テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
111
5,082
───あと0分───
「…違うでしょ、ぺいんとは。」
今まで感じたことのない頭のモヤモヤに、不思議な気持ちで胸がいっぱいだ。いや、モヤモヤともいうのかわからない。ただ、知っている。この【感情】は、”はらわたが煮えくり返る”と同じ【感情】。…らしい。
おしゃれな雰囲気のする家だと、ここに来た時にはそう思った。それとは真反対の、どこか凍えるようなカチコチな空気に2人で身を固めていた。
「な、何が───・・・」
相手は焦っているのだろうか。いや、違う。それがどういう【感情】なのかわからないまま、焦る、という行動をしているのだ。
相手にとって、焦るという行動は、ただ単なる”なぜかわからないけれど心臓が高鳴る現象”として捉えているのだろう。
自分も、それと同じだ。
どういう【感情】なのかわからないけれど、調べてみて、その現象が”焦る”という名のついた【感情】なのだと、知っている程度なのだから。
凍りついた空気、らしいこれは、俺の言葉でもっと冷たくした。
寒くもないのに鳥肌がたつ。
「───それがいいから、そう言ってるだけ。」
「っ!!!」
相手は目を見開くが、先ほどのように作り物めいた表情はしていない。驚いておきながらも、驚きについては詳しくない様子を表している。
追い討ちをかけるよう、言葉をかけ続けた自分は、何て非情なのだろう。
「ぺいんとは、”こういう場面ではそう言ったほうが良いから”ってだけでそう言ってるだけ!!」
時は戻せないと、分かっているのだ。
これが正しい選択かどうか、今わかることではないとも。
「何にも感情がこもってないくせに!!」
「───クロノアさんだって!!!」
相手にわからせてやろうとした言葉は、意外にも大きく声に出た。
けれど、すぐにぺいんとは反抗してきた。
「クロノアさんだって、人の気持ちわかってないくせに”空気を合わせるため”だけで笑って誤魔化す!!」
人のことは言えない。けれど、痛感した。
人に自分の悪いところを言われると、なぜか心臓が縮まるように苦しくなることを。
「何とも思ってないくせに!!」
───これが喧嘩、というやつか。
感情がないからか、わからない。けれど今だけは、頭だけが妙に冷静なことに腹が立ってくる。喧嘩といえば、もっと炎がメラメラと燃えるようなものだと思っていたが、想像の倍、俺たちの喧嘩は静かで、冷たい。
「……クロノアさん、俺には”わからない”んですよ。」
感情のこもっていない顔は、慣れている。自分がそうだから。
けれど、こんなにも何も考えていない顔は酷く震え上がるものらしい。
「───何、言ってんの……」
蒸し暑い夏の日。蝉がうるさいほどに鳴いていて、雨なぞ降ってもいない、そんな金曜日だった。
明日から夏休みだと言うのに、この異常な暑さにアスファルトも泣いているように見える。無機物を叩く音は、横からも後ろからも聞こえ、よく人が行き来するのだと知らなくてもいいことを今更知った。
そんなどうでもいいことの中を彼───ぺいんとは汗が滴り落ちる中、どこか寂しそうな笑みで笑っている。
首筋から落ちた汗は、少々黄ばんだ制服のTシャツの中へ潜り込む、酷く冷たい汗だった。
ここが外なのではないかと勘違いするほど、体は熱く、汗は冷たい。人の行き来する足音だけが家の外で響いていて。まるで今、登下校でもしているかのようだ。
制服なんて着ていない。けれど、まるでそう錯覚させるように、そこに立っているようだ。
「俺は、【感情】がどういうものかわからない。俺の気持ちが、わからない。」
ぺいんとは言葉を続ける。
───言わないで!!
その言葉は、口から出なかった。
気づいた時には、相手に先を越されていた。
「───【感情】に操られる、”マリオネット”みたいなんですよ。」
コメント
2件
マジでビックリしました!こんなに投稿頻度高いのに1日で2つ投稿出来るとかマジで神様ですね!作中の文で一話か二話の文がコピーされてて「うわっ!最高!」って読みながら思いました!ぺんちゃんとノアさんのペア?みたいなやつあまりないので考えが凄いと思います!これからも応援しています!二酸化炭素さんは一生懸命頑張ってて人一倍凄い人だと思ってる!二酸化炭素さんはマジで一生推せます!