テラーノベル
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パンケーキの日以来、遥との間に、見えない壁ができたみたいだった。
朝、玄関を出るタイミングを合わせても、遥は私に気づかないふりをして先に歩いていってしまう。部活中も、ドリンクを渡すときに手が触れそうになると、彼はあからさまに視線を逸らして離れていく。
「……遥、最近どうかしたの?」
ある日の練習後、思い切って声をかけたけれど、彼はラケットをバッグに詰め込みながら、一度もこちらを見なかった。
「……別に。お前には関係ねーだろ」
「関係ないことないよ! だって私たち……」
「『幼なじみ』だから、か? ……もういいよ、そういうの」
遥は吐き捨てるように言うと、足早にコートを去っていった。
その背中を見つめる私の隣に、いつの間にか凌先輩が立っていた。
「……上手くいってないみたいだね、遥と」
先輩の声は穏やかだったけれど、その瞳は何かを観察するように鋭く光っている。
「……はい。なんだか、嫌われちゃったみたいで」
「まさか。……でも、もし辛いなら、僕がいつでも話を聞くよ。明日、部活が終わったら少し残れるかな? 二人だけで、ゆっくり話そう」
先輩からの誘い。それは、私がずっと待ち望んでいた「二人きりの放課後」だった。
外では激しい雨が降り始めていた。私は、明日こそ自分の気持ちに決着をつけるのだと、嵐のような雨音を聴きながら心に決めた。
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