テラーノベル
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瀬名 紫陽花
「死神は、人間界に行ってるんでしょ?それは使えないの?」と、ウルフが首を傾げた。
「おお、そうか。妖魔ロードを使えば簡単だ。何でそんなことに気づかなかったんだろう」
クロはポンと手を叩く。
妖魔ロードは人間界と妖界や魔界を繋ぐ、不思議な道のことだ。自然にできたのか、誰かが作ったのかも謎だ。妖界や魔界のあちこちにあるらしいけど、知っている者はありかを秘密にしている。
「まあ、ちょっとした問題はあるけどな」
「なんだい、問題って?」
ウルフに尋ねられて、彼は少し目を逸らす。
「うん。ヌリカベが守っていて、一人前の死神の他は通してくれないんだ」
「それ、大きな問題だから!」
「ウルフ。問題は難しいと思うから解けないんで、できると思えば何とかなるって先生が言っていた。ような気がしないでもない。寝ながら聞いてたから、よく覚えてないけど」
「そ、そういうものなの?」
いい加減な言葉でも、素直な彼は納得しそうになっている。
「そういうもんなんだ!信じていれば、いつか方法が見つかるって」
「……私、思いついたことが……あるんです」
花子がおずおずした声で告げた。
「ほらみろ!できると思えばできる!これでアイドルも安心だ!」
「そ、そうかなあ?」
「ヌリカベには……苦手がある……そうです」
「そうなの?それはなんだい?」
「昔話に……出てくるん……です。火や大風も防ぐ強い壁も……ネズミに齧られると……穴が空く……って……」
花子が言い終わる前に、クロはネズミを捕まえに走り出した。
森の中を三人で彷徨っていると、ゆっくりな足取りで散歩しているフランケンシュタインからネズミを見たという目撃情報をもらう。彼の言う通り木の近くへ行くと、ネズミの尻尾を掴んで捕まえることができた。
こっそりネズミを隠し持って、クロたちは妖魔ロードへ向かう。ヌリカベたちは、しっかり妖魔ロードを塞いでいる。番人というより、扉そのものだ。
隠れて近づくこともできなかったので、クロは正面から行ってぺこりと頭を下げた。
「やあ、こんにちは。おじさんたち、僕は別に妖魔ロードを通りに来たわけじゃありませんよ」
「何を企んでいるんでゴワスか。わざとらしい嘘では騙されん。わっちら一人前の死神の他は、通さんでゴワス」
どっしりとした声を揃えて、ヌリカベ兄弟が言う。
「分かってるよ。だから、これを持ってきたんだ」
彼は懐から蠢くネズミを取り出した。
「どうだ!これを突きつけられたくなければ……どわーっ」
「いーやーっ、ネズミ怖いのーっ!」
甲高い声で悲鳴をあげて、ヌリカベが突進してくる。
「何でこっちに向かってくるんだよー!」
このままじゃ、怖さで混乱しているヌリカベに体当たりされる。クロとウルフは、慌てて走り出した。
「……あのー、横に避ければ……」
一方動いて避けた花子の脇を、走り抜けていく。
「……ああ、びっくりした」
クロとウルフが、よろよろと戻ってきた。
「……ネズミは……どうしたんです……か?」
「ドッカに逃げていったよ」
「がはは!もうネズミがいないなら、怖いものはないでゴワス」
「あ、まだもう一人残ってたんだ?」
「ワシは相棒と違って仕事に忠実でゴワス。決して、怖くて動けなかったんではないでゴワスよ」
「あ、そう。でも片っぽだけじゃ、通り放題だよ、おじさん?」
「しまったあ!なんのっ、これでどうでゴワス!」
素早くステップして、クロたちの前に立ちはだかろうとするヌリカベ。けれど、動いた途端にどしーんと転んでしまう。
「し、しまった!足がもつれたでゴワス」
「じゃあ、さよならー」
ひらひらと手を振って、クロたちはその横をすり抜けた。
「待つでゴワスっ。ワシが起きるのを手伝ってくでゴワスよっ」
「悪いね、おじさん。戻ってきてからねー」
妖魔ロードは不思議な存在だ。何もないところに、大きくて渦巻いた真っ黒な穴がぽっかりと空いている。
「さあ、人間界へ出発だ!」
コメント
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みぅ🤍🥀です、読ませてもらいました〜 ヌリカベの“ネズミが苦手”ってギャップ、可愛くて笑っちゃった😂 クロの「できると思えばできる」理論、めっちゃいい加減だけど花子が真に受けてるのほっこりしたし、そのあとちゃんと解決策になってるから強いなって思ったよ! 妖魔ロードの仕組みも気になるし、3人のコンビ感がいいね。次は人間界で何が起きるのか楽しみにしてる🌙