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「わ、分かった」
驚きと混乱と疑問と、そんな感情で頭がパンクしそうになりつつも、海晴は近くに居た蔦に聞くことにした。
「教えて欲しいんだ。うん、うん、え、はぁ」
蔦と話している海晴の相槌はどんどん呆れたものになっていた。
「外の人、今、凄い勢いで転んだらしい」
「哀れ」
二人共、驚きを通り越して、今はもう、哀れんでいた。
蒼空は、そんなふうに二人に会われたれているなんてことはつゆ知らず、木に謝り倒していた。
「ごめんね、僕が引っ掛かっちゃったせいで、痛かったよね、ごめんね」
先程からずっとこの調子だ。
自身の擦りむいた膝の事なんて今の彼にはどうでも良かった。今の彼には、自分が木の根に引っ掛かってしまった。という事実だけが必要なのだ。
彼は自然豊かな田舎で生まれ育った。両親の口癖は、「植物も生きてるんだから、ぶつかってしまったのなら謝りなさい」だった。だから彼はかれこれ二、三分木に向かって正座をしながら謝り続けていた。
いまだに蒼空が土下座を続けていると、奥からガサゴソと音が聞こえた。
「木が困り果ててるから止めてあげなよ」
大きな溜め息をつきながら海晴が蒼空にそう告げた。
「こんな外の人初めて見たよ」
可笑しそうに笑いながら柚杏はそう呟いた。
「だ、誰ぇ?」
一方、蒼空は正座をしながら大混乱中だ。
そんな蒼空の間抜けな声に柚杏は笑い転げた。
そんな柚杏に海晴は呆れつつも、蒼空への警戒を怠らなかった。
蒼空はこんな二人の行動を見てさらに混乱した。
さぁ、何とも言えないカオスな絵面が完成した。どうしたものか。
「柚杏、笑い過ぎ」
「だっ、だってっ、この人っ、ヒィ、変な、声っ」
柚杏は数分経ってもヒィヒィ言いながら笑い転げている。
「あ、えっとぉ、おはようございます?」
恐る恐ると言うように蒼空は真っ昼間だが、そう言った。
「ん、こんにちは」
素っ気無く海晴はそう返した。