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「クロノアさんだって、俺と同じくせに。」
何を考えてるの。
何を思って言っちゃったの。
何で気づいたの。
何でそんな顔して言えるの。
何を、何で、どうして。
ぺいんとだって、気づきたくなかった。俺も、気づきたくなかった。気づいてしまったら、もう戻れない気がしていたから。だからこそ言葉には出さないでいたのに、なんでぺいんとはそんな怖い笑みでその言葉を出したの。
「【感情】がわからないくせ、【それ】に操られてるなんてバカみたいですよ。」
雨は、降っていない。
「だれかが糸を切ってくれるまで待つ大馬鹿者なんですよね?そうですよね?」
雨が降っていれば。
「僕と、同じなんですよね?」
誰かが、ハサミを持っていれば。
「ねえ、クロノアさん?」
酸性雨でも、ハサミでも、誰でも、この糸を切ってくれれば───
「───何、してんの。」
ふと聞こえた声に、意識が現実へと引き戻される。声の聞こえた方に顔を向ければ、そこにいたのはびしょ濡れになったしにがみくんだった。
窓の音から聞こえる轟音に、外では今、雨が降っているのだと確認できた。
ただ謎なのは、しにがみくんがそこにいることで。
「ねえ、ぺいんとさんとクロノアさん?今の話、嘘ですよね?」
何が起こっているのかわからない。頭の混乱が進んでいく。それでも、目の前で起こっていることを見れば、一目瞭然だ。
───聞かれたのだ、しにがみくんに。俺たちが【感情】なんてものがわからないことを。
「じゃあ、ずっと…」
震えた声で続けるしにがみくんの目には涙が溜まって、今にも溢れ出しそうだった。
「───僕たちの会話、笑ってもなかったんですか…?」
否定すべき言葉は、喉からは出なかった。何かが詰まったように出ないけれど、焦りもなかった。
いつものぺいんとなら、笑って誤魔化しているのだろう。いつもの自分なら、ただそれを見て笑っているだけだろう。
それができていないのは、”諦め”という名のついた【感情】が出ているからだろう。
しん、と静まり返った家は、雨の音に包まれていた。
「………なんて言えばいいのか、わかんない。けど……ごめん。」
謝ったのは、自分だ。そんな自分をぺいんとは驚いた表情をして見ていた。
けれど、これ以上無理だと思ったのだ。これ以上…みんなの仲が壊れることが。
「確かに俺らは【感情】が出てる。けど、何でその【感情】が出るか分かんないんだよ。だから、笑ってる時は本当に笑ってる。でも何で笑ってるか、わからないの。」
こんな説明で、相手に伝わっただろうか。
不安が頭の中を横切るだけで焦りはなかった。ただただ、豪雨の音が頭を痛くする。低気圧のせいだろうか、ガンガンと鳴り響く頭痛がひどく痛い。
相手は、俯いて黙りこくるだけだ。そんな沈黙が続く中、それを誰かが破った。
「───てか、何でしにがみは俺ん家に来たの?」
素朴で単純な疑問だけれど、大事な質問でもあったそれを言葉にしたのはぺいんとだった。そんなぺいんとの質問に、しにがみくんはまだ目頭に溜まっている涙を拭いもせず、顔をこちらに向けて、見据えた。
「……ドッキリ、しに来て。」
「「え。」」
声が重なった。ひどく小さな自分の声と、大きな声量のぺいんとの二つの声が。この静かな空間では、ぺいんとと声は相殺することはせず、どちらの声もよく聞こえた。
困惑の声だった。そりゃそうだ。だって、ドッキリって、それってつまりは───
「───トラゾーも、そこにいるの?」
声に出していたのは、ぺいんとだった。その声は、震えていた。
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