テラーノベル
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リビングには、先ほどまでの重苦しい空気が少しだけ和らぎ、穏やかな時間が流れていた。
それでも話題は、自然とあの日の出来事へ戻っていく。
茜がソファにもたれながら、苦笑混じりに口を開いた。
「うわぁ〜・・・なんか当時の
テレビ業界って色々ヤバそうな感じ」
銚子は遠くを見るような目で頷く。
「確かにそうね・・・」
少し間を置いて続けた。
「怒号が飛び交うのは当たり前だったわね」
その言葉には、華やかに見えるテレビ業界の、裏側を知る者だけが持つ重みがあった。
「人前で叱責させられてる人を何度も見たわ」
その横で、多摩雄が懐かしそうに笑う。
「俺も何度も先輩とか
ディレクターから殴られてたよ」
さらりと語られた一言に、その場の全員が息をのむ。
「す、すごい時代・・・」
さくらは思わず肩をすくめた。
やがて信愛が首をかしげる。
「でも、お母さんが視た
ナワバリ様って、一体なんなんだろ?」
朝陽も考え込むように腕を組む。
「ナワバリって言うくらいだから
領土とか領域に関係してるんですかね?」
さくらも思いついたように続ける。
「でも縄で縛られてたんだよね?」
「縄とも関係してそうだよね」
焔垂はぽつりと呟く。
「縄ね・・・」
その一言だけが静かに部屋へ落ちた。
銚子はゆっくりと話を続ける。
「それから私は楽屋に戻ったの」
視線を伏せる。
「その日は急遽番組が中止になったから
そのまま夫と車で帰る予定だったんだけど」
当時の情景を思い浮かべるように目を細めた。
「正面入り口は、すでに報道陣に囲まれててね」
焔垂が驚いたように身を乗り出す。
「え?もうマスコミが嗅ぎつけたんですか?」
銚子は静かに頷いた。
「ええ・・・ホント早かったわ」
あの日の騒然とした光景が、脳裏に鮮明によみがえる。
「窓の外から──
『あの発言は真意は?』とか
『説明はありますか?』とか」
次々と飛び交う記者たちの声。
「あれこれ質問する声が、ずっと聞こえてきたわ」
朝陽は納得したように息を吐く。
「でも、お母さんはそれまでに100%
未解決事件を解決してたんですよね?
たった1回だって言うのに・・・」
その言葉を受け、銚子は苦く微笑んだ。
「人って、人の失敗やミスにばかり
意識が向きがちだからね」
茜は深く頷きながら苦笑する。
「ああ〜・・居るわ~・・・」
そして呆れたように肩をすくめた。
「10割のうち9割出来てるって
事実があるのに、1割ミスしただけで
全ミスみたいに言うゼロヒャクなヤツ」
その言葉に誰も反論しなかった。
銚子は静かに目を伏せ、苦い記憶を噛み締めるように続ける。
「それからよ・・・」
部屋の空気が再び張り詰める。
「メディアはこぞって、私を
インチキ霊媒師と総叩きにしたわ」
◇ ◇ ◇
1996年。
未解決事件調査隊で起きた放送事故の翌日。
メディアは連日、御船愛子の名を大きく取り上げていた。
昨日まで『奇跡の霊媒師』と持て囃していた者たちが、今日は真逆に『インチキ霊媒師』『稀代のペテン師』と彼女を糾弾していた。
そんな銚子は多摩雄のアパートで一夜を明かしていた。
朝になっても眠ることはできず、虚ろな表情のままテレビ画面を見つめている。
画面の向こうでは、自分を痛烈に批判するコメンテーターや司会者たちが、まるで真実を知っているかのような口ぶりで言葉を並べ立てていた。
◇ ◇ ◇
報道番組では『ご意見番』として、お茶の間を騒がせているコメンテーターが、自分なりの見解を述べていた。
『いや、僕はね、御船愛子さんっていう人をね
『嘘つきでした』って簡単な言葉で
片付けちゃいけないと思いますよ!
だってね?これだけ世間を騒がせて
霊能者として注目されて、それで
今回の事件まで出てきたわけでしょ?
もし本当に彼女が事件を起こして、それを
自分の力で見抜いたように『演出』して
いたんだとしたら、これは相当悪質ですよ
自分で火をつけておいて
『私は火事を予知しました』
って言ってるようなもんですから
しかも、そこに『天縁教団』まで絡んでくる
僕はね、ここが一番気持ち悪いと思うんですよ
一人の女性が『嘘をついてました』
だけならまだ分かるんですよ
でも、その嘘を補強するために
天縁教団を利用していたとしたらね
これはもう個人の問題じゃありませんよ
彼女は自分を『特別な人間』にしたかったんですよ
普通の人間では見えないものが見える
普通の人間には分からないことが分かる
そういう存在になりたかったんだと思うんですよ
だから都合の悪いことが起きるたびに
『千里眼』とか『霊』とか、そういうものを
持ち出して、自分の物語を作ってたんです
僕はね?こういう人をメディアが
『霊能者』として面白がって
持ち上げた責任も当然あると思いますよ!
だって、我々がテレビで取り上げなかったら
ここまで大きな存在になってないわけですから
だからね、御船愛子さんだけを
悪者にして終わり、じゃないんですよ
彼女をスターにしたのは誰なのか
彼女の言葉を面白がって流したのは誰なのか
そこまで含めて、今回の事件は
徹底的に検証する必要があると思いますね
僕だったらね、絶対に本人の口から聞きたいですよ
あなたが今まで語ってきたことは、本当に
全部あなた自身の言葉だったんですかってね』
コメンテーターはカメラに向かって指を突き立てながら、白熱した様子で熱弁している。
#ボカロ
ありあ
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ありあ
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コメント
1件
うわあああ今回も深すぎる…!!😭💕 銚子さんがメディアに叩かれる過去、生々しくて胸がギュッとなるよ…特にコメンテーターの熱弁シーン、めっちゃリアルで「自分で火つけて火事予知したって言うようなもん」って台詞、ドキッとした。ああいう正論ぶった批判ほど心に刺さるよね。 でも家族がしっかり話を聞いて、みんなで「ナワバリ様」の謎を考えてる空気感がじんわり来た…!この家族の絆が物語を温かくしてるんだなあ。次が気になりすぎる!🔥