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#ハッピーエンド
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小気味良く、ポンッと掌に拳を落としたアスタロトは続けて言う、自信に溢れる笑顔でだ、期待大だなこりゃ。
『今言った質量は魔力、つまりお前が毎日摂取してきたモンスター汁、それもフレッシュ搾りたての事だ! 質量が過多になる、要するに食べ過ぎ、飲み過ぎって事だろ? するとどうなったんだ?』
「え? まあ石化ですね…… 体の末端から石になり始めますけどぉ……」
ふむ、なるほどね…… 実際の経験から導き出させようってか? やるじゃんっ!
『だよな? んじゃ何でお前とか石化していないんだ? ペトラは爆ぜていないしギレスラも分厚い鱗で包まれてもいないし、無論、脱皮を繰り返して小ぶりになってもいないよな? 何故だ?』
「何故って…… 子供の頃に教えてもらった通りぃ…… 神様、アスタさんが教えてくれたでしょ? 魔力で石化しそうになったら体中に魔力を流すんだって? 言いましたよね?」
アスタロトはニヤリ、どうやら思った方向へ会話の流れを誘引出来ているようだ。
『うん、そうだな、んでどうやって流すんだったかな? レイブ! 言葉にしてみろよ、さあっ!』
怪訝な顔を浮かべながらも言われた通り言葉にしてみるレイブである。
「俺とペトラ、ギレスラはあの頃教えてもらった通り、ヤバイと思ったらグルグルやって来たから生き残って来れたんですよね? 体が異変を感じたらその場所だけじゃなく全身の魔力を意識的に循環させる、言われた通りにやってきただけです、が…… はっ! グルグル? ぐるぐるぐるぐるって…… 普段よりも高速度で…… 体の中を、流して…… そうかっ! 加速度ってぇ、そーゆー?」
『良しっ! 大正解っ!』
「なーる……」
してやったり、満足気な表情を浮かべるアスタロトと、質量と加速度の関係に少しだけ気がついた感じのレイブ。
小さな声でグルグルと呟きながら自分の掌を見つめていたレイブが、不意に顔を上げてアスタロトに向き直り珍しい早口で聞く。
「待って下さいよっ! 魔力の量と余計になった分をグルグル回して消費するのは判りましたけど、フォースは? フォースって何なんです? 結果はどうなったんですかぁっ?」
アスタロトのニヤリは更に深まる。
『結果か? くふふ、結果というならお前達の今現在の姿、魔力に対応するだけじゃなく、ニンゲンとして竜として魔獣として限界越えの特異な戦闘力を有した存在…… それこそが結果、フォースが為した奇跡だろうよ、くふふふ』
「俺たちスリーマンセルが、結果?」
答えながらレイブは思いを巡らしていた。
――――結果か…… 確かに改めて考えてみればペトラもギレスラも同世代の竜や魔獣に比べて異様に強い、主に荷役としての労働力が、だけど…… 俺自身も変に頑丈だし、鋼体術だってさわりしか知らないのに何枚も多重掛けしている学院長と渡り合える位だし…… なるほど、知らず知らずの内に何らかの効果、フォースの恩恵を受けていたって事、なのか? ふーん、それが魔法、それかスキル、か…… はっ! 判ったぞ!
「判りましたよアスタさん! つまりグルグルによっていつの間にか強靱になった体の丈夫さを生かせ、そう言う事ですよね?」
『ん? まあそうだな』
レイブは足元に積み上げた薪を乱暴に蹴り散らしながら叫ぶ。
「ええーい! 俺たちなら焚き火なんか要らないじゃないかっ! そんなに火を愛でたいんだったら自分で準備しろよ! 金輪際、俺は火なんか熾さないからなっ! この、わがまま魔神めっ!」
『なっ!』
「これで良いんですよね? 滅多な事じゃ死なない強さ、フォースを手に入れたんだから、これからは無駄な労力を使わされそうな場面では今みたいな悪態をついて拒否れば良い、そう言う事で?」
『違うわっ! 話はまだまだ途中だろうに! それに、突然切れるとかやめた方が良いぞ? 我ほどじゃなくても悪魔相手だったら消し炭だぞ、お前』
「あ、そうなんです? じゃあ、済みませんでした……」
『全く!』
必死に考えた結果、レイブが辿り着いた魔法やスキルに関する認識は残念ながら見当違いであった。
割と失礼な態度をとられたアスタロトであったが激高したり憤慨している素振りは見られない。
やはり依り代と憑依者として、他人には窺い知れぬ絆的なものがあるのだろう。
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