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瀬名 紫陽花
コメント
1件
うわっ、めっちゃ可愛い話!!🥺💕 クロの「ラクして暮らしたい」に全力すぎるところ、ウルフに話す前から拒否られてるところ、花子の控えめな憧れ——3人ともキャラが立ってて、もう仲良し感がじわじわくる…! 「アイドルになって一生ラクしたい」って発想がもう死神らしくなくて笑ったけど、真剣すぎて逆に応援したくなる。続き、絶対読みたいです!!🌙🤍
「あー、ずぅぅっとラクして暮らしたいなぁ」
死神学校の屋上で、寝転がりながらずっとラクして暮らす方法を考えるのが、見習い死神クロの1日の過ごし方だった。
死神は頭がドクロになっていて鋭いカマを持ち、黒いマントを纏っている妖怪だ。妖界から特別な方法で人間界の世界に行っては、死んでゆく人間の魂を運ぶのが仕事である。
その大事な死神のカマを器用に使って、彼はひょいひょいとドクロスナックを口に放り込んでいた。ドクロスナックは、地獄の炎で地獄唐辛子を炙って作ったオヤツだ。口の中で焼けるほど熱く弾けて消える、かーっとくる感じがたまらない。
クロが寝っ転がっていると、屋上のドアが開いた。びゅうううっ。こういう時だけ、クロの動きは素早い。ギロチン台と恐竜の頭の骨の隙間に潜り込んで隠れる。どうして死神学校の屋上にそんなものがあるかは、誰も知らない。
現れたのは、年寄りと眼鏡をかけた若い二人の死神先生だった。
「クロめ!今日はどこでサボっているんだ?もう授業も終わりだってのに、一度も顔を見せなかったぞ!」
先生たちはいつもサボっているクロを探しに来たのだ。見つかると先生のカマでバラバラにされて、丸一日物干し台に吊るされることになる。骨を繋げば、元には戻るけども。
「クロめ。まさか人間界まで行ってたりせんだろうな」
先生の片方が冗談を言った。
「でも、人間界に行ってもサボれないじゃないですか。私たち死神にとっては、魂をとってくる仕事場ですから」
もう一方の若い死神先生が首を傾げる。
「この頃の人間界じゃ、妖怪が主役の漫画やアニメがあるそうだ。死神もアイドルみたいになれるかもしれんていう話なのさ」
話しながら先生たちが帰るのを確かめて、クロはゴソゴソと這い出た。
「どっひゃあっ!そうだったのかぁ!びっくりした。人間界って、そんないいところだったんだなぁ」
先生の冗談を、彼は信じ込んでいる。
「アイドルっていうと、どこに行っても人気者ってことだよね。うひゃひゃ。こりゃあ、ドクロスナックにもこまらないぞお。それどころか、毎日デートの予約でいっぱいになっちゃう。困るなあ。女の子とデートなんてしたことないのに。うっひー」
盛り上がって踊りまくり、はっと我に返った。
「おっとっと、いけないいけない。まだ何にもしてないのに、出来た気になってたよ。人間の世界に行かなくちゃ!」
走り出しかけたところで、ぴたりと足が止まる。
一人で人間界へ行くのは、流石のクロもちょっと怖い。一人でダメなら……もちろん友達を誘うのだ。
公園の時計は午前五時を指している。彼がいそうな近くの公園に入ると、針山の近くにウルフがいた。
「おー、いたいた。なあ、ウルフ!」とクロが声をかけた途端。
「ムリムリムリムリ。ムリだって!」
狼男のウルフは、ぶるぶると頭を左右に振る。
「まだ何も言ってないですよ?」
「あれ、そうだっけ?ごめんごめん。クロくんの顔を見た途端、また何かラクして暮らすためにとんでもない話を持ちかけられてた気になってたよ」
「ちぇ、それは酷いなー。今日は、いい話に誘いに来たのにー」
苦笑いするクロに、彼はポリポリと頭を掻いた。
「そうだったんだ。ごめんね。何に誘ってくれるの?」
「おお、それだ!人間界に行って、アイドルになろう。一生ラクして暮らせること間違いなしっ」
「やっぱり無茶言ってるじゃないかっー!」
逃げ出そうとするウルフの尻尾を掴んで、彼はすりすりと身体を近寄せる。
「そんなこと言わないでさぁ。一緒に行こうよー。なっ?一人じゃダメなんだよー」
「なっ、じゃないよ。人間界みたいな怖いところなんて……」
普通の狼男は大体乱暴者で、誰かに噛み付くのが大好きだ。けれどウルフは、気が優しくて大人しいタイプ。それはいいのだが、時々やたら用心深くなってしまう。
「怖いかなぁ、人間界って?ウルフが慎重なのは前からのことだけど、それは流石に天然ボケじゃない?」
「違うって。人間界に行くと、魔物に攫われるって言うよ?」
「魔物?授業で聞いたな……。途中で寝ちゃったけどさ」
それは魔界からやってくる、悪に染まった者たちのことだ。
「でもさ、ウルフ。何でわざわざ人間界で妖怪を攫うんだ?」
「え?いや、それは知らないけど……。た、多分妖界では、誘拐できないからじゃないかなあ」
考え込むウルフの肩を彼がポンと叩いた。
「ま、大丈夫だよ。俺たちなんて、働かせようとしてもなんの役にも立たないんだから」
「……そう言う自信の持ち方もどうかと思うけど。でも……」
やっぱり怖いと言いかけた時、ポツリと声が聞こえる。
「私……行ってみたいかも……です」
ふとそう言ったのは、学校のトイレに住む幽霊の花子だった。トイレの花子さんとも呼ばれている。ある事件がきっかけで、クロとウルフの親友になった。
「私……アイドルに憧れるの……変でしょうか……」
彼女が俯いてしまう。寂しがり屋で人見知りをする花子は、友達を作るのが下手だ。話していても、すぐに失敗したんじゃないかと悩んでしまう。でもクロとウルフは、そんな花子をすぐにフォローする。
「おかしくなんかないよ。僕だってなれるもんならなりたいよ」
ウルフが慌てて励ました。クロも元気づける。
「そうそう。『ユニット』の時代だからな。俺とウルフと花ちゃんの三人でアイドルになろうよ!」
俯いていた花子が、おずおず顔を上げる。
「ということで、ウルフも行くわけだよな〜?」
彼はニヤリと笑った。
「あっ……」
しまったという顔になったけれど、もう遅い。
「俺たち三人、一緒に頑張って一生ラクに暮らすぞ!」
「おーっ!」
「……おー……」
三人の声が揃った。よく考えると何だがおかしなセリフだったけど、とにかく三人の心は一つになる。そしてクロが言う。
「で、人間界ってどうやって行けばいいかな?」
ウルフと花子が、盛大にずっこけた。