「それではさっそく始めよう! まずはそこのお前からだ! 準備を始めろ!!」
試験官の指示に従い、受験者たちが試験を受けていく。
剣士や戦士系の者は、攻撃を盾で受け止める者が多い。
「はああぁっ! 【鉄心】ダ!!」
「おおおぉっ! 【金剛盾】ッ!!」
ミレアやレオナードがそれぞれ優れた防御力を披露する。
『鉄心』は、身体に闘気を流して一時的に身体の頑強さを向上させるスキルだ。
『金剛盾』は、闘気を盾に流して強化する技術である。
どちらもなかなかの上級テクニックだ。
「2人とも合格だ! 次!!」
「わたくしの出番ですわね」
アーシアが進み出る。
彼女は魔導師だ。
剣士や戦士系の者と比べると、防御力に欠けることが多い。
「アーシア、頑張れよっ!」
シンヤは声援を送る。
彼女のことを少しばかり心配しているのだ。
しかし、その心配は無用であった。
なぜなら――
「はあっ!! 【光天結界】!!!」
彼女が発動したのは中級の防御魔法である。
光の障壁を生み出し、敵の魔法による攻撃を防ぐ魔法だ。
この程度の魔法なら、彼女は簡単に使いこなすことができる。
「うむ、素晴らしい魔法だ。文句なしに合格とするぞ!」
「ありがとうございます」
アーシアは優雅に一礼をする。
「やるじゃないか」
「当然ですわ。防御魔法を使える魔導師にとって、この試験は楽なものですもの」
「ふむ。それは確かにな」
一般的に言って、魔法を覚えるのは大変だ。
特に、最初の1つ目や2つ目は苦労する。
習得に苦労することがわかっている状態から、人は何の魔法を習得しようとするか?
当然、攻撃魔法だ。
防御魔法や補助魔法が使えずとも、攻撃魔法さえ使えれば低級の魔物は狩ることができる。
一方で、攻撃魔法を使えず、防御魔法だけを使える者は微妙だ。
パーティを組めば多少の出番はあるだろうが、ソロではまともに狩りすらできないだろう。
そのため、最初の方は攻撃魔法ばかりを取得することになる。
攻撃魔法を数種類習得したら、次は補助魔法だ。
仲間の身体能力を向上させたり、軽い傷を治療したり、索敵したりする魔法である。
防御魔法を習得するのは、攻撃魔法や補助魔法が一通り揃ってからとなる。
だから、アーシアのように防御魔法が使える者は珍しいのだ。
「最後はシンヤ、お前だ! 前に出てこい!!」
「はいよ」
シンヤは気負わずに定位置に向かう。
そのときだった。
「グオオォッ!!!」
突如として、巨大な怪鳥が姿を現した。
そして、シンヤたちのいる場所に向かって猛進してくる。
「なっ!? ヘル・コンドルだと!? B級の魔物がどうしてここに!!」
試験官が驚愕の声を上げる。
怪鳥はシンヤに狙いを定め、さらにスピードを上げた。
「いかん! 試験は中断だ! 逃げろ!!」
試験官がそう叫ぶが――
「【イージス・シールド】」
シンヤは落ち着いて魔法を発動させた。
彼の周囲に不可視の盾が生まれる。
それが、突進してきた怪鳥の嘴を防いだ。
「ガアッ!!」
ヘル・コンドルは、そのまま勢いよく地面に叩きつけられる。
シンヤが生み出した固い障壁に勢いよく突っ込んだことで、脳震盪を起こしたのだ。
「ふんっ!」
「クァ……」
シンヤはヘル・コンドルの嘴を掴み上げる。
「なあ、こいつは処分してもいいのか?」
「あ、ああ……。そいつは乱入してきただけで、試験には関係ない。だが、B級の魔物だぞ。生半可な攻撃は通じな――」
「【ライトニング・ボルテックス】」
バリバリっ!
「クェエエッ!!」
シンヤは怪鳥を掴んだまま、強力な雷魔法でダメージを与える。
そして、止めと言わんばかりに首を締め上げた。
「これでよしっと。さてと、試験を続けようぜ」
「お、おう……そうだな……」
試験官は唖然としていた。
Bランクの魔物を、あっさりと倒してしまったからだ。
引き続き防御力試験が進んでいく。
そして、シンヤも当然のように合格したのだった。