翌日の放課後。練習が終わり、部員たちが次々と帰路につく中、私は校舎裏の駐輪場で凌先輩を待っていた。
バケツをひっくり返したような土砂降りの雨。湿った空気が、私の体温をじわじわと奪っていく。
「お待たせ、紗南ちゃん。……すごい雨になっちゃったね」
傘を差して現れた凌先輩は、こんな天気の中でも変わらず「王子様」のように美しかった。
私たちは、雨宿りをするように駐輪場の隅に並んで立った。
「……先輩。私、今日こそ伝えたかったことがあります」
激しい雨音が、周囲の雑音をすべて遮断してくれる。私は、十年間大切に温めてきた想いを、震える声で言葉にした。
「私、凌先輩が好きです。……隣の家の妹じゃなくて、一人の女の子として、先輩の隣にいたいです」
言い終えた瞬間、涙が溢れそうになった。
けれど、先輩の返答は、残酷なほどに穏やかだった。
「……ありがとう、紗南ちゃん。そう言ってもらえるのは、本当に光栄だよ。でも……ごめん。僕は、君のことはこれからも『大切で可愛い妹』として、守っていきたいと思っているんだ」
――予想していた答え。なのに、心臓が凍りつくような衝撃が全身を走った。
「……そっ、か……。……ですよね。すみません、困らせて」
私は先輩が差し伸べようとした手を拒むように一歩下がり、傘も差さずに雨の中へと飛び出した。
背後で「紗南ちゃん、待って!」という声が聞こえたけれど、立ち止まることなんてできなかった。
涙と雨で視界がぐちゃぐちゃになりながら、公園の東屋に駆け込み、私はそのまま地面に膝をついて泣き崩れた。
その時。
「……だから、言っただろ。……あいつはやめとけって」
雨の壁を切り裂いて、低い、でも聞き慣れた声がした。
顔を上げると、そこにはずぶ濡れのまま、怒ったような顔をした遥が立っていた。






