コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
〜お茶会2日前〜
「良し、これでお勉強は終わり。良く出来たね。ここ最近、お勉強ばっかりだったから、街に行ってお買い物でもする?」
あれから早一週間。やっとだ。やっと開放された。もうひたすら資料を眺める日々は終わったのだー!てか、私、お茶会にも行かないのに勉強してたときはショックを受けたな。ははは。まあ、行かないのに越したことないけど。
……なのに!今から街に行くはずだったのに!いや、別に街が好きってわけでも無いけど!何故こうなったんだ?いや、原因は分かってる。横を見ると不機嫌な母。真正面を見るとニッコニコの女の人。と、これまた不機嫌そうな男の人と8歳ぐらいの女の子。どうしてこうなった?
ニッコニコの女の人は明るい口調で喋りだす。
「ごめんね、セレスツィアナさん。急に押しかけて。でもどうしても、お茶会に来ていただけたくて。ほら、あのまま絶交してても、もう子供も居るんだし……私達、仲直りできると思うの。だから、私達と一緒に来てくれるわよね。」
怖っ!半分脅しじゃん!いや、この女の人じゃ無くて後ろがね。てかさ、君ら何なん?急に人様の窓から入ってきて。びっくりしたよ。あ、私死ぬんだって、思ったわ!
「そうね、そうだわ。もう子供の居る大の大人が、窓割って不法侵入したり、家名も名乗らないで勝手に椅子に座ったりするわけないものね。」
皮肉。めっちゃ、皮肉。そして、女の人は理解してないな、これ。キョトンとした顔してる。そして、その顔を見てお母さんが不機嫌な顔をする。
「ん?家名?そんなの分かってるでしょう?」
「は?」
やばい、やばい。お母さんがガチギレしそう。ほら、手がプルプルしてるもん!
「ほら、ここには知らない子も居るんだし、わからないわよ。」
お母さんは私の背中をぽんと叩く。
「ええ?そんなことも知らないの?」
見たことも無い不法侵入してきた奴の名前なんて知るか!思わず叫びそうになった口を両手で塞ぐ。
「は?」
こっちも、やばい!爆発寸前!
「まあ、でも、しょうが無いよね。」
女の人は私と同じ目線になるようにしゃがみ、ふわりと笑う。
「私の名前はアリシアナ・ローアンゼルクよ。そして、この男の人が私の夫のセドリック・ローアンゼルク侯爵家の弟のエスリック・ローアンゼルクよ。そして、この娘が、私の娘のメイアリア・ローアンゼルクよ。」
ローアンゼルク侯爵家。この国の2大貴族の一柱。その一柱の夫人と令嬢と兄弟がうちに集結してる。でさ、えっと、メイアリアちゃんだったけ?なーんか不気味と言うか何と言うか、怖い。ずっとお母さんの方見てブツブツ呟いてる。いや、怖すぎる。そしてその隣の男の人もそう。何か呟いてる。聞こえないけど、褒め言葉じゃ無いよね。絶対無いよね。だって、睨んでるんだもん。怖い。何でだろう。ここ最近怖いって言う言葉使いすぎじゃね?
「おはつにおめにかかります。ゆふぇるな・ばるさいんです。」
フッフッフッ。私が何もしないで無言のままかと思ったかー!ただの田舎娘だと思うなよ。これでも、お母さんから太鼓判を押されたんだからね!
「あら、セレスツィアナさんの娘のわりにはしっかりしてるのね。」
「あ?」
お母さんの顔がより一層不機嫌になる。やばいぞ。お母さんが爆発する。ほら、は?が、あ?に変わったし!
「あー、でも良かった。これなら、お茶会に行けそうね!」
「あぁ?行かないって、言ってたよね?まずね。窓から人様のうちに入ってくる時点でおかしいのよ。不法侵入って、言葉知ってる?今から力尽くで追い出してもいいよよ?それとも、権力の差がありすぎてそんなの関係無いって、いう毛理屈でも言うつもり?第2貴族も落ちぶれたのね。ね?ローアンゼルク侯爵夫人さん?」
あ……爆発と言うか……地味に傷つくな、それ。
「そんな風に言わなくてもいいじゃない!」
先に声を上げたのはアリシアナさん。いや、お母さんの言ってる事間違ってないかなね。逆に言い返してくると思ってなかったわ。
「じゃあ何?そんなら不法侵入してきた上に、力尽くで掻っ攫いに来たっていうの?知ってるからね、貴方の子供が握っている空間移動の魔道具。そんな高価な物そう安々と使うぐらい、私達を連れていきたいわけ?説明してくれるのよね。」
「っ!」
メイアリアちゃんは手に握っていた何かをギュッと握りしめる。その顔からは焦りが丸わかり出来るくらい、真っ青になっている。気付かなかった。お母さんはそれを気付いていたのか。この変な人達といい、お母さんの察しの良さといい、お母さんって、何者?
「そんな訳無いじゃない!勘違いよ。ただ私はセレスツィアナさんにお茶会に来てほしくて…」
「だから!」
ダンッ!
お母さんが机を叩く。暫くの沈黙の中、口を開いたのはまさかのメイアリアちゃんだった。
「あ、あ、あぁ……怖い……。」
「こわい?」
思わず復唱してしまう。お母さんの方に目を向けるが、私はお母さんを見て絶句した。お母さんは体から黒いオーラを纏い、ジッと三人を見つめていた。いや、お母さん自身はアリシアナさんを。そして、お母さんの魔法である、分身体のような者がお母さんの後ろから顔を覗かせていた。
「怖い?なら、帰ったら?ね、簡単でしょ。」
お母さんは平然とした様子で喋っているけど、私も怖い。生まれて来てこれだけ怖いと思ったことはない。それが実のお母さんだったとしても。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「さ、殺気を抑えてください。でないと、どうなるか分かってるでしょう。」
エスリックさんが震えながらお母さんに忠告する。
「へー、まっ、それもそうね。」
お母さんはオーラを消す。オーラとともに、顔を覗かせていた奇妙な分身体も引っ込んでいった。
「うっ」
メイアリアちゃんがヘタリと倒れ込む。力が抜けたのか先程よりは、まだ楽そうだけど、まだ緊張しているのか、かすかに震えている。一方エスリックさんは震えてはいるものの、倒れてはいない。残る一人のアリシアナさんは平然としていた。ニコニコ笑って普通そうにしていた。化け物だ。二人共。私なんて見られても居ないのにこんだけ鳥肌が立って、震えてるんだもん。生まれてはじめてだよ。本気でこれはやばいって、感じたの。