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「ほんとに私を倒さないって約束してくれるのか?」
「んー…絶対とは言いきれないが少なくとも、お前が変な行動取るとかしなければ私もやり合いたくはないかな。面倒だし…。」
ベルノが召喚した【歴戦の銀狼】が平原を走り回り、その上に二人が乗って他愛のない雑談をしている。
ベルノは自身を子供とバカにした参加者を捕まえたイノシシ『ベンゾルテ』によって引いてまわった結果現在二位の座に君臨している強者であり、ポイントが高いため標的でもある。そしてそんなベルノを完封したのはランク外で気を伺うミーシャ。現在二人は互いの目的のために協定を結び行動しているのだ。
ベルノは友人であるルーマという人物に会うために、ミーシャはプリンセスまたの名をプリンというこちらも友人に会うために。しかしミーシャの場合は会って協力という訳ではなく戦闘がしたいという血気盛んな理由ではある。
人を探すには徒歩よりも今乗っている銀狼のようにこういった移動があると便利なのは確かである。ミーシャはベルノを完封し言うことを聞かせる権利を得たので『足』として使わされているのだ。
「なぁクソ魔法使い?」
「なんだクソガキ?」
「すげー今更だけどさ私らこうやって移動してて目立たない?」
「目立つけど安心しな。私が索敵してるから。」
「銀狼の背中で寝そべってるやつの発言は信用出来ないんだよばか。」
「もっかい落とし穴にコイツごと埋めるぞ」
「索敵してくれてありがとうございますミーシャさん!」
「手首球体関節になってるレベルでグルグルまわるじゃん。」
「生き延びる為にはプライドとかぜーんぶ捨てて意見も変えてかないとね!」
「そのうち信用失って取り返しつかないことになるぞ…。」
「あっ!見て見て!!あそこで誰か戦ってるよ!」
「んぉ〜?誰が戦ってるんだ?」
「おっきい盾を持ってる人とおっきい斧を持ってる人の真剣勝負みたいだね!」
「ちょっと遠くから見てるか。」
槍斧を軽々と操り猛攻を仕掛ける一人の女性とそれを大盾で防ぎ気を伺う一人の男性。防戦一方のように見えるが、大盾使いはこれが仕事であり獲得しているスキルによってはアタッカーとしての性能を発揮することもあるのだ。
「守ってばかりのくせしてTOP10入りを果たすなんて珍しいこともあるみたいだなぁ?」
「まぁ運が良かったんだよ。君のような実力者には当たってないからね。」
「あたしとやり合う前の奴らは雑魚っていいてぇのか?」
「言葉を選ばないならそうなるな。」
「アンタもなかなかクソ野郎じゃないか!」
「こういうイベントでは実力ある者が上に立つことが多い。もちろん実力だけでなく必要なのは運もだがな。その点俺は運が良かったんだよ。大盾使いが一時的でもTOP10に入れてるんだからな。」
「それじゃあ早速で悪いがアンタにはTOP10から降りてもらおうか!【荒れ狂う風の舞】」
彼女が槍斧を頭上でぐるぐると回した後地面に突き刺すとそこを起点に円形に風が吹き荒れ彼女を守るようにその風が暴れ始める。
「うおぉ!?こいつァ…ヤバめだな。」
「さぁどうする?私に傷をつけたいならこの嵐を抜けて来るしかない。でも、簡単には抜けれないぞ?」
「大盾使いは防御力が段違いに高いと言えど流石にこれに突っ込むほど過信はできん。とはいえ近付かないとこちらの攻撃はおろか君も攻撃できまい?」
「この風を作り出したのはあたしよ?操ることなんて他愛もないとなぜ気付かないの?」
「操れるなら既にその風の範囲を広げて俺を襲っているはずだが、それをしないあたり操れないか操れる範囲に限界があるの二択だ。どうだ?違ったかな?」
「……ふん。最低限の知識があるところを見ると運だけでTOP10に立ってる訳じゃないんだね?」
「まぁ、それがわかったところでなにか打開策があるかと問われれば無いに等しいんだがそうだな……。あれこれ考えるのは俺も苦手なんでやはり正面突破と行こうかな。別にまだ第2ラウンドが始まったばかり、恐らくあと収縮は二回ある。ならば別に今の順位を死守するには値しないからな。それに………。」
風で守られてる槍斧使いから目を離し自身の後方をチラッと見る。遠いがしかし確かに自分らの戦闘を見る何者かがいることを確認、その『観客』が敵意のないことも察し単に情報を得ようとしてるだけなのも分かっていてなお戦闘を続行するために視線を再び槍斧使いの彼女に戻す。
「先に言っておこう。俺はお前を倒せない。だからこそ超えるべき壁として名を聞かせてもらおう。」
「答えなくとも順位を言えば分かる。メニューから現在のランキングを確認できるのだからな。私は『六位』の人物だ。」
「じゃあ俺は『八位』の男だ。最期散る間際に見せてやるか、大盾使いのワンチャンってやつを。」
その後自己バフ系の魔法やスキルをこれでもかと使いその状態で風の壁を突き破っていきその勢いを殺さず彼女に体当たりを行う。彼女を守る風とそれを突き破ろうとする大盾が接触し甲高い金属音をたてながら彼はその壁の突破を試み、結果として内側まで入ることに成功した。
「あったま悪いゴリ押しで突破してくれたがどうだぁ?」
「それだけバフかければ大盾使いの防御力なら突破は可能だけど、その分攻撃に使うための魔力は残ってるのかしら? 」
「お察しの通りスッカラカンだが、何もこの盾は守るだけのものじゃないんだよなぁ!」
突破した勢いを使いそのまま槍斧使いの彼女に体当を仕掛ける。が、流石にそれは見透かされていたようで簡単に避けられ背後を取られる。
「確かにその質量で押されたらひとたまりもないけど、その行動は予想が着くし何より動きがトロイから簡単に背後を取れちゃったわよ?」
「油断してると痛い目見るぜぇ!」
背後にまわられることを予想し既に体当たりをやめており大盾の『盾』としての持ち方からものを持つように長方形の盾の横を持ちその状態で横なぎの攻撃を行う。これは予想出来なかったのか対応が遅れ右横腹に直撃し自身が作り出した風の壁に激突、そのまま身体中に傷を多く作り風の勢いで再び円の中心付近まで飛ばされる。
「カハッ……。はぁ、はぁ………。そんな馬鹿みたいな攻撃方法思いついても実行するやついるとは思わないじゃないの。」
「窮鼠猫を噛む、てやつかな?だが、俺の手札はもう無くなったわ。あの壁を突破するのに全力使ったからな。」
「確かにワンチャンありそうな雰囲気は感じられたわ…。私も大盾使いを少しバカにしてた節はあったからね。」
「対モンスターなら頼れる役職だが、対人だと思ったよりも成果は振るわなかったな。んじゃもう一思いにぶった斬ってくれ。ガス欠でこの辺うろつきたくないしな。」
「当たり前よ、ポイントも欲しいし。」
そういい槍斧を軽く回したあと容赦なく大盾使いの男を切り裂くと切られた男は満足気な顔をして光の粒となり消えた。その後槍斧使いの彼女に大きくポイントが入り順位が変動する。
「う〜ん♪今ので一気に二位に上がれたわね。やっぱりヤルならTOP10の人間狩りだわぁ…。」
この戦闘を遠くで見ていた二人は……。
「ねぇクソ魔法使い?」
「ん?」
「あれこっちに気がついてないし逃げない?」
「そうねぇ…。私とも相性悪そうだしそれがいいかも。」
「んー?さっきから感じるこの視線…。あっちからかぁ?」
「…あ、あの人こっちに気付いたかも。」
「よし!逃げるよクソ魔法使い!」
「私なんも出来ないから頼むわぁ」
「あのシルエット的に元二位のベルノっていう奴だな?てことはあれ倒せば確定で一位になれる!絶対逃がさん!!」