テラーノベル
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静かな海を眺めながら釣り糸を垂らし片目隠れの掴みどころが見えない黒髪男のゴザルと共に行動を共にすることになっているプリン。当たり前だが面識がないため気まずい空気が流れていく…。
(気まずいわぁ…。単純に面識ないのもそうだけどこの人底知れない何かがあるのがまぁって感じよね。 短剣に小さなクロスボウ、そんでもって布製品の防具なのにランキング的に言えば三位という高順位に立ってる人。彼の職業が分からないけど恐らく盗賊とかそっち系の人だとは思うけどそれでも真正面からの戦闘においては不利なはず……。てことはそれを補うためのスキルや魔法を覚えてるのかな?なんにせよ敵には回したくないかなぁ)
「…プリン、と言ったよね?」
「えっ?あ、はいそうですけど。」
「君はあれか、例のクマを素手で倒した剣士さんだよね。」
「やっぱり…噂になってますよねぇ……。」
「正直そんな変な遊び方をする人は限られてるからね。で、初心者さんなのも一応知ってるよ。」
「ま、まぁ…こんな貧相な装備してますからねぇ私。」
「あんまりこういうことを言うもんじゃないけどよくその装備でイベント参加しようと思ったね?」
「本当はもっといい装備があるんですけど、その装備が特注品でしてそれを買うお金がないからお金稼ぎで参加したって感じですね」
「TOP10に入れば最低でも5万ゴールドは手に入るからそれ目当てって感じか。」
「一位とかになりたい訳じゃないんで本当は最終ラウンドの時に10位の人を倒して滑り込もうと思ってたんですけど……。」
「まぁ人生そんな上手くは行かないもんだよ。俺も似たような理由で戦闘避けてただここで釣りしてるだけなのに襲われてばかりでね。」
「マップの端で釣りとは随分と保守的だなぁゴザルにプリンセス?」
うっわぁ……。典型的なモブが現れたよォ。とはいえ今の私は搾りかす程度の魔力しかないから正直真正面からはやりたくないなぁ……。
「やっぱりもう釣りしてゆっくりは出来ないのか…。じゃあ仕方ない。俺も少しはちゃんと戦うか。」
釣りをやめて素朴な釣竿を地面に置き、声を掛けてきた男たちの方を向きひとつ大きな欠伸をした後刹那の間に男の前に立ち首元に短剣をそっと当てる。
「俺、選んだ職業的にこういう真っ向勝負が苦手なヤツを選んだんだよね。【暗殺者】て言うんだけどさ。」
は、はやい…。私も速さには自信があるけどこの人は私以上に速い。ステ振り的にこの人も極振りの類の人なのか?でも、暗殺者なら素早さに振る必要が無い気がするけど一体なぜそこに極振りしたんだろう?
「スキルの中で面白いものがあって【ラッキーナイフ】ていう技があってさ?これ使うと確率で相手を即死させられるんだよね。当たった箇所関係なしに致命傷を与えるっていうやつなんだけど成功確率で言えば多分5%を切ってるんじゃないかな?でもさ、そういうギャンブル要素って面白いよね。」
「な、何をするつもりだ!」
「ただの運試しだよ。今から俺はあんたの腹にこのナイフを突き刺す。その時さっきのスキル【ラッキーナイフ】を使うんだけど、それで生き残れたら一分間俺は何もしない。つまりは確定で俺を殺れる。どう?悪くないでしょ?」
圧倒的に分が悪い賭けを自ら持ちかけた?だって今の説明を聞いたら【ラッキーナイフ】が当たる確率とんでもなく低いじゃん。そんな事しなくても今当ててるナイフを引けば勝ちなのになんでそんなことを…。
「ちなみに今俺が使ってるナイフは市販のやっすいナイフだからダメージも全く痛くないレベルなんじゃないかな?」
「ふ、ふん!ならその賭け受けてやろう!今の説明的に俺の方が圧倒的に有利だからな!」
「いいね。男に二言は無いもんね。じゃあ神にでも祈ってるといいよ。」
そういい首に当てたナイフを腹に当ててスキルを発動し容赦なく突き刺す。刺された男の表情を見ると明らかに勝ち誇った顔をしていた。
「どうやら、この勝負俺の勝ちだな?」
「……て、思うじゃん?」
「はぁ?」
瞬間一気に相手の体力が減っていき光の粒となって消えた。
「残念だったね俺の勝ち。運が良かったなぁ俺、なんつってね。俺のステ振りは『幸運』に全振りしてるラッキーマンなんだよ。それによって5%で、起きる事象をMAX15%まで引き上げられるんだ。ま、消えたやつにそんなこと言っても意味無いか。」
や、やべぇ……。この人緩い感じ出してるけど思考回路はだいぶイカれてるかもしれない…。
「あ、あのぉ?」
「ん?」
「一個だけ聞いてもいいですか?」
「別に構わないよ。」
「私たち海側にいたじゃないですか?それでさっきの人はそこから数メートルは離れてたのにどうやってあの距離を詰めたんです?やっぱりスキルによる加速ですか?」
「そうだね。俺は暗殺者っていう職業についてるんだけど隠密に特化してる職業で気配を消すものとか色々あるんだけどねその中に【瞬歩】ていうのと【気配消し】ていう二種のスキルがあってそれを合わせて使ったんだ。」
「【気配消し】は名前から察しが着くけど【瞬歩】っていうのは?」
「距離によって使うMP量が変わるんだけどMPを消費することで瞬間的にすばやさのステータスを5倍にまで跳ねあげることが出来るスキルなんだ。ちなみに今の距離を移動するだけで半分近く持っていかれるんだけどね。」
「それが今の速さの仕組みですか……。」
「暗殺者や盗賊、狩人の強みは奇襲。つまり無防備状態の時の一撃が最強であるわけで、それを外したら他の職種に負けてしまうんだ。【瞬歩】は距離を詰めるだけじゃなくて万が一外した時用の撤退手段としても使えるもの。」
「かなりピーキーな性能してる職種なんですねぇ……。」
「まぁ、その方が面白いからね。それじゃあ俺らもゆっくり出来なくなってきたから場所を変えようか。」
「どこ向かうんですか?」
「最終的に中心にみんなが集まるだろうから先にそこに入ってぬくぬくしておこうか。マップを見た感じ【森林エリア】の割合が気持ち多そうだしね。」
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