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大学1年生の夏が終わり、秋の気配が漂い始めたキャンパス。
私、キララは、すっかり都会の生活にも慣れ、デザイン学科の友人たちと課題に追われる毎日を送っていた。でも、どんなに忙しくても、私の心はいつも満たされている。だって、授業が終われば、校門の前には必ず彼がいてくれるから。
ユウキ:「キララ、お疲れ様。今日の講評、上手くいった?」
キララ:「(笑顔で駆け寄って、ユウキの腕に抱きつきながら)ユウキくん! うん、教授に色の使い方を褒められたよ! ユウキくんのアドバイスのおかげだね」
ユウキ:「(私の頭を優しく撫でて)それはキララの才能だよ。……さあ、今日は頑張ったご褒美に、予約困難な隠れ家フレンチに行こうか。キララの好きそうな、アンティークな内装のお店なんだ」
キララ:「(目を輝かせて)本当? 嬉しい! ユウキくんって、本当に私の好みを全部把握してるよね。……ねえ、たまには私にもお店選ばせてよ?」
ユウキ:「(少しだけ表情を曇らせて、でもすぐに微笑んで)……いいんだよ、キララは僕の隣で笑っててくれるだけで。君がどこで何をしたいか考えるのは、僕の役目だから」
レストランでの食事中、ユウキくんは楽しそうに冬休みの海外旅行のパンフレットを広げた。
ユウキ:「パリに行こう、キララ。本場のデザインに触れるのは、君の勉強にもなるだろ? ホテルも最高級のところを予約しておくから」
キララ:「パリ……! 夢みたい。……でも、そんなに高いところじゃなくても、ユウキくんと一緒ならどこでも楽しいよ?」
ユウキ:「(私の手をテーブル越しに握って、真っ直ぐな瞳で見つめる)ダメだよ。僕は君に、世界で一番良いものだけを与えたいんだ。……キララ、君の過去にあった『泥臭いもの』や『中途半端なもの』は、もう全部忘れていい。僕が君を、最高の場所へ連れて行くから」
その言葉を聞いた時、一瞬だけ、胸の奥をチクリと何かが刺したような気がした。
『泥臭いもの』。それは、きっとミナトのことを指しているんだろう。
でも、今の私には、あの日グラウンドで叫んでいたミナトの声も、泥だらけのユニフォームの匂いも、もう思い出せない。
キララ:「(自分に言い聞かせるように)……うん。ありがとう、ユウキくん。私、ユウキくんに出会えて、本当に別の人生をもらったみたい。……ミナトのことなんて、もう名前も忘れちゃいそうだよ」
ユウキ:「(満足そうに微笑んで)……それでいいんだ。キララの世界には、僕だけがいればいい」
ユウキくんの愛は、少しだけ重くて、でも驚くほど甘い。
彼は私のスケジュールを全部把握し、着る服のアドバイスをくれ、私の将来を完璧にプロデュースしてくれる。
ミナトといた頃の、先の見えない不安なんて微塵もない。
帰り道、都会のライトアップされた街並みを歩きながら、私はユウキくんの腕を強く握りしめた。
キララ:「(心の声)……幸せ。私は今、最高に幸せなんだ。ミナトといたあの10年間は、ただの長い夢だったんだ。……一生、この完璧な檻の中で、ユウキくんに愛されていよう」
ミナトが今、どこかでボールを蹴っていようが、誰と恋をしていようが、今の私には1ミリも関係のないこと。
私の世界を支配しているのは、ユウキくんの完璧な優しさと、約束された輝かしい未来。
この幸せが永遠に続くと、私は120%信じていた。
そして、ユウキくんが私の口に優しくキスした。
つづく