いくら会長の愛人だからといって、女が男の仕事に口を挟むんじゃない、自分を何様だと思ってるんだ」
鈴子は表情を硬くした、増田の目は鈴子の頭のてっぺんからつま先まで眺め回していた、その目は「いったい会長はこの女のどこをそんなに評価しているのだ?」と語っていた、そして増田の視線は鈴子の胸に留まった
大企業の堕落した風習はここにもあった、いつだって企業の利益を上げているのは下っ端でこき使われている者で、その中で上に行けば行くほど役得を貪る者の多いこと・・・この男は仕事は出来るが強欲だ・・・鈴子は言った
「ご指導ありがとうございます、これからは改めます」
増田はややホッとした様子で鈴子に微笑んだ
「そ、そうか・・・分かってくれればいいんだ、君は頭が良いからきっとそう言ってくれると思ったよ」
それじゃ、と増田が出口に向かうのを鈴子が立ち上がり、一緒にエレベーター出口まで見送った
エレベーターが閉まる瞬間、鈴子は増田に微笑んだ、増田も微笑み返して、鈴子に「じゃあな」とヒラヒラ手を振った
それから一カ月後、増田は北海道支社に転勤になった