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御子柴聖達が和歌山県に向かい出した頃、鬼頭楓たちもまた岡山県に向かう為、新幹線に乗り込んでいた頃。
***
鬼頭楓 十五歳
俺達は岡山県に向かうべく、始発と共に新幹線に乗り込み、窓から流れる景色を見ながら姉ちゃんの事を考えていた。
姉ちゃん達も出発している所か、蓮も隼人も一緒に居るけど心配だ。
この間の任務も、八岐大蛇の血さえなければ大した手こずらなかったし、すぐに片付けられた案件だったのだが…。
姉ちゃんが赤札を使ってくれたから、一日で沼御前の事を退治でき、大した被害も出なかった。
「なぁなぁ、そんなに聖ちゃんが心配なの?」
ふと、前の席に座っている犬山先輩が、後ろに振り替えって俺に話し掛けて来た。
まさか、犬山先輩の口から姉ちゃんの名前が出るとは思っておらず、内心めちゃくちゃ驚いた。
「はい?なんで、姉ちゃんの名前を出すんですか?それと、俺達が姉弟だと言う事も犬山先輩は知ってたんですか」
この人は姉ちゃんが学院に来た時には、長期の任務に出てたから学院には居なかった筈だ。
帰って来れたのは壱級集会の前日か、数日前。
俺と姉ちゃんが姉弟だって事は知らない筈なのに、何故知ってる?
「聖ちゃんが噂になってんの知らない?任務に出てる奴等の耳に入る程だぜ?」
「噂?」
「お前と顔が似ていて、苗字も同じい女の子が転校初日に早乙女隼人に喧嘩を売られ、さらに決闘で勝っちまった。更に、最速で壱級を取ったんだ。噂になるのは当然だと思うが?」
犬山先輩が言ってる事は実際に起きている事だし、姉ちゃんの存在が噂の的になっても仕方がない。
御子柴家に閉じ込められくなった姉ちゃんは、何もしていなくても周囲の目を引き、歩いているだけで視線を奪う。
目立つと言ったらいいのか、姉ちゃんはどこにいても注目を浴びてしまうのだ。
姉ちゃんはまだ、本当に自由になれた訳じゃない。
「へぇ、そうですか。犬山先輩の耳にも入る噂が、周りで流れてるって訳ですか」
「おまけに美人だろ?そりゃあ、噂になっても仕方がない。楓君が聖ちゃんの事考えてる顔してるし、聞いてみたらそうだったからよ」
不意に姉の事を突かれて俺は驚いた。
何で、俺が姉ちゃんの事を考えてるって分かったんだ?
「顔に書いてあるからさ。楓君分かりやすいね」
「!?」
「驚く事ないだろ?楓君達のお姫様だろ?あの子は大事に守ってやれよ?」
「俺…達?」
この人、何で”俺達”って言ったんだ?
大事に守ってやれった、単純に心配して言ってきたのか?それとも何か理由が?
「犬ちゃん達ー、小腹空いていない?飴玉食べるー?」
犬山先輩の隣に座っていた玉村先輩が、振り返って来て飴玉を差し出して来た。
紫色をした飴玉…。
俺は思わず飴玉を凝視してしまった。
すると、その視線を玉村先輩が気付き、「葡萄味だよ」と語尾に付け加える。
「サンキュー、玉村。丁度、なんか食いたかったんだよ。楓君は?」
「お、俺は大丈夫です」
「そっかー。先生達は?」
「ダイエット中だから要らないわ。進ちゃんも要らないってー」
玉村先輩は前を向き直し、右隣に座る先生達に声を掛けていた。
コロコロと口の中で飴玉を転がそながら、犬山先輩も前に向き直し、何事もなかったようにスマホを触り出す。
何だろうこの胸騒ぎは、虫の知らせって言葉があるが嫌な予感がする。
「楓よ」
頭の中に、俺と同じと歳くらいの女の子の声が響き、背後に人がいる気配がした。
俺の脳内に入り込んで来た人物の事を、俺はよく知っている。
「月詠どうした?」
月詠は俺に力をかしてくれている神であり、赤札の姿になって俺の側にいる不思議な神だ。
御子柴家を追い出され、十二歳の頃に月詠が現れては偉そうに「仕方がないから、私が力を貸してあげるわ!仕方がなくよ!?」とツンデレ発言をし、俺の意見を聞かずに側にいる神。
見た目は伝承に載っていた通りで、昔の日本人ぽいのに性格が今時なのが、時々理解が追い付かない時がある。
*月詠とは、日本神話においてアマテラス(太陽)とスサノオ(海・嵐)の兄弟であり、イザナギの右目から生まれた夜と月を統べる神です。三貴子の1柱として崇められ、月の満ち欠け(暦)や農耕、開運の神としても信仰されています*
月詠は俺と話がしたい事が多く、こんな感じで良く俺の頭の中に語りかけてくるのだ。
「彼奴には気をつけよ、お前に話しかけてきた男だ」
「犬山先輩の事か、怪しいと思ったのか?」
「彼奴は食えない男の匂いがする、怪しいと言うべきなのか?こう言う場合」
「分かった、ありがとな」
俺の言葉を聞いた月詠は、静かに気配を消してしまう。
恐らく赤札の中に戻って行ったのだろう、だが月詠と話して気がかりが増えてしまった。
何だろうこの胸騒ぎは…、嫌な予感がする。
何かが変だ。
姉ちゃん達…大丈夫かな。
自分の中にある不安を搔き消してくれと願いながら、窓の外の流れる景色に視線を向けた。
***
和歌山県 御坊市 歴史民俗資料館。
御子柴聖 十七歳
和歌山県、御坊市に到着したあたし達は歴史民俗資料館の前に居たのだが…。
「皆さーん!!!この資料館に鴉天狗のミイラが置いてあるっス!」
オサムさんがパンフレットを持って、歴史民俗資料館に向かって手を広げる。
見た目がレトロな資料館だな、平日だからか人もあたし達しかいないようだ。
「今日は貸し切りにしてあるっス!さ、中に入りましょう!!」
「か、貸し切り!?」
「うちの兄貴が手配?してくれたッス!マジ、配慮出来る兄貴ッス!」
オサムさんの言葉を聞いて、思わず反応してしまったが、美月先輩がオサムさんを見て微笑んでいた。
「可愛い人だなぁ、オサムさんって」
「え!?オレ可愛いッスか!?嬉しいッス!!恐縮ッス!」
「え…っと、オサムさん?でしたよね?美月の可愛いは…、申し訳ないけど褒めてないですよ」
美月先輩とオサムさんの会話に入った雛先輩の言葉を聞き、オサムさんは目と口を大きく開く。
その反応を見たら、オサムさんがショックをいや、大ショックを受けているのが分かる。
「はえ!?そうなんッスか!?俺、普通に喜んじゃいましたよ!!!」
「ちょい、雛。俺は褒めてたんだけど?そんな事言うなよ」
「美月の顔を見たら分かるわよ、年上のオサムさんの事をおちょくろうとしてたでしょ」
「あははは!相変わらずだなー、雛達は。」
花先輩は二人を見て声を出して笑い、少し頬を赤く染めながら美月先輩の方に視線を向けた。
あ、花先輩は美月先輩の事が好きなのかな。
「花先輩は二人とは長いんですか?」
あたしは花先輩に、野々山双子と仲が良いのか尋ねる。
「私と雛達は幼馴染なの、小学校時から二人はあのまま変わらないし…。けど、いつも二人で妖と闘っていた。野々山家が確か、陰陽師の家系で、妖が出たら雛も美月も連れて行かれてたの」
「そうなんですね、小さい頃から…」
「私も役に立ちたくて、結界師になったの。二人の事を守れるようになれたら良いなって、思ってね」
そう言った花先輩の視線の先には、雛先輩と美月先輩がいた。
あぁ…、成る程。
「美月先輩の為なんですね」
あたしがそう言うと、花先輩の顔が真っ赤になった。
「えっ、え!?」
「分かりますよ、すごく。好きな人の為に強くなりたいって」
「聖ちゃんも好きな人がいるんだ?そう思える程、大好きな人が」
「はい、あの人以外に考えられないんです。」
あたしは隼人の隣に居る蓮を見つめながら、言葉を吐く。
どうしようもなく好きな、大好きなあの人を見つめながら。
「そっか…、恋する者同士お互い頑張ろう!!」
花先輩はそう言って、あたしに手を出して来た。
「はい!!」
返事をしながら、花先輩の手を取ろうとした時だった。
「箱庭快楽(はこにわかいらく)箱庭快楽」
「え?」
誰かが何かの呪文らしき言葉を言った瞬間、時空が急速に歪み、あたしと蓮の間に透明な壁が現れれる。
「お嬢!!!」
ドンドンッ!!
蓮は壁を強く叩くがビクともせず、あたし達は強制的に分断させられた状態になってしまった。
透明の壁の向こうには、蓮と隼人、雛先輩の三人がいる。
「ええ!!何スかコレ!?何事ですか!?これ、何なんッスか!!!」
予期せぬ事態が起き、オサムさんはパンフレットを振り回しながら騒ぎ始めてしまう。
「結界術!?こんな所で、何で結界術が!?」
花先輩の言葉を聞いて、今起きている事態が分かってきたな。
何者かが、あたし達が歴史民俗資料館に足を運んだ時に、結界を張れるように手回しをしといたのだろう。
あたし達の視界に入らない場所に結界札と呼ばれる物を配置し、結界を即時に張れるようにしたと考えられる。
結界の大きさからして、壱級レベルの結界だけど、これを妖怪が張れるとは考えにくい。
だとしたら、あたし達と同じ陰陽師が結界を張ったと言う事になる。
「花、落ち着け。こう言う予想外の出来事なんて、よく起きるんだ。俺達もいるから、落ち着いて状況を整理しよう、な?」
美月先輩はそう言って、花先輩の不安を取り除くように背中を優しく叩く。
花先輩は深い深呼吸をして、ゆっくりと周囲を見渡し、結界の状態を目視で確認する。
「どうだ?花」
「結界自体が大きいのは見たら分かるよね?結界札を見ないと詳しい事は分からないんだけど、攻撃から身を護る為の結界じゃなく、分断させる為に張られた結界って事だけは分かるね」
「なぁ、花。結界って、妖怪でも張れるのか?分断目的なら、八岐大蛇達の仕業だろ?」
「真似は出来ても、ここまでも大きさと強度のある結界を張るのは無理だよ。この結界は横と縦に長い結界で、広範囲に広がってるよ。応援要請をしても、結界の中に入れないと思う」
花先輩と美月先輩が話している中、あたしと美月先輩に花先輩、オサムさんの四人を霧が囲い始める。
「聖、オサムさん!俺と花の側を離れないで」
「分かりました!」
「りょ、了解ッス!!!」
あたしとオサムさんは美月先輩に言われ、二人の側に駈け寄ると、一面が紫色が広がっていた。
目の前にいた蓮達の姿が見当たらない、歴史民俗資料館も周りに建っていた建物も、空さえもなくなり、物が一つもない薄紫色の世界が現れる。
「皆んないるか」
「あたしとオサムさんが駈け寄ったら、一気に結界の中の雰囲気が変わりましたね。それになんか、嫌な感じがしませんか?美月先輩」
「気が合うな、聖。俺もそう思ってたんだわ」
美月先輩はそう言いながら、腰に下げていた見た事がない長い刀に触れた。
カチャッ。
あたしと美月先輩は花先輩達を庇う様に前に立ち、あたしは妖銃を構え、美月先輩は長い刀を抜いた。
微かに妖気を感じたからだ。
「聖」
「分かってます」
花先輩達も、あたしと美月先輩の顔付きが変わった事を見て、腰に巻かれたポーチの中から札を何枚か取り出す。
コツコツと下駄の鳴る足音が空間に響き渡り、花のように甘い香りがする。
間違いないこの気配は妖怪の物で、間違いないく壱級クラスの妖怪だ。
「おやおや、こっちが当たりだったか。こっちを選んで正解だったわね」
そう言いながら現れたのは、全てが真っ白な存在の女。
糸のように細くて長い真っ白な髪、雪のように白い肌、白い睫毛から覗く菜の花色の黄色の瞳、肩を肌けさせた白い無地の着物を着た女が歩いてくる。
女の纏っている冷気が肌に刺さり、吐いてる息も白くなって見えていた。
季節は春と梅雨の間、けして冬の季節のように寒くはない。
一足先に冬の寒さを運んできたこの女は…、妖怪”雪女”だろう。
「アンタ、雪女だな。何の目的でこんな事したんだ?」
美月先輩も女の正体が雪女だと気付き、女に声を掛けるが女の視界にはあたししか映っていないよう。
嫉妬の炎が滲んだ負の感情を抱いた瞳だ。
「目的?私達はそこのガキよ。他の奴等なんかどうでも良いわぁ、邪魔をするなら殺すけど」
そう言って、雪女は一瞬にしてあたしの目の前に移動し、冷たい手で頬に触れて来た。
「!?」
この女、いつの間にあたしの前まで移動してきたの?体が動けなかった。
「やっぱりアンタは…、あの人の…」
あの人…?
ビュンッ!!!
一筋の銀色の光が見えた瞬間、ピチャッと頬に何か液体のような物が付着する。
「うちの後輩に、勝手に触るな」
美月先輩が素早い動きで、雪女の腕を斬り落としたのだが、地面に転がってる筈の腕が見つからない。
雪女に視線を向けると、斬られた傷口に斬り落とされた腕が接着し、嫌な音を立てながら再生されてしまう。
「斬った筈の腕が、こんなに早く再生されやがった。コイツも八岐大蛇の血を飲んでんのかぁ?大丈夫か、聖」
「あ、はい!」
美月先輩の動きが全然見えなかった、今度手合わせしてもらおうかな…。
「大蛇様を呼び捨てにするな、クソガキが」
怒りの表情に満ちた雪女の足元から冷気が漏れ始め、雪女の左右で形成された氷の刃が美月先輩に向かって放たれた。
ヒュン、ヒュン、ヒュンッ!!
放たれた氷の刃の数が多い、そう思ったあたしは妖銃を構え、氷の刃を撃ち落とそうとしたのだが。
キンキンキンキンッ!!
引き金を引く前に、美月先輩は無駄のない動きで長い刀を振り上げ、素早く氷の刃を粉々に斬り刻んだ。
美月先輩の動き早すぎて、また見えなかった。
花先輩の話を少し聞いただけだけど、美月先輩かなり場数を踏んできたのだろう。
学院に入ってから任務に行き出した動きと、幼少期から妖怪退治に行っている人との動き方は全く違うものだ。
あたしが下手に動いた方が、美月先輩の動きの邪魔になる。
「ふーん。お前強いな。流石は酒呑童子の天敵と言った方が良いか?」
「酒呑童子の?」
あたしが、そう言うとオサムさんが口を開いた。
「あ、そうか!!野々山って、どこかで聞いた事があったんですよ!」
「え?」
「聖様、野々山家は桃太郎が鬼退治に使ったと言わる二本の長刀、その名も桃華月旦を代々守って来た家系だったッスね!!!」
「はは、オサムさんの言う通り。俺は桃華を使って、雛は月旦を使っている。俺達の刀は二つで一つの意味を成す。先祖が酒呑童子を一度だけ、滅するまで追い込んだ事がある。けど、桃太郎は鬼退治を終わらせると、二度とこの桃華月旦を手に取る事が無かった。何故なら、桃太郎は鬼の呪詛にかけられ、死んじまったってさ」
「え!?凄いっスね!!マジですか!!!」
「かなり昔の事だから、俺も本当かどうかは分からいけどな」
美月先輩とオサムさんの会話を聞きながら、野々山家の名を聞いた事があったと思い出していた。
克也さんがチラッと言っていたけど、桃太郎の長刀を守って来た家系が野々山だったなんて知らなかったな。
「アンタの家がどんな風かは知らないし、過去の話なんてどうでも良いわ。フフ、坊やには用がないのよ。そうねぇ、そろそろ効果が出て来てる頃合いよね?坊やには、お遊びに付き合って貰うわ」
「は?遊び?何言ってんだ、お前」
「まぁ、見ていなさいな」
美月先輩の問い掛けに答えた雪女が指を鳴らすと、あたしの隣に居た花先輩の口から赤黒い血の塊が吐き出される。
「ゴフッ!!?」
「花!?」
「花先輩!?」
花先輩の口から異常な量の血が吐き出され、足元に血だまりが出来始めていた。
あたしと美月先輩は驚きながら、花先輩に近付こうとした時、花先輩の体に変化が起き始めてしまう、
「な、ナ、なに…、こ、コレ…ゴフッ!!体が…、痛い!!痛い!!痛いいいいいいいいいッ!!!?」
地面に蹲る花先輩の体から骨の折れる音が聞こえ、体の内部分から骨が勝手に動き出し始め、折れた骨が皮膚を突き破り、制服の下から血が流れだしている。
バタバタと暴れる花先輩の背中から翼が生え、額からが鬼のように鋭い角が皮膚を破り、獣のような尻尾が腰から生え始め、目からは血の涙が出てさっきまでの花先輩の面影がなかった。
血に涙を流す花先輩の両目の白目が黒く染まり、美月先輩の方に手を伸ばしながら口を開く。
「ミ、ヅキ…、、に、げ」
女の子らしい声も、男の人のように低くなり、花先輩は見た事のない妖怪の姿に変わってしまった。
何がどうなって、花先輩があんな姿になったの?
「は、花さん!!?はえ!?」
オサムさんは花先輩の姿を見て驚き、美月先輩は顔から血の気が引いて行っていた。
誰が見ても以前の花先輩の姿から、今の姿は想像が出来ないだろう。
「は、花…?テメェ、花に何した!!!」
美月先輩は雪女を睨み付けるが、雪女は表情一つ変えずに担々と言葉を吐く。
「何って、そこの女は大蛇様の血を飲んだのよ?妖怪に生まれ変わったのじゃ、とっても有難い事でしょう?何を怒っているのよ」
「「!?」」
あたしと美月先輩は雪女の言葉を聞いて、凄い衝撃を受けてしまった。
八岐大蛇の血を飲んだ!?花先輩が!?
「そんな…!!どうやって花先輩に飲ませたの!?」
「これじゃ、そこの男は見覚えがあるかもしれないがな」
そう言って雪女は、着物のそでから紫色の飴玉を取り出し、あたしに見せて来た。
「この飴玉…って。おい…。う、嘘だろ…。」
雪女に魅せられた飴玉にあたしは見覚えがなく、美月先輩の方は見覚えがあるようだ。
一見、美味しそうな葡萄味の飴に見えるけど、まさかこれが八岐大蛇の血で作られた物だって事?
「その飴はよく、玉村と犬山がよく舐めていた。当然、玉村に勧められた花が、何も疑わずに口に入れるのは当たり前だ。花がいつ、その飴を口にしたのかは分からない」
「実験は成功したようじゃな」
「実験…、だと?」
美月先輩が雪女に尋ねる。
「人間に大蛇様の血を飲ませたら、どうなるのかをな?まさか成功するとは思わなかったわ。これで妖怪を作り出せる」
美月先輩の問い掛けに答えた雪女は、不敵に笑った。
「玉村と犬山の二人が、八岐大蛇側だって事かよ!最初から、実験をする為に学院に潜入したのか」
楓が危ない!!
玉村先輩にもしかしたら…、楓にこの飴玉を渡していてそれを口にしていたら…。
花先輩の代わりようを見たら。
雪女が美月先輩と花先輩を囲む氷の牢屋を作り上げる。
「そこの妖怪になった女よ、この男を殺せ」
「っな!!」
あたしは二人を見つめた。
花先輩が叫び声を上げながら頭を押さえた。
すると、花先輩は奇声を出しながら美月先輩の体を長い爪で斬り付ける。
「ぐぁぁぁぁ!!」
長い爪で斬られた美月先輩の体から、血が噴き出し、その場に倒れ込んでしまう。
「美月先輩!!」
この状況はかなりまずい、美月先輩が花先輩の事を傷付けられない事を雪女は知っている。
「アンタはこっちだよ?小娘」
「聖さん!!やべーっス!!」
そう言って、雪女は氷を出しあたしとオサムさんに向かって攻撃してきた。
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