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ーー三途春千夜は、死体の前で笑わなかった
死体には、血がなかった。
それが最初の違和感だった。
廃ビルの三階。
割れた蛍光灯がジジ、と虫の断末魔みたいな
音を立てている。
その下に男が一人倒れていた。
顔は見覚えがある。
関東の裏で名を名乗ったブローカー。
昨日まで、生きていた。
三途「……つまんね」
三途春千夜はそう呟いて、しゃがみ込んだ。
首に外傷なし。刺し傷も殴打痕もない。
なのに死んでいる。
そして決定的なのはーー
三途「血の匂いが、しねぇ」
人の死ぬときの匂いを、
三途はよく知っている。
甘くて、生臭くて、喉の奥に残る、あの感じ。
それが、ここにはない。
三途「薬か? それとも……」
ポケットの中のスマホが震えた。
画面には、見慣れた名前。
佐野 万次郎
佐野『春千夜。そこ、触るな』
三途「……は?」
思わず声が漏れた。
三途「マイキー?なんで分かんだよ。
俺、今ーー」
佐野『”見てる”から』
一瞬、空気が止まった。
三途はゆっくり立ち上がり、周囲を見回す。
監視カメラは壊れている。
人の気配もない。
三途「冗談だろ」
佐野『冗談じゃない。
それ、ただの殺しじゃねぇ』
マイキーの声は、妙に冷静だった。
佐野『最近、同じ死に方が三件出てる。
全員、血がない』
三途「……吸血鬼でも流行ってんのかよ 」
佐野『春千夜。お前にしか頼めない』
三途は、死体の顔をもう一度見た。
男の唇が、ほんのわずかに歪んでいる。
ーー笑ってる?
佐野『その事件、調べろ』
三途「理由は?」
佐野『お前が一番、狂ってる から』
通話が切れた。
三途は、ゆっくり笑った。
いつもの、口元だけの、乾いた笑みじゃない。
三途「はは……最高じゃん」
血の匂いがしない死体。
笑って死んだ男。
そして、”見ている”と言ったマイキー。
三途「ミステリーかよ。俺向きだな」
三途春千夜は、
死体のポケットから一枚の紙を抜き取った。
そこには赤いペンでこう書かれていた。
『次は、お前だ』
三途は、その文字を見つめながらーー
初めて、背筋に走る”知らない感覚”を、
楽しんでいた….
あとがき
読んでくださりありがとうございました
息抜きとして書かせて頂きました
これからも何卒よろしくお願いします