※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
「逃げてきたんだ、本当は」
堪えきれず零れてしまった溜息のような、涙のような声だった。
けれど、思わず口をついて出てしまったのとも違う。
あれは多分、私に聞かせるつもりのない言葉だった。
〈File77:コペルニクス的転回〉
「ピアスの落とし物?うーん、見なかったと思うけど……」
「そうですか……。すみません、お仕事の邪魔してしまって」
今日何度目かの同じようなやり取りに、つい肩を落としてしまった。
店先を出たところで、ゆるく握りしめていた拳を開く。
私の心情を切り取ったように、見慣れたピアスの片割れが曇天でくすんで見えた。
ピアスを片方なくし青ざめたのは、先週末のことだった。
その日の午前中は事務所でデスクワークをこなし、午後は例の事件の事情聴取のために半休を取ってい****************
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