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成田は獣のような足取りで一歩踏み出し、地の底から這い出すような低い声で呟いた。
「……っ、俺の、なにが間違ってるって言うの」
「全部だ」
俺の言葉を継ぐように、それまで黙っていた尊さんが冷徹に言い放った。
その声には、もう迷いも、かつての情けも一切残っていない。
「お前はずっと……俺をモノ扱いしてきた。倫理も、人間性も欠如している」
「嘘、じゃん、尊くん……。俺が何しても許してくれたじゃん、愛してたからでしょ? 今度も許してよ、ねえ、俺を選んでよ……?」
縋り付くような成田の声。
だが、尊さんの眼差しは、道端の石ころを見るよりも冷たかった。
「許してたんじゃない……会話が成り立たないから、大事なものを盗まれたときも、見過ごしてきただけだ」
「最初こそ好いてたが、お前の本性を知って別れを告げたときだって、お前は自作自演までして俺を加害者に仕立て上げようとした」
「別れようとしたことに腹を立てていただけだろう。もうそのときから、そこに愛なんてものは存在しなかったんだ」
尊さんの言葉は、一言一言が鋭い刃となって成田を切り刻んでいく。
「俺は、もうお前には関わらない。……二度と、会うつもりもない」
その言葉が、止めを刺した。
成田の表情が、まるでお面が割れるように完全に崩れ落ちた。
目を見開いたまま、ガタガタと肩を震わせる。
「……ああぁあああぁぁっ! なんで、なんで! そんなこと言うんだよ、尊くん、酷いじゃん……っ!!」
泣き叫ぶような声は次の瞬間、どす黒い憎悪へと変貌した。
その情緒の乱れ方は、見ていて寒気がするほど異常だった。
「うそだ、うそだよ…現実じゃない、こんなの、認めるわけない……っ!!」
吠えると同時に、成田はスーツの内ポケットへ手を突っ込んだ。
銀色に光る、鋭利な刃物。
それを取り出すと、重心の定まらないふらつく足取りで、殺意を剥き出しにしてこちらへ突進してくる。
「……っ!」
思わず息を呑んだ、その直後だった。
尊さんが流れるような動作で一歩前に出る。
瞬時に片足を振り上げると、成田の手元を正確に、力強く蹴り飛ばした。
カランッ、と鈍い金属音が静かな夜に響く。
光る物体が宙を舞い、アスファルトの上に無様に滑り落ちた。
それは、コンパクトだが鋭利な折り畳み式ナイフだった。
「……た、尊さん!今のうちに通報を……!!」
俺が慌ててスマホを取り出そうとすると、尊さんは乱れた息を整えながら、少しだけ口角を上げた。