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「こんなの観なくていいって」
その様子を見かねた多摩雄は、リモコンを手に取り、テレビの電源を切る。
部屋は静寂に包まれた。
しかし銚子は俯いたまま、一言も口を開かない。
多摩雄はため息をつき、小さく呟いた。
「ったく・・・」
窓の外へ目を向けながら、苦々しい表情を浮かべる。
「メディアってのは、つくづく自分勝手な連中だよな」
しばらく沈黙が続く。
そして彼は、銚子の方へ向き直った。
「銚子ちゃんのおかげで、今までに
いくつもの事件が解決して来たってのにさ
ちょっと言葉を間違えただけでこれだ
しまいには自作自演だなんてある事ない事言ってさ」
その言葉を聞いた銚子の肩が、ぴくりと震えた。
「多摩雄さんも──」
「ん?」
多摩雄は首をかしげ、銚子はゆっくり顔を上げる。
瞳には涙が溜まり、声は震えていた。
「多摩雄も私がインチキだって思ってるんでしょ?」
多摩雄は目を見開く。
「え?」
銚子は堰を切ったように涙を流し始めた。
「そんな優しい事言いながら──」
嗚咽をこらえようとするが、声は震え続ける。
「腹の中じゃ私の事、詐欺だって」
涙が頬を伝い落ちる。
「そう思ってるんでしょ!?」
張り詰めていた感情は、ついに限界を迎えた。
世間から浴びせられた罵声、信じていた人々から向けられた疑いの目。
そのすべてが、銚子の心を少しずつ蝕み、人を信じることさえ怖くさせていた。
だからこそ、多摩雄の優しささえも、今の銚子には信じることができない物になっていた。
銚子の叫びは、堰を切ったように溢れ出した。
「私は・・ぐすっ」
涙で言葉が途切れる。
「ただ・・人の為に力を使いたかった」
胸を押さえながら、嗚咽を漏らす。
「人を救いたかった!」
その声は悲鳴にも似ていた。
「番組に恩返ししたかった!」
誰かに認められたかったわけでも、名声が欲しかったわけでもない。
ただ、自分にしかできないことを、自分を必要としてくれる人のために使いたかった。
それだけだった。
「ただ・・ただ、それだけだったのに」
銚子は震える唇を噛み締める。
「なんで・・・」
涙が止まらない。
「なんで私ばっかりこんな・・・」
積み重ねてきた善意が、たった一日で悪意へと塗り替えられた。
その現実を受け止めきれず、声を荒げる。
「こんな事言われなきゃいけないの!?」
多摩雄はゆっくりと銚子へ歩み寄る。
「俺は信じてるよ!」
その一言に、銚子は首を横へ振った。
「嘘ばっかり!」
「嘘なんかじゃない!」
多摩雄は力強く言い切ると、そのまま銚子を強く抱きしめた。
突然の温もりに、銚子は抵抗することもできず、ただ震えていた。
しばらくして、多摩雄が静かに口を開く。
「正直に言うよ・・・」
優しく、それでいて真っ直ぐな声だった。
「確かに銚子ちゃんが言った、天縁教団が
事件に関与してるって話の真意は、霊視をした
銚子ちゃん自身しか分からないと思うよ
そもそも君しか視てないしね」
銚子は黙ったまま耳を傾ける。
「けど俺は今までに何度も見てきた」
多摩雄は銚子の肩に手を添えた。
「千里眼の副作用に苦しんでる
銚子ちゃんの姿を・・この目で!」
その瞳には迷いがなかった。
銚子は涙を拭いながら、小さく呟く。
「多摩雄さん・・ぐすっ」
多摩雄は真っ直ぐ銚子を見つめた。
「どれだけキツくても、どれだけ辛くても番組の為
遺族の為、その身を犠牲にして霊視を続けてた」
一つひとつの言葉に、これまで見てきた銚子の姿が込められていた。
「私がやらなきゃ事件は迷宮入りだって
そう言って、霊視をやめなかった!
それは誰よりも近くで見てきた俺が一番知ってる!」
その言葉に、銚子は再び涙をこぼした。
「ぐすっ・・・」
多摩雄は優しく微笑む。
「確かに今は人の言葉が信用できないかもしれない
疑心暗鬼に陥ってしまうのも無理ないって思う」
それでも、と続ける。
「でもわかってほしい」
多摩雄は銚子の両肩をそっと掴んだ。
「俺は君を疑ってないし
この先もずっと君の事、信用し続ける!」
力強いその言葉には、一片の迷いもなかった。
「死ぬまでだ!」
部屋に静寂が戻る。
銚子はしばらく俯いていたが、やがて小さく顔を上げた。
「多摩雄さん・・ありがとう」
その瞳には、先ほどまでとは違う、かすかな光が宿っていた。
張り詰めていた空気を少しでも和らげようと、多摩雄は照れ隠しのように笑う。
「ほら、とりあえず腹減ったろ?」
返事を待たずにテーブルの方を指差した。
「弁当買って来たから、一緒に食べよう! な?」
銚子は涙を拭い、小さく頷く。
「う、うん・・」
「ほら、唐揚げ弁当買ってきたから♬」
袋の中から弁当を取り出し、得意げに見せる。
「ほら、アイスもあるよ〜♬ほ〜らほ〜ら♬」
多摩雄は袋から更に取り出したアイスを、これみよがしに銚子に見せる。
思わず銚子の口元が少しだけ緩んだ。
「もう・・子供扱いしないでよ」
そう言いながらも、銚子の顔から笑みがこぼれる。
その小さな笑顔を見た多摩雄は、ようやく胸を撫で下ろした。
「さ、食べよ♬」
多摩雄は銚子の頭を優しく撫でた。
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
1件
はる。です! 261話、読了しました…。もう、銚子ちゃんの涙にこっちまでグッときちゃったよ…。 世間からのバッシングに「多摩雄も信じてくれない」って震えるシーン、本当に切なかった。でも多摩雄の「死ぬまでだ!」って言葉、めちゃくちゃ熱いし、ずっと側で見てきたからこその説得力があるよね。 最後の唐揚げ弁当とアイスで笑顔を取り戻すところ、本当にほっとした。二人の絆がさらに深まった良い回だった!