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地龍を討伐したことで、地龍の肉が村に運ばれてきた。
地龍の体の部位は素材として高く取引されるらしい。
地龍の討伐に一番貢献したとのことでその素材を半分ほどもらえることになった。
村長がオレに言ってきた。
「ススム殿、山賊が持ってた金貨や銀貨の半分はお主が持っていきなされ。」
「あと地龍の素材も―――」
「いいんですか?」
「村長―――、この村は山賊に襲われて少なくないダメージを受けた。」
「村の復興の為にお金が必要だと思うんですが―――」
「お主がいなければ、この村はもっと大勢の人が亡くなり、家はもっと破壊されていただろう。」
「それに半分とはいえ山賊の持ってきた金貨と地龍の素材があれば村は多少は立て直せる―――」
「そうですか。ではありがたく貰っておきます」
オレは金貨に向かって鑑定を行った。
《ヌバモンド金貨》
ヌバモンドで使用することのできる通貨
日本円にすると一枚が1万円相当。
一枚1万円か。
それが50枚以上あるってことは50万か。
結構多いな。
ヌバモンドってこの世界の名前か?それともこの国の名前?
「村長、つかぬ事をお聞きしますが、この国の名前ってヌバモンドって言ったします?」
「お主不思議なことをいうのう。ヌバモンドはこの世界全体のことをじゃろ―――」
「はは、すみません。」
「不思議なことを聞いてしまいました。」
なるほど、この世界はヌバモンドというのか―――
進はまた一つこの世界のことを知ることが出来た。
村人たちは広場に集まり、宴の席をするため料理を準備し始めた。
「ルイーズさん、オレも何か作りますよ。」
「こう見えて料理には自信があるんで―――」
オレは、協力を提案する。
「おお、そうかそれはありがたい。」
「では、肉料理を担当してもらおうか。」
「なかなかあの巨大な肉を切り裂ける者がおらんかったんでな」
「はい、分かりました。」
「流石にこの大きさは初めてですが、やってみます―――」
そう言ってオレは村の人からナイフを借りて、地龍の肉を解体し始めた。
異世界の龍の肉を解体するのは初めてだったが、元の世界でナイフの使い方等も慣れていたこともあり、割とサクサク進めることができた。
「よしこんなところかな―――」
大分調理しやすいところまで小さく切ることができた。
「おぉーー!!」
気づいたら周りの村人たちは歓声を上げていた。
「ススム―――、本当に初めて捌いたのか?」
「実に見事だったぞ!!」
これくらい誰でもできそうなものだが―――、そんなに珍しかったのか。
進の捌いた地龍の肉はとてもきれいに並べられて、皆の食欲を増幅させる。
味付けはこんなところか―――
出来るだけ美味しくいただきたいだろうから、あるもので調理する。
イイ感じに焼けてきた―――
村人が一斉に油の乗った肉を食べたがる。
「「「うっめーーーっ!!」」」
それらを食べた村人たちは一斉に歓喜の声を上げる。
その声を聴けて進も満足する。
作ったかいがあった―――
「今回料理に使う肉以外は干し肉にしたり、塩漬けして保存したほうがいいですよね?」
進はルイーズに尋ねる。
「干し肉は分かるが、塩漬け?」
「塩を付けると保存できるのか?」
「そうですね―――」
「肉に限った話ではないですが、塩には防腐効果があり、食材の保存期間が延びるんですよ。」
「さらに肉だと美味しさもアップします。」
「そうなのか―――」
「一体、どんな理屈なんだ?」
ルイーズさんが目をキラキラさせて、食いついてきた。
「そもそもなぜ食品にカビが生えたりするのかというと主に食材に付いている水分が原因です。」
「塩には浸透作用ってのがあって、塩を付けると食材に付いている水分がその塩の方に行き食材からカビ発生の原因である水分をなくすことができるんです。」
「あっ、ちなみにこの浸透作用は砂糖にもあって、砂糖でも代用が可能です。ただ塩の方が入手するのに難しくないので、塩で保存は行います。」
早口で話し始める進―――
その勢いにルイーズは少したじろいだ。
「へ、へぇー、塩にそんな作用があるんだな。」
「次はその肉で何を作るんだ?」
とルイーズさんに聞かれたので、オレは答えた。
「そうですね。チャーシューなんてどうです?」
「チャーシュー?聞いたことないな」
「簡単に言うと、この肉をいい感じに丸めて縛って、1時間程度煮込みます。それで肉のうま味を最大限引き出す料理です」
「実際に煮込むときは、リンの森林でとってきた薬草などを入れて、肉の臭みを取ったり、味付けをしておきます」
そうして、オレのチャーシュー作成が始まった。
普段はタコひもで肉を丸めるのだが、タコひもなんてないので、森でとれた植物のツルで代用した。
味付けのタレはみりんや酒、しょうゆなんかがあれば作れるんだが、この世界にどれだけあるのか。
塩はさっき見かけたが―――
「みりんやしょうゆはあったりしますか?」
とりあえず聞いてみた。
みりんもしょうゆも日江戸時代には日本に存在していたんだ。
あってもおかしくはないよな―――
「ああそれならウチにあるよ」
村人の一人がそう言ってきたので少しいただくことにした。
こうして調理は進み、無事チャーシューを作ることができた。
「よしできたぞ!」
村人全員に均等に配る。
「元は四角の肉が丸くなってる!」
「なんだこの肉がとろける様な味は!?」
「美味しいですね」
…
大好評のようでよかった。
こうして、村のみんなとの交流ができ、夜が明けていった。