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「安心しろ。さっき、お前が隙を作ってくれた間にしておいた」
その言葉を聞いて、さすが尊さんだ…と納得しつつ
張り詰めていた緊張が一気に解け、俺は心底ほっと胸を撫で下ろした。
武器を失い、精神的にも限界を迎えたのか、成田はその場に崩れ落ちていた。
金髪の隙間から、一雫の涙がこぼれ落ちたような気がしたが、それを憐れむ気持ちはもう一ミリも残っていなかった。
ほどなくして、夜の街に赤色灯の光が差し込む。
駆けつけた警察官たちによって、成田はあっさりと取り押さえられた。
抵抗する気力も残っていないのか、彼は人形のように無抵抗のままパトカーに乗せられ、連行されていった。
遠ざかっていくサイレンの音。
尊さんが「もう大丈夫だ」と、優しく、けれど頼もしい手つきで俺の肩を抱き寄せた。
「尊さん、大丈夫ですか…怪我とか、してないですか……?」
「心配するな。それより……よく億さずあそこまで言えたな、お前」
感心したような、少し呆れたような尊さんの声に、俺は照れくさくなって頬を緩める。
「……あはは……。俺もびっくりしてるんですけど……尊さんがいるって思ったら、不思議と震えなくて。守らなきゃってことで頭がいっぱいでしたから」
「ったく、本当に……危なっかしい」
「ええ……まだそれ言います?」
「……。でもまあ、頼もしくはなったかもな」
尊さんのその言葉が、何よりも嬉しかった。
「……! 尊さん……っ!」
気づけば、俺は尊さんの広い胸の中に飛び込んでいた。
服越しに伝わる体温、トクトクと刻まれる心音。
それを確かめるように、ぎゅううっと、強く、強く抱きしめた。
尊さんは少し驚いたようだったけれど、何も言わずに、大きな手でそっと俺を抱きしめ返してくれた。
その後
俺たちは近くの警察署に同行し、事情聴取を受けた。
幸い、怪我人もなく実害が出る前に制圧できたため、数時間ほどの形式的なやり取りで解放されることになった。
署の外に出ると、深夜の澄んだ空気が肺の奥まで染み渡るように心地よかった。
俺たちの日常を激しく揺さぶったあの騒動も、終わってみれば報告書の数ページに収まる程度の出来事として処理されていく。
けれど、繋いだ手の強さと
胸の中に残るこの熱い確信だけは、何枚の紙を重ねても書き切れないほど、確かなものになっていた。
◆◇◆◇
それから、二ヶ月という月日が流れた。
季節は静かに巡り、あの凍てつくような緊張感は過去のものとなりつつあった。