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蒼空が驚いているなんて事は一ミリも知らない柚杏と海晴はまだ走っていた。
「待って!」
急に柚杏が立ち止まり、海晴も柚杏に追い付くなり立ち止まった。
「な、何、やっと僕を待ってくれる気になったの?」
少し疲れたように海晴は柚杏にそう尋ねた。
消え入りそうな程小さな声で二人は話し始めた。
「な訳無いでしょ。じゃなくて、この先に、外の人が居る」
「え、」
海晴は、柚杏の辛辣な言葉にツッコミを入れるよりも前に、衝撃を受けたようだ。
「動物達から聞いたから正確な物だよ」
いつにも増して真剣な表情で柚杏が告げるものだから、海晴はこの“外の人”をどうやって追い出そうか思考を巡らせていた。
「このまま放置しとこう。そうしたら、ポロロッカにやられるかもだし」
柚杏は一つ、海晴に提案してみた。
「ポロロッカが来るまでにその人間が此処を破壊し尽くしちゃうかもじゃん」
海晴は酷く外の人を嫌っていた。それは無理も無い事なのだ。彼の愛した植物や動物がどれ程外の人に連れて行かれ、殺され、破壊された事か。それはもう、彼の両の手では数え切れない程だろう。
それに、ここ最近の暑さは外の人が招いたものだと聞く。それが余計に海晴の外の人嫌いを悪化させたのだろう。
「でも、外の人は一人だし、迷子みたいだよ。迷子とは思えないぐらいワクワクして進んでるみたいだけだ」
そう言った柚杏は少し驚いているようだった。
「はぁ?迷子?」
それを聞いた海晴は混乱しているようだ。
「ま、まぁ、海晴も能力で植物達に聞けばいいじゃんか」
この現状はこの二人にとっては異常だろう。
「わ、分かった」
驚きと混乱と疑問と、そんな感情で頭がパンクしそうになりつつも、海晴は近くに居た蔦に聞くことにした。