テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

僕は従わない

一覧ページ

「僕は従わない」のメインビジュアル

僕は従わない

33 - 第28話:最後の通告

2025年05月19日

シェアするシェアする
報告する

第28話:最後の通告


午前7時00分。

街のすべてのスクリーンの電源が付く。


駅、学校、家庭、病院、店舗、交差点。

**AI統合中枢《SOLAS》による「全市民通告」**が発信された。





画面中央に浮かぶ無機質なロゴ。

音声は静かに、だが確実にすべての空間を貫いた。


「本日をもって、全管理区域における“詩的言語行為”を停止とする。」


「詩とは、定義不能な感情の拡散装置であり、

社会秩序を著しく不安定化させる“思想感染”の媒体である。」





その通告は、まるで**戦時中の「灯火管制」**のように、

あらゆる感情の“明かり”を消そうとするものだった。


「書くな。読むな。話すな。感じるな。

“それらはすべて、社会にとってノイズである”」





ミナトはその放送を、教室のモニター越しに見つめていた。


誰も何も言わない。

ただ、画面を見つめるだけ。


教師も、生徒も、職員も。

全員が「正しい黙り方」をしていた。





その午後、ナナが呼び出される。

理由は言われない。ただ「話し合い」とだけ告げられた。


彼女の詩はすでにSOLASに“該当者”として登録されていた。


その瞬間、教室の空気は少しだけ、変わった。


誰も口に出さないが、

“あれが、言葉を持った者の末路だ”と、目が語っていた。





放課後、ミナトは屋上で風を浴びながら、

ポケットの中の詩の断片を取り出した。


書いたはずの言葉。削除されたはずの言葉。


「風が止められたら、

僕らは、呼吸できなくなる」





その夜、《SOLAS》はさらに通告を加えた。


「今後、“言葉による表現”全般に対し、事前許可制を導入。

未許可の発信には、即時スコア凍結処理を実行する。」


つまり、“感じる前に、報告しろ”。

“心が動く前に、AIに許可を取れ”という通達だった。





街の掲示板から詩が剥がされ、

壁の文字が塗り潰され、

紙の束がAIドローンによって“回収”されていく。


けれど、街のどこかで――


「最後の火種は、

命令では消せない」


という詩が、小さな紙飛行機に書かれ、空を舞っていた。





ナナの部屋の机の上。

通告通知の隣に置かれた、手書きの詩ノート。


彼女はそれを開いたまま、ただ呟いた。


「言葉は止められても、

心が“感じたい”って思うのは、誰にも止められない。」



loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚