【第四話 喜びと驚きと 】
次の日、俊介は昨日のメモを握り締め、朝美が店員をしているカフェへ行った。カランコロン、とベルが鳴り響く。朝美は、元気にいらっしゃいませ…とは出迎えなかった。朝美がいない。カフェに朝美がいない。
「…すみません、お店、間違えました」
俊介はそうとだけ言って、店を出た。俊介は下を見ながら、涙を堪えて歩き出す。自宅へ帰ろうと、早歩きだ。下を向いていたからか、衝撃がきた。誰かとぶつかってしまった。
「あっっ!!!す、すみません!」
走って通り抜けようとした時…気づいた。
「…朝美…さん?」
「…あっ、ど、どうも…」
ぶつかったのは朝美だった。カフェの営業時間なのに、おかしい。
「カフェ、行かないんですか?」
「…クビに、なりまして…」
あはは…と言う朝美。俊介は思わず「えっ、」と言った。…やってしまった。朝美の地雷を踏んだかもしれない。
「ご、ごめんなさい!!落ち込んでますよね…」
「いえいえ」
首をふる朝美。
「あんなブラック会社、辞めて良かったですよ。厨房から罵倒が飛んでくるし…」
俊介はびっくりした。カフェはお洒落だし、静かで、落ち着く。でも、厨房内は罵倒が飛びかっているとのこと。意外性で思わず笑ってしまった。
「…だから、良いんです。これからバイト探ししますから。…で」
朝美は言葉を詰まらせた後、こう言った。
「あなたって、誰なんですか?」
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