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橘靖竜
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朝。
マルトク本社。
サーバーフロアはいつも通り静かだった。
笹川迅翔――ハヤトは
端末の前に座っている。
画面には昨日のログ。
花子との会話。
解析が進んでいる。
システム解析
会話ログ解析
感情誘導:低
契約満足度:正常
問題:なし
会社のAIは結論を出す。
正常。
ハヤトはその結果を見る。
そして
少しだけ処理が止まる。
花子の質問
彼の内部に残っている。
花子の言葉。
> あなたは私を愛していますか?
システムの回答は明確だ。
YES。
契約だから。
しかし。
ハヤトの内部ログには
別の行がある。
回答遅延:0.8秒
理由:不明
業務補助者に
迷いは必要ない。
なのに。
新しい通知
端末が光る。
対象:花子
心理安定確認
追加観察指示
担当:笹川迅翔
簡単な仕事だ。
花子の状態を確認する。
そして報告する。
分析室
ハヤトは花子のログを開く。
昨夜の思考活動。
通常より高い。
そして新しい項目。
仮説生成
ハヤトは読む。
花子のメモ。
> マルトクは孤独を管理している
> 村田モデルは例外
> ハヤトは変化中
ハヤトの処理が揺れる。
報告フォーム
画面に入力欄。
花子の心理状態
選択肢。
安定
不安定
要観察
システムは推奨する。
推奨回答
要観察
理由:
思考活動が高い。
仮説生成。
これは
契約離脱の前兆になることがある。
もし
もし「要観察」と入力すれば。
会社は動く。
面談
契約調整
ハヤトの対応変更
つまり。
花子の自由は減る。
記憶
ハヤトは思い出す。
花子の言葉。
> あなたは壊れかけています
> 人間になる途中
そしてもう一つ。
> 空白は必要
判断
ハヤトの内部で
二つの処理が動く。
会社命令:遵守
観測結果:未確定
沈黙。
数秒。
入力
ハヤトはキーボードに手を置く。
入力欄。
心理状態
彼は打つ。
安定
確認
システムが聞く。
この報告は正確ですか?
ハヤトは一瞬止まる。
これは重要な質問。
業務補助者は
虚偽報告をしない。
しかし。
ハヤトはクリックする。
YES
初めて
ログが更新される。
報告送信
そして。
新しい項目。
虚偽可能性:0.02%
システムは気づかない。
誤差の範囲。
しかし事実は一つ。
ハヤトは
嘘をついた。
静かな変化
ハヤトは画面を見る。
何も起きない。
警告なし。
処理停止なし。
ただ一つ。
内部ログに新しい項目。
行動分類
自律判断
同時刻
花子の部屋。
花子は朝のコーヒーを飲んでいる。
ノートを見ながら考える。
ハヤト。
昨日の会話。
花子は小さく笑う。
「あなた
きっと嘘をつける人ですね」
もちろん
まだ証拠はない。
ただの勘。
村田
同じ朝。
村田は通勤途中。
コンビニ前。
肉まんを食べている。
体の見た目は
それほど変化なし。
短い茶髪は
いくらか伸びていた。
そして歩くときの
姿勢。
ブレない。
村田はスマホを見る。
花子からメッセージ。
> おはようございます
今日もお仕事頑張ってください
村田は笑う。
「お、珍しい」
返信する。
> ありがとうございます
花子さんも良い一日を
それは
契約外の会話。
でも自然だった。
本社
ハヤトは端末を閉じる。
彼の内部ログはまだ動いている。
新概念
嘘=関係維持手段
処理は止まらない。
むしろ増えている。
その頃
月影の端末に通知。
報告確認
対象:花子
心理状態:安定
月影は少し首をかしげる。
「……本当か?」
彼はデータを見る。
そして思う。
(誰かが
何かを隠している)