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31部長が里奈に引きずられていった翌朝
静まり返ったリビングに激しいインターホンの音が鳴り響いた。
「健一!いるんだろ! 開けなさい!」
ドアの向こうで怒号を上げているのは、健一の父・正造だった。
厳格で、地元の名士としても知られる彼が、息子の「社会的死」と
入院した健一の母から聞いた不倫騒動の真相を確かめに、片田舎から乗り込んできたのだ。
「……っ、親父だ……! 奈緒、どうしよう、親父にシバかれる……!」
健一はエプロン姿のまま、テーブルの下でガタガタと震え出した。
「いいじゃない。ありのままの姿を見せてあげなさいな」
私がドアを開けると、顔を真っ赤にした正造がなだれ込んできた。
「奈緒さん、すまない! このバカ息子が迷惑を……っ、おい、健一!何だその格好は!会社をクビになり、女に現金を貢ぎ、挙句の果てに家で家事手伝いだと!? 恥を知れ!」
正造は健一をテーブルの下から引きずり出し、容赦なくその頬を張り飛ばした。
健一は抵抗もせず、ただ床に伏して泣き叫ぶ。
「申し訳ありません、お父様。でも健一さん、もうどこにも行く場所がないんです。私がこうして『飼って』あげないと、野垂れ死ぬしかありませんから」
「飼うだと……!?奈緒さん、君も君だ!夫が過ちを犯したなら、厳しく正して実家に突き返せばいいものを、こんな見世物のような真似をして……。これでは健一が壊れてしまう!」
正造の正論
しかし、私はそれを鼻で笑った。
「壊れる? とっくに壊れていますよ。……それに、お言葉ですがお父様。あなたにそんなことを言う資格があるのかしら?」
私は一通の古い、色褪せた封筒を正造の前に置いた。
正造の顔から、一瞬で血の気が引いた。
「……これ、は……」
「お父様がかつて地元で隠蔽した、あの土地開発を巡る不適切な献金。それから、健一さんを今の会社にねじ込むために使った、裏のルート」
「……すべて、健一さんが『もしもの時の防衛策』として、実家の書斎から盗み出していたんですよ」
健一が、虚ろな目で正造を見上げた。
そう、健一はかつて、自分の保身のために実の親の弱みさえも握っていたのだ。
「健一、お前…自分の親を売るような真似を……」
「……親父だって、俺を『自慢の息子』として利用してたじゃないか…!俺が失敗した途端、恥さらし扱いして……!!」
親子が互いを罵り合い、醜い本性を剥き出しにする。
私は、その様子もまた「ナオミ」のアカウントで録音していた。
「お父様。健一さんを連れて帰りたいならどうぞ?その代わり、その封筒の中身は明日、地元の新聞社に届きます。あなたの『名士』としての人生も、今日で終わりですね」
正造は、力なくソファに沈み込んだ。
厳格だった父親の背中が、一瞬で老け込み、小さくなる。
「…奈緒さん。君は、最初から……」
「ええ。この家に入る人間は、全員私の『所有物』」
「……お父様、地元の美味しいお酒を持ってきてくださったんでしょう?健一さんの横で、一緒に頂きましょうか。…這いつくばったままでね」
その夜
リビングには二人の男が、私の足元で震えながら酒を注ぎ合う姿があった。
エリートだった息子と、名士だった父親。
二人の「血のプライド」が、私のヒールの下で粉々に砕け散ったのだ。
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#大人ロマンス
#サレ妻