コンビニで弁当を購入し、学校へ向かう。季節は移ろい、もう5月。高校生の生活も慣れてきた。5年ほど前に建て替えられた綺麗な校舎に入り、まだ新しい自転車を小屋に停める。陽キャ共は集団で教室へ向かっていくが、スクールカースト最下層にしてぼっちの俺は今日も今日とて孤独に廊下を進む。教室について席に向かう。俺の席は窓側の1番後ろ。席に着いてリュックを横にかけて、本を読んでいると、隣から声がかかった。
「おはよう」
隣を見るとそこには、美少女、赤嶺紅来〈あかみねくくる〉がいた。綺麗な黒髪に赤い瞳、整った鼻筋、透き通るように綺麗な肌。誰もが羨む学校の二大美女の一人だ。そんな彼女が俺の方を見ている。目はばっちり合っているのだが、二大美女が俺に挨拶してくるわけが無いので、スルーして読書に戻った。すると、また隣から声がかかった。
「ねぇ」
紅来がまた声を掛けてきた。今度は少し眉根を寄せていたが、顔が整っているためそれも可愛い。俺に言ってきているのかとおもい、周りを見渡しても、誰もいなかった。これは本当に俺に話しかけている可能性が出てきた。なので、独り言だと言い訳ができるくらいの小さな声量で答えた。
「ア、ハイ」
「おはよう」
「お、おはよう」
それを聞くと、彼女ははにかんで、友達の元へててっと向かっていった。とても可愛かった。
朝読書の時間が終わったが、キリのいいところまで読みたかったため、10分しかない休み時間を削って読み進めていた。するといきなり、
「何読んでるのー?」
と隣から声がかかった。本を読んでいたのは俺だけだったので、俺に話しかけているのだろう。なにかの罰ゲームだろうか。十中八九知らないだろうと思いながら、答えた。
「そして誰もいなくなった」
「アガサ・クリスティね。この本翻訳が面白いよねー」
「それな」
そうなんだよこの本クレイジーをキチガイって翻訳するせいでキチガイの巣窟みたいになってるんだよね。じゃなくて!なんでこいつはこの本知ってるのん?可愛いJKってセックスで頭の中がいっぱいじゃないの?俺と同じく図書委員に立候補してたから、本に興味があるのかなーくらいには思ってたけど、めちゃくちゃ詳しいやんけ。
「赤嶺さんって本とか興味あるんですか?」
「うん。す、好きな人がいつも本読んでるから私も読んでみようと思って読んでみたらハマっちゃって」
「へぇ」
恥ずかしそうに語る紅来はとても可愛かった。
その好きな人ってまさか俺の事だったりします?しねぇよアホか。