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#最後はハッピーエンド予定
#衝撃のラスト
山根利広
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僕はそのまま走った。
リビングから見て左に白紙さんの部屋、右手に廊下を挟んで足立さんの部屋ともう一つの空き部屋。
どっちに行くか逡巡したが、すぐに足立さんの部屋の方へと向かった。
背後でリビングの扉が、キィと開く音がした。
僕は足立さんの部屋に滑り込むと、すぐにクローゼットへと向かった。
開くと中はウォークインクローゼットになっていて、三畳くらいの広さはある。
僕はその中へ飛び込むと、扉を閉めて息を潜めた。
自分の心臓がうるさいせいで、周りの音がよく聞こえない。
落ち着け、落ち着いてくれ。
意識して深呼吸してみる。
トン。トン。
足音が聞こえる。
あの声の主が、こちらに向かって来ているのだ。
ゆっくりと、じっくりと。
まるで獲物を追い詰めるハンターのように、一歩一歩着実に。
近付いてきたのか、何かぼそぼそと呟いているのが聞こえる。
「……イ……キ……」
何を言っているのか、わからない。
また扉の開く音がして、足音がどんどん大きくなる。
「ユルサナイ……ユルサナイ……ウソツキ……」
何を言っているのか聞き取れたころには、もう目の前にいるのがわかった。
コンコン。
クローゼットの扉がノックされた。
もう逃げ場はない。
コンコン。コンコン。
僕はクローゼットの扉を抑えて、目をぎゅっと瞑った。
お願いだ。
諦めてくれ。
そして成仏してくれ。
……僕の心の声でも聞こえているのかもしれない。
ドン!
扉が強く叩かれた。
ドンドンドン!
人間なら拳が裂けていただろう。
振動で僕の体も扉から動く。
扉を体全体で抑えても、隙間が空いてしまう。
「ハイリマス」
また加工されたような声が聞こえた。
まずい。
そう思ったのと同時、扉が横方向にぐっとひかれた。
全力で止めても、隙間は広まっていく。
ぬっと、血まみれの手が現れた。
扉を抑えて、こじ開けようとしている。
「うわああああ!」
ぎょろりと目玉がのぞき込んできた。
縦に二つ。
真横からのぞき込んでいる。
力が抜けて、床に座り込む。
クローゼットの扉は、勢いよく開かれた。
目の前にいたのは、宅配便の格好をした男だった。
首から下までは、正常な人間に見える。
問題の首だけが、異様に長い。
それを無理やり折り曲げて、僕の顔を見ていた。
「オオ、オオオオオトドケモノデス」
目の前に差し出されたのは、花束だった。
ただすべての花は枯れてしまっている。
僕が受け取らずにいると、男は足を踏み鳴らした。
ビクッと肩を震わせる。
男は何度も、地団太を踏んだ。
「ドウシテドウシテドウシテ! ボクニワライカケテクレタノニ!」
僕の間近にある顔が、みるみる怒りの形相に変わっていく。
歯がぎりぎりと音がなるほどに噛みしめて、口の端からはよだれが垂れていた。
「おい」
今この瞬間、一番聞きたい声が聞こえた。
顔を向けると、そこには――。
「白紙さん!」
ヒーローは、本当に困ったときにやってくるのだ。
「同行者くんは、本当に引き寄せ体質のようだ」
白紙さんはまるで本でも読むように言った。
「来いよ。殺すなら俺が先でもいいだろ」
果たしてあの状態の男が、白紙さんの言葉を理解していたのかはわからない。
それでも、効果はあった。
男は白紙さんに向かって、ノロノロと歩き始めた。
距離が中々縮まらない。
それなのに今回は、早かった。
ぐっと頭を押さえつけられたような圧迫感が、この場を支配する。
そして――。
今回は、一口だった。
男が消えて、その場には一枚の紙きれだけが残った。
僕が拾い上げてそれを見てみると、不在表だった。
宛名の欄に、僕のことを捨てるんですかと書かれていた。
白紙さんは僕の手から不在表を取り上げると、顎に手を当てながら眺めていた。
「俺は同行者くんを侮っていた」
「……どういうことですか?」
「俺はこの男に、心当たりがある」
白紙さんがポケットからスマホを取り出した。
そして、あるネットニュースの画面を見せられる。
「ストーカー殺人の容疑者が自殺……」
「そうだ。そしてこのニュースは今しがた出ていたものだ」
実際に亡くなったのは今ではないとしても、ここ数日の話であることに間違いはないだろう。
「つまりお前は、死にたてほやほやの幽霊を引き寄せたわけだ」
白紙さんの顔に、ふてぶてしい笑顔が浮かんでいる。
「待ってください。今の男がそのストーカーと同じかどうかはわからないですよね」
「お前が体験したものは、このストーカー殺人の事件内容と全く同じ手口だ。犯人は宅配業者のふりをしてオートロックを突破。その後、事件が起こっている」
「そんな……」
僕は言葉を失った。
「そしてもう一つ興味深いのは、これが遠く離れた地域の出来事ってことだ。
同行者くんの「『引き寄せ』には、距離は関係ないんだろう」
「これはどうにかならないんでしょうか」
「さあな」
「さあなって……。僕これからどうしたらいいんですか」
「簡単だ。俺のそばにいれば、お前も自動的に守られる」
「そうじゃなくて、この体質を変えたいんですよ。幽霊との距離が関係ないなら、僕どうなってしまうのか……」
また白紙さんの顔に、ふてぶてしい笑みが浮かんだ。
「ここにいれば、問題ない。だから思う存分、その力を使うといい」
僕は大きくため息をついた。
このままでは、命がいくつあっても足りないのではないだろうか。
その時、白紙さんが何かを見つけて手に取った。
僕が足立さんのデスクに置いたあの写真だった。
それを見つめる白紙さんの瞳は優しい色を帯びていた。
僕の中で、答えは出ていた。
コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 今回の展開、すごく怖かった…。クローゼットに隠れて、ノックされて、腕が覗くところとか、読んでるこっちまで息が止まった。あのストーカー幽霊の「どうして」って叫びも切なくて。でもそこで白紙さんが現れるの、まさにヒーローすぎる…。最後の写真を見つめる優しい瞳、すごく印象に残った。引き寄せ体質って距離関係ないんか…また続きが気になるよ。