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目が覚めると、隣には抱きついたままの山下くんが眠っていた。
とても静かに眠っていた。
「ん…」
私が少し動いたのか、声を漏らした山下くん。
「おはよ」
私は、山下くんの手をどけ、山下くんに話しかけた。
「ん…はよ」
なぜか昨日は爆睡してしまった。
こんなにゆっくりした朝は久しぶりだった。
そっか、あたしこの時間はいつもバイトの準備をしている頃だ。
休みの日も働いてる自分。
少し疲れたが取れた。
昨日、山下くんにはバイトをしている事を言った。
『全然誰にも言わないでよね?!』
『分かった分かった』
副業してるって言ったら私この会社くびになるかもじゃん!
山下くんは、私がバイトしている事を話すと
特に驚くことはなく
『良いじゃん』
と言った。
それは意外な反応だった。
もっと驚くものなのかと。
「あたしもう起きるよ」
私は布団から起き上がって、洗面台に向かい顔を洗って、外していたコンタクトを着けた。
「…さむ」
部屋の床も、とても冷たかった。
部屋に戻る時、階段があった。
その階段に続く部屋が、大山さんの部屋らしい。
1階の部屋は、山下くんが使っている。
ってか…
「いつまで寝てるの!」
私は山下くんを叩き起す。
「…今何時?」
「9時半」
「…」
「あたしもうすぐ帰るよ?」
「分かった。俺も携帯ショップに行かないと」
なんて寝ぼけながら山下くんは言った。
昨日は、山下くんと特に何も無かった。
まああるわけないか。安心にして一緒に寝ることが出来たし。山下くんだっから何も意識しなかった。
意識する気にもならないけど。
私は支度をし、家を出る準備をする。
「もう帰るからね」
そう一言言うと、山下くんは
眠たそうに起き上がりながら
「気をつけてな」
と言った。
2020秋
社会人2年目の半ば。
あれから月日は流れた。
私はと言うと、3月頃にバイトは辞め
土日祝日はゆっくりしている。
これまではジムに通っていたが、バイトを辞めた時期にホットヨガに通い始めた。
帰りの通勤ラッシュ。
そう言えばその頃、同期のひとり杉野くんからこんな事を言われた。
『お疲れ様。来週の土曜日空いてる?』
『空いてるけど、、』
杉野くん、ひとつ上でスタイルが良くて真面目な人だった。
『遊びに行かない?』
え?私と?
2人ってこと?
女の子に遊びを誘いそうにない、杉野くんであったが勇気をだして言ってくれたのだろうと思い、私は思わずおっけいした。
その日は、杉野くんが車で迎えに来てくれた。
家の車らしい。
だが、噂では杉野くんの実家は、今の仕事関係の会社で、お金持ちらしい。
確かにお坊ちゃまみたい。
車でドライブに連れていってくれた。
私は免許を持っていなかったので、車の話や新幹線の話、その他私が知らないような色んな話をしてくれた。
私はただ頷くくらいで、ほとんど上の空だった。
と、言う出来事がそう言えばあったのを思い出した。
こうして遊びやなんやら誘われるのも、同期に女子が私ひとりしかいないからね。
深い意味は考えてなかった。
その日、杉野くんに
『また誘っていいかな』
と言われ、断れずにいいよ、と言ったけど
それっきり何かしら理由をつけては断るようになり、それからというもの誘われなくなった。
ごめん、杉野くん。
私は自分の趣味の時間が大切で、男の人と遊ぶのにあまり時間を遣えない。
ひとりの時間が欲しいから。
家に着く頃だった。
携帯が鳴る。
「もしもし」
「お、出た」
「山下くん…」
また呑みの誘いですか?
「9月12日空いてる?」
「なんで?」
「皆でバーベキューするんだけど、来ない?」
皆で…バーベキュー…。
「新入社員も含めてさ」
「行きたい!」
それはとても楽しそう。
「おけー、じゃあ詳しくはまたな」
「はーい」
そう言って私は電話を切った。